第13戦 ハンガリーGP 2004

2004年08月14日(土)

高橋敬三DTCに聞く:予選

原因不明、好調だったクルマの挙動が一変。決勝に向けて立て直し

レースドライバーに昇格したリカルド・ゾンタは、このグランプリで初めてTF104Bのステアリングを握る。ハンガロリンクを走るのも4年ぶりのことだ。テストドライバーからサードドライバーに昇格したライアン・ブリスコも、初めての仕事に挑む。オリビエ・パニスのポジションに変更はないが、担当レースエンジニアとメカニックが変更になったため、新しい担当との共同作業は初めてとなる。初めてづくしのハンガリーGPになったが、金曜日のセッションは順調に進んだ。

「通常、ロングランを最初にやってデータを集め、最後にパフォーマンスラン(ニュータイヤに履き替えてタイムアタックすること)を行うのですが、ライアンのクルマが2回目のプラクティスで水漏れを起こしたので、その後のパフォーマンスランができなくなりました。ちょっとかわいそうでしたが、仕事は十分にこなしてくれました」と高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)は語る。

タイムアタックの機会こそ失ったものの、タイヤ選択に関するデータなど、ブリスコはきっちりデータを収集。パニスとゾンタの2台のレースカーはさしたるトラブルに遭遇せず、順調にプログラムを消化した。

「オリビエのクルマは順調にバランスがとれてきた感じです。午前中は路面がダスティー(ほこりっぽい状態)なのでまったくグリップがなく、3台ともリアが振られて安定しませんでした。ですが、それは予想どおりです。午前中の後半から路面がだんだん良くなり、それに合わせて少しずつセットアップを変えました。オリビエはクリアラップがとれたし、バランスもまあまあだったので、ああいうタイムが出たのだと思います。ようやくポテンシャルが発揮できたかなと思います」

ゾンタはアタックラップ中に小さなミスをおかし、それがパニスとのタイム差となって現れた。

「リカルドもニュータイヤでアタックしたのですが、ちょっとミスをしてしまったようです。クルマも初めてでまだ慣れていないところがあるのでしょう。ただ、明日に向けてセットアップも変えられますし、いろいろなことに慣れてくるでしょう。ですから、リカルドに関しては全然心配していません。我々にとっては新しい体制で臨んだのですが、非常にうまく機能したと思います」

土曜日の朝、市の中心街で少し雨が降ったが、幸いサーキット周辺は雨の影響を受けず、ドライコンディションで予選前のプラクティスが始まった。前日のプラクティスの結果をもとにタイヤ選択を済ませたパナソニック・トヨタ・レーシングは、レースを想定したロングランや予選を想定したセットアップ調整に励んだ。

「ロングランのラップタイムも非常に安定していましたし、クルマのバランスもとれていましたので、午前中はみんなハッピーで、『さあ、いくぞ』という感じでした。リカルドも走行2日目になって、クルマを乗りこなしているようでした」

最高の状態で午後の予選を迎えたが、状況は一変する。風向きが変わったなど、午前と午後でコンディションが変化したことは事実だ。だが、正確な原因は現時点(予選終了後1時間)ではつかめていない。とにかく、午前中のプラクティスではあれだけ安定していたクルマがナーバスになってしまった。ふたりのドライバーも、チーム関係者も、そして高橋DTCも首をかしげる。

「非常に好調でしたので、午後に向けてはほとんどセットアップを変更せずに臨みました。ところが、2台とも全体的にグリップがなく、挙動がナーバスになってしまったのです。原因を調べているところですが、今のところわかっていません。午前中のタイムを上回ることができず、残念な結果に終わりました。午前中のタイムからすれば、1分20秒台前半は出ていてもおかしくありませんでしたから」

好調だった午前中のプラクティスでは、ゾンタが9番手、パニスが11番手で、トップとのタイム差は両者ともおよそ1秒1程度。予選でもこのギャップをキープしたまま1分20秒台前半のラップタイムを刻んでいれば、トップ10圏内に2台を送り込んでいたはずだった。

「午前中の状況からすれば当然トップ10に入れるだけのポテンシャルはあったと思うんですが、それがなぜ午後に再現できなかったのか。その点をしっかり、データとクルマを見て、調べなければいけないと思っています」

予選が終わって40分後、激しい通り雨がサーキットを通過し、路面に付着したラバーをきれいに洗い流した。この路面コンディションの変化が、レース展開に影響を与える可能性がある。

「雨で路面がリセットされましたので、みんなイチからのスタートになります。ウチは他のクルマにくらべてグレーニング(ささくれ状の摩耗)が出にくい特性を示していますから、有利な面も出てくる可能性があります。追い抜きが難しいコースなんですが、与えられた状況のなかでなんとかしなければ、という気持ちです」