第7戦 ヨーロッパGP 2004

2004年05月30日(日)

高橋敬三DTCに聞く:決勝

原因不明のリアタイヤの異常摩耗でタイム上がらず。

ニュルブルクリンク・サーキットの1コーナーは右に大きく切れ込んでいるため、アクシデントを誘発しやすい。高橋敬三テクニカルコーディネーション担当ディレクター(DTC)はその点を気にかけ、「何か起きるんではないか」と心配した。それは土曜日のことだったが、不安が的中してしまう。

11番手からスタートしたクリスチアーノ・ダ・マッタは、目前で起きたアクシデントを避けようと1コーナー外側に大きく避けた。あやうくエンジンが止まるところだったが、アンチストール・システムが作動。クラッチをつないで、さあ、戦列復帰というタイミングで後方からウイリアムズの1台が衝突してきた。衝撃でクラッチを握る手を離してしまい、エンジンを止めてしまう。

「巻き込まれないといいなあ、と思って見ていたら、クリスチアーノが巻き込まれてしまいました。非常に不運です。スタートは良かったんですけど、真ん中くらいのスタート位置が一番危ないところですからね。あの後も走っていればデータがとれていたでしょうけど。仕方ないですね」

オリビエ・パニスは完走したが、10位。ラップタイムの落ち込みが激しく、上位進出はならなかった。高橋DTCがクリスチアーノのデータが欲しかったと悔やんだのは、不調に終わった原因を探るのに、データ量が多ければ多いほど役立つからだ。

「非常に残念です。昨日の予選のパフォーマンスは、トップチームに接近したタイムが出ていました。昨日の時点では、レースでのバランスもかなりいいという自信があったんです。レースを想定したセットアップでも、ロングランでも、手応えをつかんでいました。ですが、オリビエは走り始めてすぐにひどいオーバーステアに見舞われてしまったのです」

パニスはレース中、ピットストップを3回行ったが、そのたびにチームは、オーバーステア解消を目指した微調整を加えた。

「リアタイヤのドロップオフが大きくて、摩耗が普通ではありませんでした。ピットストップでフロントウイングの角度やタイヤの空気圧を調整したのですが、症状は直りませんでした。直りきらなかったくらいひどいということは事実として受け止めるとして、では、なぜそういう現象が起きたのか。おそらく、何らかの原因で路面のグリップレベルが変わって、異常な摩耗をしたのではないかと推測しています。でも、なぜ路面のグリップレベルが変わったのかは、現時点ではわかりません。想像されるのは、路面温度であり、午前中に行われたサポートレースの際に出たオイルや付着したラバーの変化などが考えられますが、今後、ミシュランも含めて解析することになります」

スタート後10周を走り切るだけの燃料を積んでいた状態で、パニスは1分29秒台のタイムを記録した。レース中は1分31秒台中盤のラップタイムを想定していたというが、実際は燃料が軽くなっても1分33秒台から34秒台に落ち込んだ。タイヤの使い方がうまくいかず、足を引っ張ったということだろう。「オーバーステアが出てしまえば仕方ありません。ドライバーの責任ではありません」とオリビエをかばう。

スターティンググリッドで後方にいたドライバーに先を越され、ポイント圏内の上位フィニッシュを許したことを高橋DTCはことのほか悔やんだ。

「正攻法で行けば3回ピットストップです。(2回ストップで入賞を果たした)彼らは賭けに出たんだと思います。結果、賭に勝った。スタート順位を考えれば、6位に入らなければいけないレースでした」

立ち止まっている暇はない。6月はアメリカ大陸の2連戦が待ちかまえている。パナソニック・トヨタ・レーシングは、シルバーストンとモンツァでテストを予定。4人のドライバーを総動員して、パフォーマンスの向上を狙う。

「シルバーストンでは少し先を見据えた開発テストを行います。次のカナダ、アメリカはローダウンフォース・サーキットですから、この2戦に向けた空力をモンツアで開発することになります。カナダもどんどん高速化していますから、空力の開発は急務ですね」。そう高橋DTCは、アメリカ大陸2連戦に気持ちを切り替えた。