第11戦 イギリスGP 2004
2004年07月11日(日)
高橋敬三DTCに聞く:決勝
混戦にはまって前に出られず。次戦ドイツは新車で巻き返し
日曜日もシルバーストーンは厚い雲に覆われていた。気温は、この週末一番の冷え込みで、レースがスタートする午後1時になっても気温は17度にしか上がっていなかった。ただ、雨の心配はなさそうで、高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)はきっぱりと「雨は降りません」と言い切っていた。その言葉どおり、レーススタートが近づいた頃には時折青空が見え、日が差してくることもあった。それでも降水確率は40%と予断を許さない状況ではあった。
前日の予選のペナルティでタイム抹消となったオリビエ・パニスだったが、ミナルディの2台がエンジン交換をしていたため、スターティングポジションが2つ上がって17番手グリッドからのスタートとなった。
スタートはクリスチアーノ・ダ・マッタ、パニスともにまずまずのスタートだったが、パニスは最後尾にいたフィジケラ(ザウバー)に1周目にかわされて順位を落としてしまった。ダ・マッタはポジションをキープするが、こちらもエンジン交換で予選順位を降格されたアロンソ(ルノー)に4周目に抜かれ順位をひとつ落とす。しかし、その後はペースも良く安定したラップタイムで混戦のレースを戦っていた。
「パニスは多少グレーニングが出ていました。やはり、前日の雨で路面が元に戻ってしまったことが大きかったと思います。ダ・マッタの方は、2回ストップのクルマとしてはペースも悪くなかったと思います」
シルバーストーンはピットストップのロスタイムも大きいため、2回ストップが基本。しかし、ミシュラン勢はタイヤのグレーニングの問題もあり3回ストップを選択するクルマも多かった。またフェラーリをはじめとする数チームは2台の戦略を変えるところも多かった。
「うちは2台とも2回ストップを想定してましたが、ソフト系のオプション(タイヤ)を選んだパニスは3回にも対応できる準備をしておきました」と高橋DTC。
ダ・マッタは15周目に最初のピットイン。そして、16周目にパニスがピットインする。ところが、その直後、パニスに不運のトラブルが襲ってしまう。消火器のスイッチが誤作動し、消火剤がステアリングやヘルメットに噴射されてしまったのだ。たまらずコース脇にクルマを止めるパニス。
「走行中に消火器のスイッチが誤作動してしまったようです。初歩的なトラブルでドライバーには本当に申し訳ないと思ってます」
ダ・マッタは順調に周回を重ねる。12番手あたりで前には佐藤琢磨、ウエーバー、マッサらを射程圏内に捉らえていた。しかし、23周目、混戦のなかで周回遅れとなるミナルディが迫ってきた時、2台のミナルディに4周にわたってブロックされ、ペースが一気に落ちてしまったのだ。
「ブルーフラッグが振られているのに譲らない。それでチームとして抗議を出しました。27周目にようやく退いてくれたときには、前との差は15秒ほどに開いてしまって。この時に10秒以上もロスしてしまった計算ですね」
37周目に2度目のピットストップを終えると背後にトップのミハエル・シューマッハーが迫ってきていた。38周目、周回遅れとなってしまう。その直後の40周目にトゥルーリがクラッシュしてセーフティカーが入る。この時とばかりに2回ストップのクルマはピットに入り給油を済ました。
「このセーフティカーがすべてでしたね。3回ストップのクルマにとっては俄然有利に働いた。そのうえ、ダ・マッタは周回遅れになっていたから、前のジェネ(ウイリアムズ)や琢磨(BAR)との差が一気に開いてしまいました。それがなければポイント圏内は無理でも10位くらいにはいけてたと思う」
結局、1周の差が開き、さらにこの後は青旗が振られ、ペースもあげることが出来ず。13位での完走となった。
「今回のレースはザウバーも新車を出してきて速くなった。我々も新車TF104Bを次のドイツGPにデビューさせます。すでに新車はTMGのファクトリーで組みあがってます。まだ、空力パーツは間に合いませんが、来週のヘレスのテストでシェイクダウンして信頼性を確かめたうえ、ホッケンハイムでは見た目に新しいクルマで巻き返しを図ります」
期待の新車TF104BがドイツGPでは登場する。そのポテンシャルはいかに。後半戦の巻き返しに期待したい。
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