第9戦 アメリカGP 2004

2004年06月23日(水)

オリビエ・パニス - アメリカGPを終えて

インディアナポリスは、僕らのTF104にとても相性のいいサーキットだと予測できていて、ある程度の期待感はあった。だけど、優勝車からわずかに37秒差でフィニッシュ出来るだろう、って誰かが事前に予想してくれたとしても、それは信じられなかったと思う。でも、金曜日の練習走行の段階から高い競争力を示せることはわかっていた。チームは、実力で勝ち取ったこの成績を待ちに待っていたし、僕のGP参戦150戦目の最高のお祝いとなった。

僕は、予選の両セッションでとても良い走りが出来た。燃料を少なくして走った最初のセッションでは3番手、その順位は偶然にも昨年の予選結果と同じものだった。レース用に燃料を多く積んで走る次のセッションでも、トップ10に入る自信はあったよ。結局、8番手となったけれど、そのタイムも5番手のクルマからわずかにコンマ1秒の差だった。われわれのパッケージが、インディモータースピードウェイでいかに適した形で仕上がっていたかを示せた予選だったので、8番手でも十分に満足だったわけだよ。

僕がアタックした周には、ちょうど風向きが良くて助けられた部分があった。でも、予選周回を終えるころには迎え風に変わっていた。1周を走っている間にも、ころころ風向きが変わるから、インディはなかなか難しい部分もあるんだ。でも、これは誰にも共通していることなので、風自体を言い訳には出来ないね。

クルマの調子が良かったので、ギヤ比を決めるのはそれほど難しくなかった。向かい風だろうが、前のクルマについて走ることになろうが、風の影響というのは1台で走る予選に比べればたいしたことではなかった。それほど重要な問題ではなかったね。

インディではストレートで速さが要求されるのと同時に、タイヤの摩耗に気をつけること、そしてインフィールドを素速く走り抜けることも重要になってくる。僕らのクルマは、その点でうまくセットアップが出来て、予選でストレートの速さがあり、インフィールドでもバランスが良かった。ローダウンフォースのセッティングは、それほど強いものではなく、中間くらいだったと思う。ローダウンフォースに振りすぎると、ストレートは速いけれど、インフィールドではクルマがスライドしてしまい、下手をするとタイヤの摩耗が出てしまうので、それは得策ではないと考えたんだ。

インディアナポリスでのレースというのは伝統がある。誰もがインディ500 を知っていて、ル・マン24時間のように偉大なレースだ。F1サーキットとしては、われわれにとってベストなものではないけれど、インディで走れることは光栄だし、アメリカの人達はF1を楽しもうと工夫も色々で、みんながとても楽しそうだったよ。

若い頃は、インディ500は見たことがなかった。正直なところ、エルフのウィンフィールド・スクールでのスカラシップを得るまで、F1ぐらいは少し観たことがあっても、フォーミュラ・ルノーやF3がどのようなものかも知らなかった。ましてや、インディカーレースなんて全く知らなかったんだよ!確か、最初にインディ500を見たのはフォーミュラ・ルノーをやっていた1989年頃だったと思う。

僕はずっとサッカーをやっていたんだ。ある週末に、父が遊びにレンタルカート場に連れて行ってくれたことがあったんだ。それが本当に楽しくてね。最高の気分だったので、父にもう一度連れ言ってと頼んだんだ。その後、ちゃんとしたカートでちゃんとテストを受けたら、僕はすごく速かった。そうしたらテストしてくれた人が、カートをやったほう良いよと言ってくれたから、そこからカートをやり始めたんだ。その時僕は13歳だった。小さい頃からレースは好きだったけれど、本気でやろうなんて考えてもみなかった。でもカートを始めたら夢中になってしまって、サッカーも他の事も全部やめたんだ。

木曜日には、ドライバー全員がファンとの質疑応答のセッションや、ファンがたくさん入場出来る特設エリアでサイン会が行われたりしたんだ。これはとても良いアイデアだと思うよ。これはインディだけのことだけれど、とてもうまく行っていると思う。ファンを楽しませ、そしてF1を取り巻く環境だって盛り上がる。

クリスチアーノのマネージャーは、アメリカのビジネスに精通していて、NASCARのグッズ商売についてや、それが多額に売り上げられる巨大なビジネスだということを教えてくれたんだ。信じられないくらいの巨額のお金が動いている。でも、僕はサイン会などを開催していることがそれらの役に立っていると思うんだ。レースにやって来る観客たちは、こうしてグッズを買ったりするけれど、僕たちがサインをしたりすることでお返しもできているわけだよね。誰もがもっと楽しめるアイデアだと思うよ。

ファンにもっと楽しんでもらえるようにということで、チームの無線交信をオープンにして、テレビの視聴者が聞けるようにするという案が再び議論されているらしい。それがもしファンを楽しませるというなら、僕は反対しない。それを確かに望まない人もいるけれど、今のF1はもう少し心を広くした方が良いと思う。観客に対してもう少し何かを提供した方が良い。観客がF1に興味を失っているとは言わないけれど、常に何か新しいことを提供していくことは大切だと思う。レースの質を向上させることもひとつの手だと思うし、今年のシーズンなんかは、実際それほど悪くない。でも、無線通信の会話を放送するというなら、ある程度の規制は必要になってくるとは思う。だって、時によってドライバーは興奮して頭に血が上った状態でピットと交信しているときだってある。そんなときの会話は、テレビ放映にはそぐう内容だとは思えない。

最後になってしまったけれど、インディアナポリスでの僕のGP150戦目パーティーは、最高だった。チームがこの週末のために記念品を準備してくれたことにとても感謝している。土曜日の予選後にパドックでは小さなパーティを開いてもらったんだけど、とても多くの人が参加してくれたのには本当に驚いたよ。親友のヤルノ・トゥルーリまで来てくれていたしね。ケーキやプレゼントがあって、たくさんサインを求められたりもしたけど、本当に楽しい午後だった。150というのは、僕にとっては通過点で、僕のやる気とエネルギーは、もうあと150戦でもやれる感じだよ!151戦目は、僕のホームグランプリであるフランスグランプリ。来週のマニクールが楽しみだね。その前に、ヘレスでテストを行いフランスに向けて準備を行い、今週末にイギリスで行われるグッドウッドのフェスティバル・オブ・スピードに行く予定になっている。