第11戦 イギリスGP 2004
2004年07月10日(土)
高橋敬三DTCに聞く:予選
難しいタイヤ選択。作戦面で頭を悩ませる雨の心配
昨年のイギリスGPでは新型TF103Bがデビューして高いパフォーマンスを見せ、誰もが驚いたトップ快走劇を見せてくれた。そういう意味ではシルバーストーン・サーキットはトヨタにとっては得意とするコースでもある。今年もTF104Bの登場が待たれるが、高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)は「イギリス明けのヘレス合同テストでシェイクダウンします」とドイツGPでのデビューをほのめかした。昨年並みの活躍を期待したいところだが、TF104Bへの開発に力を注いでいるためか、今回はクルマの改良点も「電子制御くらいです」と少なく、クルマのパフォーマンス的には昨年とは事情が違っていた。前回のフランスGPから新型車を投入したマクラーレンとウイリアムズのパフォーマンスが上がってきているなかで、戦前から厳しい戦いが予想された。
レースに先立つ水曜日、電撃的な発表があった。チームは、ラルフ・シューマッハーと2005年から3年の契約を結んだと正式に発表した。
「何度も優勝している経験豊富なラルフが来年から加わってくれることは大変嬉しいことです。来年は我々も表彰台を狙うつもりですから、クルマの開発には必要な人材です。開発には同じ人を使うこともいいですが、新しい血を入れていくことも必要だと思います。違った見方をしていくことも重要です」
金曜日はイギリス特有の曇り空となっていた。気温16度、路面温度も26度という7月とは思えない寒さのなかで、最初のセッションは行われた。
「午前中は予想どおり、路面のグリップも低く。タイヤのグレーニングに悩まされました。ここの特徴として、走り始めはグレーニングが出て、アンダー傾向になり、そのうちリヤタイヤがタレてきてオーバーステアになるんです」
午後のセッションではクリスチアーノ・ダ・マッタのクルマのリヤのホイールベアリングにガタが出たのが見つかり、最初の15分くらいを修理に費やした。それでもタイヤのロングランも行い、大きな支障はきたさなかった。
午前中はリカルド・ゾンタ11番手、ダ・マッタ18番手、オリビエ・パニス19番手。午後はゾンタ、パニス、ダ・マッタの順で13、14、15番手と仲良く並んだ。
「金曜日の一番の目的はタイヤのデータ収集ですが、その点では仕事は出来ました。しかし、正直な話、セットアップには苦しんでいます。クルマのバランスはまだ十分とはいえない状態です。タイム的にはほぼシミュレーションどおりです。それと、タイヤの選択に関しても悩ましいところですね。ロングランの安定性はプライム、一発のタイムはオプションなんですが、どちらも一長一短という感じで決めかねてます。路面が良くなればタイムの落ちが少なくなるのですが、ここは雨が降る確立が高いし。そうなれば路面はまた元に戻る。天候まで考えるとタイヤチョイスは難しいですね」
土曜日、午後から雨の確率は40%とメテオフランスの予報官は予想した。しかし、予選が近づくにつれ、雨の可能性は少なくなっていた。「最初は午後1時か2時には雨という予想だったのですが、予選間際の雲を見たら、どうも雨は降りそうになかった」
予選1回目、最初に走ったミハエル・シューマッハーはスピンして大きくタイムをロスすると、他のドライバーもゆっくりと走る。2回目の予選は雨の確立も高かったため、出走順を出来るだけ早くしたいためだった。しかし、トヨタの2台は「雨は降らない」という高橋DTCの指示通り、普通にタイムアタックを行った。そのためパニスは3番手のタイムをマーク、ダ・マッタも8番手となった。
「1回目はパニスとダ・マッタで燃料の搭載量を変えてみました。クルマのバランスの違いを試すためです」
2回目の予選、ダ・マッタは低速コーナーでのアンダーステア傾向に悩まされたが、14番手のタイムをマーク。パニスは12番手につけた。しかし、パニスはタイムアタック後のクールダウンしたインラップで、後からアタック中のマッサに追いつかれ、ペナルティを受けてしまう。
「単純なチーム内のコミュニケーションのミスです」と高橋DTC。アタック後は普通、燃料をセーブするためゆっくり走ってくる。後ろからアタックしてくるクルマとの間隔は、ピットから無線で知らされる。それを知らせるレースエンジニアとパニスの間で誤解が生じたためにこういう事態となってしまったのだ。このため、パニスは予選タイムを抹消されてしまう。幸いタイムアタックしなかったフィジケラがいたため最下位は免れたが19番手まで落ちてしまった。逆にダ・マッタはパニスのペナルティと、アロンソがエンジン交換のペナルティのためポジションを10落としたため、ふたつポジションを上げ12番手となった。
「パニスは不幸なミスでポジションを落としてしまいましたが、ダ・マッタは十分ポイントを狙える位置にいるので何とかがんばってほしい。クルマのバランスも良くなったし、決勝を考えれば、まずまずだと思います。ただ、ここは常に雨を想定しなければならないので作戦面が難しいですね」
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