第6戦 モナコGP 2004

2004年05月23日(日)

高橋敬三DTCに聞く:決勝

決勝重視の戦略が成功。信頼性が強みを発揮し、今季初の入賞。

土曜日の夜に雨が降るという天気予報は外れたが、日曜日の朝には空一面が厚い雲で被われ、今にも雨が降ってきそうな天気だった。しかし、その空模様も決勝スタートの時間が近づくと、晴れ間が広がってきた。

スタートからパナソニック・トヨタ・レーシングには波乱が訪れた。スタートでオリビエ・パニスがエンジンストールさせてしまい、スタートやり直しとなってしまったのだ。

「ダミーグリッドにパニスが着いたとき、リヤタイヤのあたりがマンホールの上に載っていたため、グリッドに着く際それを避けて止めようということになりました。グリッドでハンドルを切って寄せようとしたところで、エンジンが止まってしまいました」と高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)は言う。そのため、スタートはやり直しとなり、パニスは最後尾までグリッドを下げられてしまう。さらに、再スタートのフォーメーションラップに出ようとしたパニスのエンジンがかからない。

「最初のスタートでエンジンを止めてしまった時に、クラッチがおかしくなったようです。そのため、エンジンがかからなくて再スタートのフォーメーションに出られませんでした」。結局、パニスはピットスタートとなってしまった。

15番手スタートのクリスチアーノ・ダ・マッタはスタートよく、1周目には12番手まで上がっていた。ペースも早くザウバーのフィジケラを追い上げていた。そして3周目のタバコ屋コーナーで、BARの佐藤琢磨が激しくエンジンブロー。一面は白煙で包まれ、前が見えずにフィジケラがマクラーレンのクルサードに追突してしまう。クルマが横転するほどのクラッシュが目の前で起こったダ・マッタだったが、これをうまく避けて順位を上げた。

「フィジケラのウイングが飛んできたようでしたが、ダ・マッタはうまく避けてくれました。このクラッシュでセーフティーカーが出たためピットスタートのパニスも早々と追いつけました。ただ、その後、パニスはミナルディの2台に前を阻まれてペースを上げることが出来ませんでしたが」

7周目にセーフティーカーが解除された時の順位はダ・マッタ9番手、パニス14番手だった。ダ・マッタは前をいくジャガーのウェーバーを追い上げ、11周目には8番手に上がった。ミナルディに行く手を阻まれていたパニスも12周目には2台のミナルディを抜き、ペースも一気に上がっていた。

「今回は決勝レース重視の戦略にしました。燃料もある程度積んでいましたし、タイヤもロングランの安定度がありましたから、ペースも安定していたと思います。モナコGPということもあり、レースで何が起こるかわからないですからね」

クラッシュやトラブルなどで他車が脱落するなか、トヨタの2台は順調に順位を上げていった。ピットストップのタイミングなどもあり、ダ・マッタは20周目には4番手にまで順位を上げていた。しかし、トヨタの2台も決して全てが順調と言うわけでもなかった。

「1回目のピットストップの後、パニスのクルマのブレーキが熱を持ってしまい、効きが甘くなるというトラブルが出ました」

1回目のピットストップは23周目にダ・マッタが、24周目にパニスが行った。ダ・マッタは常に1分16秒台の安定したタイムでラップを重ねる。これは前を行くフェラーリのバリチェロと変わらないか、それ以上のタイムでその差も徐々に詰まっていた。42周目、トンネルで2番手を走るルノーのアロンソが周回遅れを抜こうとしてクラッシュして、2回目のセーフティーカー導入となった。この時とばかりにダ・マッタは予定外のピットストップに入った。

「残り30周だったので、予定はありませんでしたが急遽ピットストップに入らせました」。と、そこまでは良かったのだが、ピットアウトの時にダ・マッタはエンジンをストールさせてしまう。これも原因はパニスのスタートの時と同じクラッチであった。ピットストップで大幅なロスタイムをしてしまったダ・マッタは大きく遅れ、周回遅れのラルフ・シューマッハーの後ろに付いてしまう。ラルフには当然、青旗が振られるがなかなか抜かせない。そのうちに後ろからバトンがやってきて、今度はダ・マッタに青旗が振られる。ピットも、ダ・マッタも混乱する間にダ・マッタにはペナルティーが課されてしまった。

「どうしてラルフにはペナルティーが課されずに、ダ・マッタだけなのか。非常に不信感の残る裁定だと思います」。このため、ダ・マッタは52周目にピットスルー・ペナルティーを受け、順位も5番手から6番手とひとつ落ちてしまう。しかし、その後も諦めないダ・マッタは前のクルマを追い上げ、最終ラップの最終コーナーでは前のクルマ並びかけ、フィニッシュラインでは横一線でチェッカーを受ける健闘をみせた。辛抱強く走ったパニスも8番手まで上がり、2台揃ってのポイント奪取となった。

「今回は波乱にとんだレースでしたが、我々は唯一2台とも完走し、ポイントを取ることができました。今回のレースは、我々の信頼性が武器になり得られた結果だと思います。ここまで今年苦しんできましたが、良いきっかけを得られたと思います。まだまだ楽観視はできませんが、これでチームの雰囲気も良くなり、上昇機運にのれるのではないでしょうか」

次回のレースはTMGのファクトリーから一番近いニュルブルクリンクを舞台に行なわれるヨーロッパGPだ。「2週続きの連戦とハードなスケジュールですが、ファクトリーも近く、地の利を生かして頑張ります」と、久しぶりに明るい状態で次のグランプリを迎える。