第15戦 イタリアGP 2004

2004年09月07日(火)

リカルド・ゾンタ - イタリアGPに向けて

パナソニック・トヨタ・レーシングのレースドライバーになってから、僕はとても楽しい時間を過ごしている。レースの感覚も取り戻せてきたし、自信も戻ってきた。ブダペストではレースできることに感激する反面、緊張もした。でも、スパではずいぶんと落ち着いて集中できるようになっていた。ベルギーで出せたような良いパフォーマンスを示すことができてくると、クルマの中からでも自然にリラックスできるようになってくるんだ。

僕にとって、金曜日の練習走行での役割が今では全く違っていて、仕事の内容はより専門的になっている。依然としてロングラン走行も行うけれど、第3ドライバーみたいにタイヤを6セットも使ってテストするのではなく、2セットだけしか使わないので、慎重にタイヤを選らんで走行中でのテストをしていかなくてはならない。そこに大きな違いが出てくる。特にスパのように長いサーキットでは、多くのラップをこなせばこなすほど、ドライビングという意味では改善を加えていけるからだ。

ベルギーGPでは、予選で良いポジションを得られると思っていた。しかし、セッションはウエットコンディションとなり、第1予選では頑張りすぎてミスを犯してしまった。メカニック達が素晴らしい仕事をしてくれたので、数分間で多くの修理を行ってくれた。クラッシュによってクルマが影響を受けていたので、上位が望めないのは分かっていたから、はじめから燃料を多く入れてくれるように頼んだのだけれど、それでも20番手というのにはがっかりした。

1周目に10ポジションを上げたというのは最高の気分だった。しかし、われわれのクルマが他のチームと比較して、どのぐらいのパフォーマンスができるのか、はっきり分かっていなかったので、その時点で手放しで喜んでいたわけではなかった。でも、後ろから来るクルマが僕のことを捕らえられないということがわかったので、「OK、ここまで順位は上げたから、このまま行くぞ」と自分に言い聞かせた。とても前向きな姿勢でレースに臨めていたし、1ポイントぐらいであれば獲得できるかも知れない、と思い始めていた。その後、多くのドライバーがトラブルに見舞われたり、ミスを犯すのを目の当たりにして、期待は膨らむ一方だった。

レースの終盤にさしかかり、Kライコネンがもう一回ピットストップをしなくてはならないと思っていたので、表彰台に立つことも可能かも知れない、と思っていた。セイフティーカーが戻った後、バックミラーを確認すると、真後ろのザウバーが僕を抜くには相当後ろにいることが確認できたので、前を行くRバリチェロにプレッシャーを与えながら、ゴールすることに集中しようと気持ちを定めたところだった。

エンジンが実際にブローしてしまうまで、何の警告も出てなかった。オールージュを抜けようとしたとき、ただ急に止まってしまった。トラブルが起こったとき、何が起こったのかを確認するためにコクピット内のボタンを全部押してみた。また、シフトダウンしてアクセルを全開で踏んでみたり、できそうなことを全部やってみた。そうしたら、煙が見えたのでエンジンが完全に壊れてしまったことが分かった。ゴールまであと3ラップ、わずかに18キロだったんだ。全く信じられないよ。ただ、レースを振り返ってみると、もちろん、ゴールしてポイントを獲得できなかったのは残念だったけれど、レースではペースも速く、われわれの高い戦闘力を示すことができた点では、大きな収穫だったのではないかと思っているので満足している。

データだけで見れば、モンツァは僕らのクルマと相性の良いサーキットなはずだ。中高速コースで、エンジンの差がものを言う場所だから、トルクがある僕らのエンジンが威力を発揮するはずだ。

F3000時代にモンツァでレースをした経験はないけれど、F1では、なかなか良い思い出があるし、特に2000年は印象深い。序盤では15番手まで順位を落として走っていたのだけれど、その後にどんどんとクルマを抜いて行けて、ピットストップするまでには3位まで順位を上げていた。戦略を変更したので、結果的には6位でフィニッシュしたけれど、追い抜きができた良いレースだったし、とても楽しめた。

僕はパラボリカコーナーが特に好きなんだ。このコーナーは真のドライバーズコーナーで、シーズン中に訪れるサーキットの中でも、ドライビングスタイルで大きな違いを出せるコーナーなんだ。7速で350キロから355キロでコーナーに進入し、すぐに3つシフトダウンして減速。ドライバーとして、本当にスピードを感じることができるし、コーナーの出口までが長くてクルマの力量を本当に引き出せる場所なんだ。

そのコーナーは、タイヤの摩耗によって全く違ってくる。新しいタイヤを付けて走り始めた1周目からゴール直前の周回まで、タイヤの条件の変化に伴ってコーナーの感じも周回毎に異なってくる。クルマの限界も毎回違うため、その限界を毎回見極めてそれを超えてしまわないようにコントロールしていかなくてはならない。そして、それがドライバーの腕によるものなんだ。

レースの週末の直近のテストでは、レースに向けたセットアップとタイヤの比較を行うことができる。僕らは3日間のテストで、オリビエ、ライアン、そして僕の走行を全部合わせると400周を走破しており、充分な時間をかけて、クルマのバランスの改良と、ピットインとピットアウトを繰り返した走りでタイヤとトラクションコントロールのテストをじっくり行った。このテストと準備によって、日曜日にポイント獲得ができることを望んでいる。