第15戦 イタリアGP 2004
2004年09月12日(日)
高橋敬三DTCに聞く:決勝
手応えのあったロングランのタイムが出せず悔しい思い。原因を徹底究明
「昨日の午前中に出したロングランのラップタイムがどうして今日のレースで再現できなかったのか? その点が解せない。エンジニアとして納得できない部分ですね」。オリビエ・パニスはスタート直後の1周目に他のクルマと接触してリタイア。リカルド・ゾンタは11位完走という結果に終わったイタリアGP決勝後、高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)はそう言って悔しそうな表情を見せた。
日曜日のモンツァは朝から小雨が降り続くあいにくの空模様。決勝前にはその雨も上がり、雲の隙間から少しずつ青空と日差しが戻ってくるが、スタート直前のコース上にはまだ一部に水が薄っすらと残る微妙な路面コンディション。しかし、チームはこの天候もある程度予想した上で今週末の戦略を組み立てていたという。
「日曜日に雨の可能性があることは分かっていたので、多少最高速を犠牲にしてもややダウンフォースを多めに付けるなど、事前に対策をしていたのですが。オリビエのほうはスタート直後の第2シケインで、シューマッハーがスピンしたところに出くわしてしまい、彼はシケインの内側をショートカットする形で避けようとしたのですが、同じように前を走っていたピッツォニアが目の前で減速したのを避けきれずに追突。オリビエのクルマはフロントウイングにダメージを負った上、グラベルに弾き飛ばされて、そこから動けなくなってしまいました。一方、ゾンタのほうはかなりいいスタートを切れて、10番手ぐらいまでポジションを上げてくれたのですが、路面が僅かに濡れているという難しいコンディションの中でタイヤがなかなか温まってくれず、そこから大きく順位を落としてしまいました。その後はなんとかポジションをキープしたのですが、路面が完全に乾いて、舗装にタイヤのラバーが乗ってきた状態でもグリップの不足が解消せず、結果的に昨日の午前中のロングランと比べて2秒近くも遅いタイムになってしまった。レース序盤は昨日とかなり違うコンディションでしたが、路面にラバーが乗ってきた後半は、路面温度なども含めて土曜日の午前中にかなり近いコンディションだったのに、なぜ、これほどラップタイムが落ちてしまったのか? 今後のレースのためにも昨日のデータとしっかり付け合せながら、その原因を解明しなければならないと思っています」
初日の金曜日にはパニスのクルマ後部からのバイブレーションが発生するという小さなトラブルがあったものの、初日、2日目とほぼ順調にセットアップを進め、決勝レースを想定したロングランのタイムにはかなりの手応えを感じていた今回のイタリアGP。その手応えが一瞬にして失われてしまった今回のレースは高橋DTCにとってもかなりショックな結果だったようだ。
「正直、ガッカリしたし、悔しいという気持ちが強いですね。オリビエの事故はレーシングアクシデントなので仕方がない部分もありますが、リカルドのクルマがなぜグリップ不足に苦しんだのか? 昨日の午前中の状態では1分22秒台でのロングランが十分に可能だったはずなんですから」
このイタリアGPが終わると、残るは中国、日本、そして最終戦ブラジルと遠征3連戦が続く。地元日本GPを最大のターゲットとしながら、TF104Bのポテンシャルをどこまで引き出せるかが、チームにとっては終盤戦の大きな鍵となりそうだ。
「当初はモンツァから新しい仕様のエンジンを投入する予定だったのですが、ベルギーGPで起きたエンジントラブルの対策をまず最優先したために、今回新しいエンジンの投入は延期されることになりました。これも来週のシルバーストンテストでもう一度確認を行って、中国か日本で投入できるようにしたいと思っています。次の上海は基本的にダウンフォースを多めにしたほうが、ラップタイムが上がるタイプのサーキットですね。ただ、ストレートが長いのであまり直線スピードを犠牲にすると、スピード差を利用して追い抜きされやすくなる可能性もある。回りの様子も見ながら、このあたりのバランスをどう見極めるかが重要なポイントになってくるんじゃないでしょうか」
地元日本GPで最高のパフォーマンスを見せるためにも、初開催となる次の中国GPで何とか弾みをつけて勢いに乗りたいところだ。
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