第6戦 モナコGP 2004

2004年05月26日(水)

グランプリの舞台裏 - 連戦における物流作戦

パナソニック・トヨタ・レーシングのF1オペレーション部長、リチャード・クリーガンが複雑なモナコの物流作戦と今シーズンの3つの連戦への準備を語った。

全てのチームにとって、モナコにおける最大の問題は<スペース>だ。現地に到着してモナコのパドックにトラックを入れるまでだいたい1日が費やされる。フォーミュラ・ワン・マネージメント(FOM)が全てのグランプリで配置プランを考え、配置図を作製するが、モナコではスペースに限りがあるので、他のサーキットよりも厳密にそれが行われる。FOMの配置案がなかったら大混乱を引き起こすのでこれはとても重要だ。結果的にスペースがないのでトラックはより間隔を狭めて停めなくてはならない。

2003年と今年の大きな違いは素晴らしいピット施設とピットロードが新設されたことだ。以前のピットロードはとても狭く、ピットストップを行うだけのスペースしかなく、走行レーンのすぐ横にメカニックが居て危険だった。でも、今年は、イモラと同じ規模のピットビルディングが作られていた。モナコではクルマがダメージを受ける可能性が高いのでオリビエとクリスチアーノに各々1台づつスペアカーを用意したが、ピット内は4台分の広いペースがある。階上にはエンジニアの作業場や部品類を置いておくエリアもある。ピットガレージの後ろにはミシュランタイヤのスペースとピットウォールができた。この変貌は劇的で、最も働きにくかったサーキットから現存するいくつかのサーキットよりも良くなったのだ。

過去に、このような施設がなかったときには、ほとんどのチームはピットレーンから歩いて約20分かかる駐車場に陣取っていた。セッション毎にそこからクルマをピットレーンに移動させ、終われば再び持ち帰っていたのだった。僅かに選手権のトップ4チームだけはパドックエリアで作業ができたが、それでもセッションに向かうには10分はかかっていた。現在は、全てのチームが機材トラックをパドックに駐車できるようになって、直接ピットへ道具を持ち込めるようになった。これによって離れた場所を移動するのでなくて、一カ所に全ての機材などを設置しておけるようになった。

モナコとヨーロッパGPの時間のない2レース間に向けて確実な、そしてスムーズな移行計画は一ヶ月前から開始した。全てのチーム車両、機材トラック、サポートトラックそしてモーターホームをモナコからニュルブルクリンクまで数日で移動させる非常に慎重な準備を行わなくてはならない。

最も重要なことは、出発のデッドラインである日曜日夜までに全てのトラックをモナコから出すことだ。トラックは日曜日の夜にニースの駐車場に行き、月曜日の朝にトラックドライバー達によってドイツへと移動される。実際、サーキットから駐車場まではわれわれの手で移動する。出発の順番は、パドックの配置によって厳しく指示されている。モナコ周辺道路の混雑も問題だが、機材の梱包が終わるまでには交通量も少なくなっている。FOMが、警察による護送手配をしてくれるので、通常問題なく移動できる。

連戦の場合には、レース車両の分解と再組立を短時間で行わなくてはならない。今回、われわれは、この作業をニュルブルクリンクで行うことにした。サーキットから僅かに往復90分でクルマをケルンの工場に持ち帰ることができるけれど、それは、得策じゃない。工場に持ち帰って分解し、組立直し、またサーキットに戻ることを考えたら、ニュルブルクリンクに直接持ち込んだ方が時間を節約できる。各レース車両用のリビルトキットをサーキットに用意しているので、トラックが到着次第作業にかかれる。

他の連戦、カナダとインディアナポリス、マニクールとシルバーストンでも状況は同じで、移動を慎重に行うことが重要だ。基本的には、カナダとアメリカのレース間は、全員一緒に行動する。スタッフは、月曜日にチャーター便でモントリオールからインディアナポリスへ空路移動する。貨物は火曜日に到着してそれからニュルブルクリンクと全く同じ手順で準備が行われる。ガレージのセットアップをすぐに始めて、水曜日からクルマの組立を開始する。

最初の連戦でわれわれにとって有利なのは、サーキットからケルンの工場までが近いのでニュルブルクリンクのレースではケルンの工場からスペアパーツを持ってくるのが簡単な点だ。しかし、海外のレースとなると、こんな贅沢はできない。海外のレースで違うのは、必要な物を完璧に確認して持って行かなくてはならないことだ。連戦でないにしろ最初の大陸移動イベントのオーストラリア、マレーシアそしてバーレーンの準備作業時間はきつかった。チームの全員が緊張して忙しく働く連戦が実は私は好きだ。チームは各レースで細部に注意をはらっており、特にこの連戦では全員が確実に、より細かな点にも目を配っている。