第16戦 中国GP 2004
2004年09月26日(日)
高橋敬三DTCに聞く:決勝
歯車がかみ合わず、悔しいレース。ゾンタ、パニスとも不運に泣く
「悔しいレースでした」と、高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)は重い口を開いた。予選まではパーフェクトな戦いぶりを見せながらレースで失速した前戦イタリアGPと同じ轍を踏まない。そう誓って臨んだ初開催の中国GPだったが、前日まで順調にかみ合っていた歯車が日曜日になって急激にきしみ始める。8番手グリッドのオリビエ・パニスがスタートで出遅れた。
「オリビエはスタートでエンジンをストールさせてしまいました。彼のミスではありません。たぶん、エンジン回転の合わせ込みがちょっとずれたんだと思います」
突如アンチストール機能が作動し、スタートにてこずったパニスはオープニングラップで17番手にまでポジションを落とすと、レース終了まで浮上のチャンスをつかむことができないまま14位でレースを終えた。戦前は抜けるコースという予想が上海サーキットに対してあったが、そう簡単に抜けるものでもなかった。
「なかなか難しかったですね。徐々には抜いてくれたのですが、あのマイケル(・シューマッハー)でもつらそうでしたからね。オリビエが(順調にスタートし)そのまま行っていれば……。スタートでザウバーの前に出ていれば展開は違っていたと思いますが」
パニスの出遅れをカバーするかのように、リカルド・ゾンタがスタートで好ダッシュを見せた。13番手からスタートしたゾンタは9番手にポジションを上げて、レース最初の1周を消化する。
「リカルドがそのぶんいいレースをしてくれました。途中、ザウバーの2台のペースが遅かったので上位陣と離れてしまったのが残念です。2ストップ勢と3ストップ勢で順位の入れ替わりがありましたが、(3ストップを予定していたゾンタは)非常にいいペースで走ることができたと思います。そのまま走っていればポイント圏内でフィニッシュできた可能性もありました」
そのゾンタは35周目、ギアボックストラブルで戦列を去る。「まさか、ギアボックストラブルが起きるとは思っていませんでした。非常に残念です」。5速のドグリング(変速機構)を破損したゾンタは、6速にギヤを入れたままゆっくりとコースを周回し、ガレージに戻った。
「攻めればトラブルが出るということです。シフトアップ、シフトダウンに要する時間を短縮していくのが開発の常道ですが、減らしていけば当然ドグリングへの衝撃が増えます。そのあたりをぎりぎりのところで抑えるのが通常のやり方ですが、ぎりぎりでも、ぎりぎりのぎりぎりまで攻めればそれだけタイムを短縮できる。ミリセック(1000分の1秒単位)のオーダーです。1周で数十回ギアシフトがあれば、『ちりも積もれば』で速くなります。ですが、ちょっとした瞬間に限界を超えることもありえます」
変速時間を極限まで削った結果、ドグリングへの負担が増えた。ドグリンクが負担に耐えきれず、音を上げてしまったのである。ゾンタは4番手走行中にトラブルで戦列を去ったベルギーGP以来、3戦ぶりのリタイアを喫することになった。
「いろいろ残念なことが起きましたけど、レースのタイムは結構安定していましたし、狙っていたタイムを出すこともできました。なかなか歯車がかみ合わないところはありましたが、一歩一歩やっていくしかないと思います。攻めれば壊れますが、攻めなければ追いつけませんから。次はなんとか歯車がうまくかみ合うようにしたいですね」
中国GPを終えたパニスとゾンタのふたりのレースドライバーは、ヨーロッパに戻らず日本へ移動。来季レースドライバーのヤルノ・トゥルーリと、トヨタ・ドライバーズ・アカデミーに所属するフランク・ペレラ、平中克幸がヨーロッパでテストを行い、日本GPに向けた準備を行う。
「我々のホームグランプリですので、重要なグランプリのひとつという位置づけで考えています」と、高橋DTCは3回目の母国レースに向けた意気込みを語る。「新たなものを使ってチャレンジし、混乱するよりは、今あるものを100%使いこなすことが大事だと思っています。ただし、新しいものがゼロではいけないので、どこまでやるかをこれから議論します。チーム間の争いはまだ残っていますから、鈴鹿も決勝重視になると思います。できるなら、予選でパフォーマンスを見せて、決勝でもっと上位に上がるのが理想ですね」
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