第14戦 ベルギーGP 2004
2004年08月28日(土)
高橋敬三DTCに聞く:予選
天候を先読みしたタイヤ選択。いい戦いが期待できそう。
2年ぶりに開催されたベルギーGP。しかもコースレイアウトは変わり、路面も半分以上再舗装された。そのため通常なら、まずは路面のグリップとか、コース全般のデータ採取の作業から始めるのが定石である。しかしチームはここで、いつもと違うアプローチを選択した。
「普通なら土曜日の朝までに決めればいい予選レース用タイヤを、午前中のうちに決めてしまったんです。明日2日目は朝から雨になる可能性が非常に高い。一方、日曜日のレース本番は、再びドライになるという予報ですからね。それなら早いうちにタイヤを決めてしまい、午後のフリー走行は、レース用のセットアップに集中した方がいいだろうと判断しました」と、高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)は語る。
金曜日午前中のセッションで、前戦からサードドライバーを任されたライアン・ブリスコは、21周を走り込んで10番手。レギュラー陣は、まだ路面にグリップが付いてない状態だったこともあって慎重な走行に徹し、リカルド・ゾンタが18番手、オリビエ・パニスは20番手だった。ところが午後になり、選択したタイヤでロングランを行っていたブリスコが、スパ・フランコルシャン名物の上りコーナー「オー・ルージュ」の入口でスピン。ガードレールに激突して、クルマを大破させてしまう。
「ライアンのクラッシュは、左リヤタイヤのパンクが原因です。念のために精密検査を受けさせましたが、大したことはないようで良かったです。その結果、レギュラー勢の2台だけで作業を進めることになってしまったものの、ロングランのペースは安定して速い。これは決勝に向けての好材料ですね。その意味では、初日としては満足できる結果でした」
2日目の土曜日は、予想通り朝から雨。しかも深い霧がサーキットをすっぽりと覆い、視界はかなり悪い。これでは緊急時の医療用ヘリコプターが飛行できず、午前中の1回目フリー走行は小刻みに延期され、結局中止になってしまう。さらに2回目のセッションの時間になっても、状況は好転せず。このまま午前の走行はなくなってしまうかと思われたが、30分遅れでようやく始まった。
「でも始まってすぐに、ウイリアムズのクラッシュとかで赤旗中断。そのままセッションが終わってしまったでしょう。結局、わずか13分ほどしか走れませんでした。そうなると、レース本番が万一ウェット路面になったときに備えての、確認走行ぐらいしかできることはなかったですね」
そして午後の1回目予選が始まる頃になっても、雨は降り止まない。当然路面は、これ以上ないほどのグショ濡れ状態である。
「1回目は、オリビエはアンダーステア(クルマが曲がりにくい状態)が強くて、思ったようなタイムが出せませんでした。一方のリカルドは、第10コーナーを攻めているときに白線に乗ってズルっと滑り、スピンしてしまった。そのままタイヤバリヤに後ろからぶつかったものの、なんとか自力でピットまで戻ってこれた。でも思った以上にダメージがひどくて、すぐに修理にかかりました」
この時のタイムは当然ながら最下位。続いて行われる2回目予選は、このセッションで出たタイムの逆順に走ることになっている。つまりゾンタは、一番最初に出走しなければならなかった。
「走行まで15分ほどしか余裕がなくて、フロアパネルやリアウイングは交換したんですが、ターニングベインは折れたまま。クルマ内に入り込んでしまった砂利も、全部は出すことができずに、送り出さざるをえなかった。データ上も明らかに、ダウンフォースがかなり減っている状態で走ったので、あのタイムが精一杯でしたね」。ゾンタは残念ながら、最下位の20番手に終わる。
「それに対してオリビエは、2回目の予選までにスプリングとかタイヤの空気圧調整を行った結果、かなりバランスがよくなった。そのおかげで、非常にいいタイムを出してくれました。二人が走っているときは、2回の予選を通じてずっと雨で、深溝のレインタイヤを履くしかなかった。そんなコンディションだったにもかかわらず、オリビエは9番手に入りました」
2年ぶりに行われたベルギーGP予選は、やはりこれまでの多くの先例に違わず、天候に翻弄されたセッションとなった。
「とはいえ明日のレース本番は、ドライ路面の予定ですからね。午前中はまだ濡れているかもしれませんが、午後2時のスタートまでには乾くでしょう。昨日の時点ですでに、選択したドライタイヤでの走り込みと、レース用のセットアップもやっているので、いい戦略で戦えそうです。トップ10内のオリビエは、期待できそうですね。もちろんリカルドにしても、ここは抜けるサーキットですから、入賞圏内に入ってくれることを期待していますよ」
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