第9戦 アメリカGP 2004
2004年06月19日(土)
高橋敬三DTCに聞く:予選
高速域と低速域とのバランスが取れた仕上り。ロングランでのタイムも安定
インディアナポリス・モータースピードウェイのコースの特徴は、オーバルコースの一部を使った最終コーナーから1コーナーまでの高速区間と、曲率の小さいコーナーが連続したインフィールド区間の、特性の大きく異なる2つの区間から成り立っていることにある。
「ポイントは、どれだけダウンフォースを減らして最高速を稼ぎ、インフィールドでスライドすることのないようにコンペティティブな状態に仕上げるか」と高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)は、インディアナポリスに対する攻めどころを解説する。
高速区間を重視してセットアップを施せば、低速区間でハンドリングに苦しみ、タイムを失ってしまう。逆に低速区間を重視すれば、高速区間でスピードに伸び悩む。最高速が伸びなければ、レース中のパッシングポイントとなる1コーナーで後続車の格好の餌食になってしまう。最高速を伸ばしつつ、インフィールド区間でも路面に吸い付くようなグリップを維持し、コースの全域でラップタイムを縮める。これが理想だが、トヨタは金曜日のプラクティスを順調にこなし、いいバランス点を見つけ出した。
「3台とも、初日としては非常にいい出来でした。試したいと思っていたことがいろいろ試せましたし、データもしっかりとれたので満足しています。午前中はまだ路面がホコリっぽく、アンダーステアだオーバーステアだと言う以前に、クルマがスライドしていたので、基本的なセットアップをやりました。午後は路面状況もずっと安定していたので、タイヤの比較をやり、このコースで特に重要な、どのダウンフォースにするのかについてトライしました。高速とインフィールド区間でのいいバランスが見つかったと思います」
前戦カナダGPに続き、トヨタはインディアナポリスに向けても専用のリアウイングを持ち込み、金曜日のプラクティスで成果を試した。結果、カナダ用に開発したリアウィングをモディファイして使うことに決めた。
「ダウンフォースの低い方からモンツァ、インディ、カナダの順になります。カナダ用に用意したリアウイングだと少し大きいし、インディ用だと少し小さい。両者のカバーするレンジが重なっていますので、最終的にはカナダ用を基本にモディファイすることにしました。クルマの出来はかなりいいです。去年はオリビエが予選3番手に入りました。明日の予選ではトップ10の中でも上位に2台を送りこみたいですね」
土曜日の午前中に雨が降るという予報もあったが、インディアナポリスは相変わらずの好天に恵まれ、トヨタは引き続き、予選~レースに向けたセットアップ作業に集中した。
「朝のプラクティスではまだ路面温度が低かったこともあり、フロントタイヤにグレーニング(ささくれ状の摩耗)が出たのですが、温度が上昇すれば大丈夫だろうとあまり気にせず、セットアップの熟成に努めました。予想どおり、午後になると路面温度が上昇し、グレーニングも収まったので、決勝を想定してロングランを行い、ラップタイムを安定させるセットアップにトライしました。ここでも満足のいくセットアップが見つかりました」
2回目の予選でのスタート順を決めるプレ・クオリファイでは、オリビエ・パニスが3番手、クリスチアーノ・ダ・マッタが7番手を記録し、順調な仕上がりぶりを披露した。決勝レースでの走行に必要な燃料を搭載した2回目の予選では、ふたりともポジションを少し落とし、パニスが8番手、ダ・マッタが11番手で終える。
「もうちょっとタイムを縮めれば……」と、高橋DTCは悔しそうな表情を見せた。パニスは、5番手からわずか0・105秒差の8番手だった。
「燃料の影響もあるのかもしれませんが、オリビエはちょっとアンダーステア傾向になったという話でした。それがなければコンマ1秒か2秒は縮められただろうし、縮めていればもっと上に行けたのにな、という思いはあります。ですが、『たられば』を言っても仕方ありません。タイム自体は悪くありませんでした。午前中のロングランでもタイムは安定していたので、明日はかなり期待できると思います」
土曜日の午後は、1コーナーから最終コーナーに向けて強い風が吹いていたが、ダ・マッタはその風の影響を受けてタイムを失ったようだ。パニスと同じ空力セットアップだったにもかかわらず、メインストレート上の最高速度がおよそ10km/hも低かったことがそれを証明している。
「クリスチアーノのときは向かい風が強かったような気がします。それに、全体的にグリップがないという話でした。バランス自体は悪くなかったということですので、グリップの件については心配していません。明日はロングランでタイムが安定するかどうかがひとつのポイントです。タイムを安定させて、信頼性を維持しながら走れば、充分に2台ともポイントがとれる位置にいます。ぜひ、それを達成したいと思います」
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