第12戦 ドイツGP 2004

2004年07月24日(土)

高橋敬三DTCに聞く:予選

上出来なTF104Bのデビュー。決勝のカギはタイヤの使い方

待望の改良型のニューカー「TF104B」のデビュー戦となるドイツGP。舞台となるホッケンハイム・サーキットは、本拠地ケルンから約300km。ニュルブルクリンクの次に近いサーキットだ。そのため、ぎりぎりまで準備が進められたTF104Bは、木曜日の早朝にTMGからサーキットに持ち込まれた。ヘレスのテストでシェイクダウンを行ったTF104Bだったが、この時にはまだ空力パーツが間に合わず、見た目は今までのクルマそのままの状態だった。それでも、モノコックなどが軽量化され、低重心化したクルマにドライバーは好感触を得ていたようだった。

「今回の大幅な改良には大きくふたつの改良点があります。ダウンフォースの向上と軽量化、低重心化です。空力パーツはリアウイング以外のほとんどの空力パーツが新しいものとなり、シーズン途中の改良としては、この3年間で最大規模の改良となっています。新たに作り直したモノコックは2桁の軽量化がなされています。さらに、シャーシの大幅な改良に加え、今回はエンジンも新しいスペックにしてきました。これはモンツァ用のもので、開発を前倒して用意しました。2%のパワーアップが図られているもので、大きな性能向上がなされています」と高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)。

サイドカウルの形が大きく変わったことから、パナソニックのロゴの位置も変わり、見た目にも大きく変わった。「ホッケンハイムはどうタイヤをうまく使うかがセッティングのキーポイントです。金曜日はグレーニングでフロントに悩み、土日はリアのドロップオフに悩む。決勝はタイヤのタレを抑えること、タレてきてもアンダーステアからオーバーステアにならないようにうまくセットアップしないといけません。路面のグリップは中くらい、バンピーでもないし、縁石もないから、その部分での問題はないんですが」

金曜日、3台目のリカルド・ゾンタはまだTF104Bが間に合わず、TF104でのタイヤテストに専念する。3台目のTF104Bが登場するのはベルギーGP。まだ、スペアパーツもない状態で、まずはスペアパーツを作ることを優先するためだ。金曜日の段階ではエンジンカウルは2台分しかなく、もし壊すようなことがあれば、ケルンに持ち帰り修理しなければならないような状態だった。

ドイツGPはいつも暑いレースとなるが、今週の天気予報ではそれほど気温は上がりそうにはなかったのだが、この日は気温は29度まで上がっていた。ただ、午後2時ごろには雨が降るとの予報であった。そのため、チームは午前中に2セットのタイヤを使い切り、タイヤの評価とデータ収集を行った。しかし、午後のセッション中には雨は降らず。路面が良くなったところで他チームは新品タイヤを投入したこともあり、午後のセッションでの順位はクリスチアーノ・ダ・マッタ、オリビエ・パニスは18、19番手と後方に沈んだ。雨はセッション終了後に降ってきた。

「タイム的には新品と中古の差があったためあまり良くありませんでしたが、感触的にはいいものがあります。午前中は路面が悪く、ドライバーはオーバーステアを訴えていました。ただ、タイヤの評価も新車のデータ収集もかなり出来ましたし、1日目としては良かったかなと思ってます。ドライバーはバランスが悪く不満タラタラでしたが、エンジニアとしては手応えを感じています」

前日の雨のため、また路面はもとに戻り、タイヤのグレーニングが心配された。しかし、グレーニングも出ずに、土曜日午前中のセッションでは、トヨタの2台は順調にロングランも済ます。ドライバーも前日よりもグリップも出て、バランスも良くなったと、まずまずの手応えを感じていた。そして、午後の予選1回目では、パニスが5番手のタイムをマークして、周囲を驚かせた。2回目の予選では多少のミスはあったものの、9番手のグリッドを獲得する。

「パニスは0・2秒ほどタイムロスしていましたが、まずは狙っていたタイムを出せたと思います。ダ・マッタの方は、午前中はクルマのバランスも取れていたんですが、午後になって若干オーバーステア傾向となり、ブレーキングでも安定しなくなってきました。予選の1回目が終わってフロントウイングを調整したんですが、直しきれませんでした。2台に戦略の差はがないんですけど、タイム的には大きく差が出た形になってしまいました」

ダ・マッタは予選15番手とタイムが出なかったが、新車の手応えを感じていたためか、チーム内には悲観的な雰囲気はなかった。

「新車を走らせて2日目としては上出来だと思います。ベースとしての実力も上がったと言う実感もあります。あとは短期間で力を100%を引き出せるかというところですね。唯一レースに向けての不安は、路面のコンディションによってタイヤのデグラデーションが出てしまうかどうかということだけです」

昨年は2台揃って入賞したドイツGP。果たして新しいクルマのパフォーマンスはどうだろうか。決勝でのTF104Bの走りに期待がかかる。