第13戦 ハンガリーGP 2004
2004年08月19日(木)
オリビエ・パニス - ハンガリーGPを終えて
ホッケンハイムの後、スポーツをしたり、リラックスできる時間があって良かったと思っている。正直なところ、どちらかと言うと、僕たちドライバーよりも、毎日毎日を全力で仕事に従事していたのはチームのスタッフたちの方だから、彼らこそ休養が必要だったはずだ。今年はバーレーンと中国がカレンダーに加わって、チーム機材の輸送などの面も含めて、過密スケジュールの中のプレッシャーは例年になく高くなっている。それに加えて、今年はレーシングプログラムの多忙さだけではなく、TF104Bの開発にも力を注がなくてはならなかったから、本当に忙しいシーズンになっている。
ハンガロリンクのサーキットというのは、他のサーキットとは大きく異なっており、ドライバーにとっては身体的に大変厳しいコースだ。コクピットの中で気を抜くすきも全くない。例年、気温も高くなる傾向にあるから、週末のレースを体調を崩すことなく無事に終えることができて、まずは嬉しく思っているよ。
コースの特徴について言えば、ハンガロリンクはモナコに似ている部分が多い。僕らは最大のダウンフォースのセットアップで走行しなければならないし、モナコと同様に追い抜きが非常に難しい。第1コーナーが、唯一何とか追い抜きが可能なコーナーと言ってもいいが、それでも運が良ければ追い抜ける程度の話。つまり、予選の結果がとても重要になってくるんだ。
このコースでいつも問題なのは、特に初日に関してはサーキットがとても埃っぽいことだ。これがなんと言っても最大の問題だ。タイヤのゴムがコースに付着していくにつれて、コース状況は良くなってくるのは事実だけれど、初日の金曜日というのは、タイヤの比較テストをしなくてはならない。コース状況の変化を考慮しながら、タイヤのテストも同時に行う。すなわち、走行を重ねながらも、タイヤによってパフォーマンスが上がっているのか、それとも、コース状態が良くなりつつあるためにパフォーマンスが上がっているのか、見極めながらのテストが必要になってくるんだ。どこのサーキットに行っても、このような状況はある程度同じではあるけれど、特に、ハンガロリンクの埃はひどいので見極めが容易ではない。また、このような状況から走行のラインというのがたったひとつになってしまう。追い抜きの難しいコースで、この状況がその難しさを更にひどくしているんだ。
金曜日の練習走行で、5番手タイムをたたき出せたことには満足しているけれど、予選になって直前の練習走行ほどのタイムが出せなくなってしまった。僕とリカルドがコースインしたとき、少し風が強くなってきていて、そのこともパフォーマンスダウンの要因のひとつだったのだろう。高速コーナーがスピードに重要なのは皆認識しているけれど、実は低速コーナーの方がタイムをロスしやすい。路面のグリップ力が低く、アンダーステアー傾向が強いこのコースでは、予期せぬ突風によって思わぬロスが生まれる。僕が13番手、リカルドが15番手という予選順位は、僕らが思っても見ない結果だった。
ハンガリーでは追い抜きが難しいため、スタート時の順位がそのままレース結果となる。だから、僕らの予選結果は、レースでのパフォーマンスを決定付けたも同然だった。僕は、まずまずのスタートを切った。Mウエーバーの横にほとんど並んだ状態で第1コーナーへストレートを下って行った。ところが、前方での接触事故が目に入ってきたので、そこへ突っ込んでしまわないように外へ大きくラインを変えたんだ。ところが、レースラインから外れた場所はまだまだ埃っぽいままで、順位をいくつか下げることとなってしまった。
後方で順位争いをしなくてはならないというのは、特に前を行くクルマよりも自分のクルマが速いという自信があるときには、とても辛いことだ。この状況で僕たちドライバーにできることは、集中して絶対にミスを犯さないようにすること、そして、素晴らしいピットワークによって少しでも前に出られるようにと願うことぐらいなんだ。チームが今回も素晴らしいプロの仕事ぶりを見せてくれたおかげで、僕は11位でレースを終えることができた。
レースにおけるTF104Bのペースは上々だった。だからこそ、真価を示すことができなくて残念でならない。前半は、後続のクルマに捕まってしまい、後半に入って、やっとクリアなラップを刻めるようになってきた。しかし、その頃には青旗を提示され、さらなるタイムロスを強いられてしまった。
金曜日と土曜日の練習走行で、トップ10のタイムが容易に出せるようになっていることから見ても、僕らのクルマがかなり進化していることは明らかだ。しかし、またしてもTF104Bの本領を発揮することができなかった。残り5戦、僕はトップ8に照準を合わせた走りを見せるつもりだ。
今年、ベルギーGP復活することは、本当に嬉しいことだ。スパは僕の一番好きなサーキットだし、フォーミュラ1サーキットの中でも最高級だと思っている。昨年、カレンダーから外れたときは本当に残念だったし、このサーキットは僕らのクルマにマッチしていると思うんだ。僕らの優秀なエンジンを大いに生かすことができるし、追い抜きの問題もないコースだ。僕らは、不覚にも選手権ポイントから遠ざかってしまっている。だからこそ、次のレースではポイントを確実に獲得していくつもりだ。僕自身も、そしてチームも、今シーズンは本当に頑張ってきている。このあたりで、その努力を大きく実らせて良い結果を得るときが来ているんだ。
ファンの皆さんの変わらない応援に本当に感謝している。
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