第8戦 カナダGP 2004

2004年06月12日(土)

高橋敬三DTCに聞く:予選

ブレーキへかかる大きな負担もうまく解決。
立ち上がりのトラクション重視のセットアップ

「去年は雨だったのですが、今週は3日間とも晴天が続いて、日曜日はもうちょっと気温が高くなる(金曜日は17~22度、日曜日の予想は26~27度)という予報が出ています。ブレーキのクーリングには注意しないといけませんが、タイヤは逆に暑いほうが有利なので、安定した天候のもとで予想どおりのことができて満足です。金曜日の一日としては順調でしょう」

高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)の言葉を借りて金曜日のプラクティスを総括するとこうなる。モナコGP以来となる連続ポイント獲得に向けて、パナソニック・トヨタ・レーシングは順調な滑り出しを見せた。午前中に行われたプラクティスについては、次のように振り返る。

「路面が汚れていたこともあって、3台ともリアのトラクションが充分じゃないと訴えていました。走り出しの最初はちょっとアンダーステアなんですけど、リアがすぐにドロップオフして、立ち上がりでタイムを失ってしまう」。そのため、午後のセッションに向けて、セットアップを調整した。

「そのあたりを改善するために、クルマのセットアップを三者三様で変えました。そのうち、特にクリスチアーノのセットアップがうまく決まって、リアのドロップオフもだいぶ少なくなった状態で最後のタイムアタックができました。クリスチアーノはハッピーそうでしたね」

クリスチアーノ・ダ・マッタは7番手で2回目のプラクティスを終える。一方、オリビエ・パニスは13番手、リカルド・ゾンタは6番手でセッションを終えた。

「オリビエは別のセットアップを試したんですが、それがあまり良くなかったんです。しかも、アタックしようとしたらイエローフラッグが出て無駄になり、最後のアタックでは渋滞があったということで、フラストレーションが溜まったようです。一方、リカルドはずっとタイヤ比較をしました。レースを念頭に置いたロングランもしましたが、タイヤ選択についての結論はまだ出ていません」

タイヤはプライムとオプションの2種類。通常、プライムは一発のアタックに適さないが、ロングランではタイムが安定している特性を持つ。一方、オプションは一発のタイムアタックに優れるが、ロングランではタイムが安定しない。金曜日の走行では、そのとおりの傾向を確認することができたという。

カナダで無視することのできない懸案事項は、ブレーキだ。「ここは(全18戦中)ブレーキに一番きついサーキットです」と高橋DTCは言う。

「ブレーキはやはり厳しいですね。午前中はリカルドの(カーボンファイバー製)ブレーキダクトが燃えて火が出て、消火器で消しました。長いストレートの後フルブレーキングをしてピットに入ってくるので、温度が高い状態でピットに戻ってくるんですが、冷却ファンを取り付けるのを忘れたために火を出してしまいました。それだけでなく、リアのブレーキ温度が高くなる傾向があったので、ブレーキバランスやエンジンブレーキの調整をして、最終的には問題のないレベルに来ました。予想していた問題でしたが、準備していた解決法でチューニングできたと思います」

予選が行われる土曜日も、予想どおりの晴天だった。

「特に立ち上がりのトラクションを稼ぐようなセットアップに変更しました。そのうえで、午前中はずっとロングランでどれだけタイムが安定するか、というトライをいろいろやりました。2台とも非常に安定したタイムが出るようになってきましたので、ドライバーは非常にハッピーだったのではないかと思います」

スターティンググリッドを決める予選では、ダ・マッタが12番手、パニスは13番手につけた。ふたりのドライバーがTF104のポテンシャルをフルに引き出したことは、両者のラップタイムが接近している事実が証明している。

「時間の経過とともに路面が良くなっていました。予選も後から出走するほうが有利だということで、1回目は軽めの燃料でアタックしました。おそらく、他のチームも同じだったと思います。2回目は明日の戦略を想定した燃料に戻してアタックしました。それぞれのドライバーに細かいミスがあったようですが、順位に影響するほどではありませんでした。バランスもそんなに悪くないというコメントを得ています」

トヨタは、入賞を果たしたモナコから取り入れたレースを重視した予選の戦い方を今回も実行しつつある。「予選でトップ10には入れませんでしたが、燃料の量を考慮すれば、非常にリーズナブルな結果だっと思います」という、高橋DTCのコメントがそれを証明している。果たして上位進出はなるか、決勝に期待がかかる。