第16戦 中国GP 2004

2004年09月20日(月)

リカルド・ゾンタ - 中国GPに向けて

これまで上海インターナショナルサーキットを見た限りでは、サーキット自体は、中から高ダウンフォースのコースだと考えている。それほど高いダウンフォースが必要なサーキットではないと考えている理由は、ストレートはとても長いが、曲がりくねったセクションがいくつか含まれていることにある。ブレーキング時の安定性が重要になってくるだろうし、特にコーナリングをする上で、この安定性が非常に大切になってくる。コーナーによっては、トラクションで大きな差がつくところがある。第3、第9、そして第13コーナーなどストレートの直前にあるコーナーでは特にそうなるだろうと考えている。それから、ホームストレッチにつながる最終コーナー手前の、アクセル全開でコーナリングする第15コーナーもそうだ。

コース終盤のセクションである第13コーナーから第16コーナーまでは、全般的に追い抜きが可能なセクションだろう。その他のセクションでは、追い抜きが非常に難しいのは明らかだ。

コース序盤のコーナーは、追い抜きには適しておらず、クルマのバランスがモノを言うセクションになってくるだろう。これらのコーナーはとても低速で、2速ギアで走行することになる。

全てのコーナーの攻め方は違っているようだけれど、攻め甲斐があって楽しめるコーナーかどうかは、現地に着いて走ってみてから初めて言えることだ。低速サーキットである印象は受けているけれど、実際にクルマに乗ってみれば、意外に楽しめるトラックかもしれない。どのようなクルマでも言えることだけど、特にF1のクルマに乗っていると、ドライビング自体というのは楽しいものだ。でも、それは、クルマのグリップとバランスのレベルによって大きく異なってくる。

新しいサーキットを走るというのは、なにも、全てにおいて今までより難しくなってしまって、より一層の努力を強いられる、というわけではない。ただ、新たな戦略に適応させていかなくてはならない、という労力は発生する。つまり、ドライバーで言えば、最初の数周、といっても普通は最初の6周ぐらいになるけれど、それをコースの完熟走行に当てていかなくてはならない。

フォーミュラ・ワンのクルマが新しいサーキットを走る前というのは、まだラバーが路面に付着していないので滑りやすくなっている傾向にある。つまり、最初はクルマのバランスを完全に取ることができない。特に最初の練習走行1時間では、バランスを取ることは難しい。

金曜日には、ラバーが路面に乗りはじめたら、とりあえずはタイヤの比較から開始する。もちろん、それも重要な作業なんだ。タイヤ比較を始めるころになっても、コースの滑りやすい状態が続いている場合は、グリップレベルが上がっていくのに合わせて同じ作業を何度か繰り返さなければならない場合もある。

勿論、工場でシミュレーションを行っているので、ダウンフォースをどれだけつけるか、そして、どのギヤレシオが必要なのか、などと言ったことに関しては参考にできる資料はある。しかし、グリップレベルを把握するには、現地でクルマをドライブして、ドライバーが感じるまで知る方法というのは無い。それでも、走れるだけの走行距離を重ねることによって、レースに向けて必要な全ての情報を、金曜日の走行が終わるまでに集積する。もちろん、第3ドライバーであるライアンにも最大限活躍してもらって金曜日のデータ収集のための走行が行われるんだ。

新しいサーキットでのレースでは、予想外の結果を生むことがよくあると思う。というのも、各チームがクルマに対して行う開発の度合いが、既存のサーキット以上に違いを発揮する傾向にあるからね。いつもテストを行っているところでは、経験豊かなチームがコースにマッチしたセッティングのパッケージを周到に準備することができる。でも新しいサーキットのレースは、他のチームにとって一矢を報いる大きなチャンスでもある。もちろん、われわれパナソニック・トヨタ・レーシングチームにおいても同様のチャンスがある。

僕は火曜日に中国に到着して、現地でトレーニングを行い、そして上海を訪れる予定にしている。中国に行ったことはあるけれど、上海に行ったことはまだ無いので、良い経験となるだろうと楽しみにしているよ。