第18戦 ブラジルGP 2004
2004年10月24日(日)
高橋敬三DTCに聞く:決勝
臨機応変な対応も入賞には至らず。レース後半は上位陣と遜色ない走り
土曜日の予選まで順調にきていたパナソニック・トヨタ・レーシングの2台だったが、決勝は荒れた展開に翻弄されることとなった。前日の夜には雨が降り、天気予報どおり、決勝日は朝から曇天の天気となった。レース前、高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)はこう語っていた。
「レース後半に確実に雨が降るようですね。その雨がいつ降るか。また、どのくらい降るか。ウチとしては、レース前にドカンと降って、路面がクリーンになって、レースをやる頃には半乾きくらいで、ドライタイヤでいけるくらいが良いのですが」
しかし、天気は高橋DTCの思惑通りにはいかなかった。レースのスタート前30分くらいに降り始めた雨は、あっという間に路面を黒く濡らすとまた止む。ここまではまさに高橋DTCの思惑どおり。チームはこの状況のなか、ドライタイヤでいく準備を始めた。しかし、ここから微妙に高橋DTCの思惑とずれてくる。スタート3分前にまた雨が降り始めてきたのだ。
「それで大急ぎでタイヤを換えて、セッティングも変えました。あの状態ではドライタイヤでいくのは難しい状況でした。ルノーはそこでギャンブルに出ましたけど。結果を見れば、スタートをインターミディエイトタイヤでいったのは間違ってなかったと思います」
スタートは、難しいコンディションのなか、トヨタの2台は絶妙なダッシュを決める。ヤルノ・トゥルーリは右のピットウォール際を際どく加速し、1コーナーまでに3台をかわし6番手に上がった。リカルド・ゾンタも濡れた路面で混乱した中団グループのなかを堅実に上がっていき、1周目にはこちらも3台をかわし11番手に上がっていた。
「とにかくスタートは絶妙でした。レースの滑り出しは非常に良かったと思います」。しかし、レースが進むにつれ、高橋DTCの思惑とずれはじめる。路面はすぐに乾き始め、インターミディエイトタイヤでは厳しい状態となった。急遽、5周目にトゥルーリが、6周目にはゾンタがピットインしてきた。
「この時、タイヤをドライタイヤに換えるだけではなく、燃料も少し入れてピット戦略を2回から3回に変えました。この辺はうちのチームも臨機応変に対応できるようになったと思います」
路面コンディションに素早く対応したトヨタの2台だったが、ピットアウトするとザウバーのフェリペ・マッサの後ろでペースを押さえられてしまった。
「10周目頃からマッサの後ろで押さえられてしまって、上位との差が大きく開いてしまいました。そうしているうちに、使用しているタイヤ特性の差で、我々のクルマのペースが上がらなくなってきてしまった。まったく悪循環です」
この時の順位は11番手トゥルーリ、12番手ゾンタだった。その後、30周目にはまたパラパラと雨が降り始める。これでまたもやペースが上げられないでいた。
「クルマが大分良くなったとはいえ、まだまだ我々のクルマは他車に比べダウンフォースが足りないため、変わりやすいコンディションの中では差が出やすい。今日のレースは濡れた路面に翻弄されたレースとなってしまいましたね」
レース後半、路面も乾き、タイヤのゴムが路面のグリップを上げてくると、トヨタのクルマは速さを取り戻してきた。トップグループと同じ1分12秒台で安定したラップを重ねだした。背後まで迫ってきたトップグループのクルマもなかなかトヨタの2台を抜くことができずにいたのだ。
「最後のスティントになって、ようやく金曜日、土曜日のペースが取り戻せたという感じです。前回の日本グランプリもそうでしたが、天気に翻弄されて、きちんとしたレースができなかった。我々としては、最後はきちんとしたレースがしたかったですね。クルマの進化も証明したかったですしね。ただ、そんななかでも、今年やってきた成果というものは出せたと思います。安定したレースでのペースもそうですが、どんなコンディションのなかでも慌てずに対応できた。今回、戦略を変える時もきちんと対応できたと思いますし、満足いく部分もあったことは確かです」
荒れたレースで本来の実力が証明できなかったが、表には出ない部分で、高橋DTCは確実な進歩を実感できたという。
「来年は最初から速さを見せて、結果を出したいですね」。すでに来年型のエンジンはテストを重ねている。クルマも製作の最終段階に入っており、チームではすでに来年に向けての戦いが始まっている。
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