第7戦 ヨーロッパGP 2004

2004年05月29日(土)

高橋敬三DTCに聞く:予選

予選と決勝の双方を満足させるセットアップ。モナコに続きポイントを狙う

モナコGPで今季初入賞、しかもクリスチアーノ・ダ・マッタとオリビエ・パニスのふたりが同時に入賞を果たし、パナソニック・トヨタ・レーシングは士気が高まるなかヨーロッパGPに乗り込んだ。レースの舞台となるニュルブルクリンクは、TMGのあるケルンから約80kmほど。今年も例年通り、金・土・日の3日間にわたり、TMGから応援部隊がやってくる。「600人が応援に来てくれるということで、力が入ります」と、高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)の言葉にも熱がこもった。

高橋DTCは、TMGに近い地の利を存分に生かした。「自宅通勤が可能なサーキットはニュルブルクリンクとスパ・フランコルシャンだけで、今朝(木曜日)は、家から直接サーキットに来ました。昨日は夜までミーティングをやり、今日の朝、『さあ、やるぞ』と気を引き締めてやって来ました」

昨年は縁石でフロントウイングを壊し、急遽TMGに交換部品を取りに帰る場面が見られた。「今年はそんなことにならないようにしたい」と言いながらも、迅速な対応ができるのも地元レースならではのメリットである。

「路面のグリップは平均より低いですね。ですから、通常、タイヤはソフト目をチョイスします」と、コースの特性を説明する。「例えば、最高速の高いサーキットだとか、低速の領域が多いサーキットとかいろいろありますが、ここはだいたい平均値にあります。言葉を換えれば、比較的テクニカルなサーキットだと言えます」

ニュルブルクリンクでのレース開催は、例年にくらべて1カ月ほど早い。「雪が降るんじゃないか」と冗談を飛ばす関係者もいたが、いつもより気温が低いのは確かで、木曜日は日中でも12度程度しかなかった。「路面温度が例年とちょっと異なるでしょうし、天気に対しても配慮が必要だと思います」と、高橋DTCは気を引き締めた。

金曜日のフリープラクティスは、パニスが13番手、ダ・マッタが14番手、ゾンタが15番手と、3人のドライバーが仲良く並んでセッションを終えた。「金曜日としては上出来の一日でした」と高橋DTCは振り返る。

「しっかりデータが採れました。午前中はソフト目のコンパウンドを使ったこともあって、グレーニング(ささくれ状の摩耗)が出ました。そのせいもあってバランスに苦しんだこともありますが、それはいつものことです。ドライバーは3人とも、クルマがナーバスだとコメントしていました」

ドライバーからのフィードバックを受け、チームはセットアップを調整。コース特性に合ったクルマ作りに努めた。

「安定方向のセットアップに調整し、午後のプラクティスに臨みました。路面の状態が良くなったこともあって、バランスは改善されました。特に、オリビエとリカルドはコンスタントに安定したラップを出せるだけのバランスになっています。ただ、ふたりともアタックラップのセクター3でちょっと引っかかってしまったのが残念です。オリビエいわく、『30秒1は出せた(8番手に相当)』と言っていますが、データにもしっかり出ています」

ペースに乗ったトヨタ勢は、予選の行われる土曜日も順調にプログラムをこなした。予選1回目、2回目ともに、ふたりのグリッドポジションは同じで、パニスが10番手、ダ・マッタが11番手につける。

「土曜日になって、だいぶ路面の状態が良くなりました。午前中の最初の頃は2台ともにちょっとアンダーステア傾向があったのですが、路面が良くなると同時に良くなってきました。セットアップを調整する必要はそれほどなく、予選のアタックラップでタイムを出すと同時に、レースで長い周回を走ったときにタイムの落ち込みを少なくする。双方を満足させるタイヤの使い方を見つけるセットアップにトライしました。結果、いいところが見つかったと思います」

2台のクルマが拮抗したラップタイムを刻むのは、車体の完成度が高い証拠。ドライバーも完璧な走りを披露したことになる。

「ふたりのドライバーともに、小さなミスはあったようですけど、それでコンマ3秒、4秒失うようなことはありませんでした。あとは、クルマ自体のポテンシャルを上げることです。コンマ5秒速くすれば、だいぶ競争力が出てきますから」

高橋DTCは、TF104が着実にステップアップしている手応えを感じ取っているようだった。

「予選タイムは上位と接近しています。満足のいくタイムを両ドライバーともに出してくれました。バランスも良かったと言ってくれています。いまのクルマの最大限の力を発揮してくれたと言っていいでしょう。ポイント獲得のチャンスがある位置ですので、モナコに続いてポイントを獲りに行きます」