新居レポート - 2009 第5戦 スペインGP

スペインGP 新居レポート

2009年5月11日

いつもご声援ありがとうございます。アジア・オセアニアラウンドを終え、ヨーロッパラウンドに突入した09年のF1グランプリ。ヨーロッパラウンド緒戦の舞台は今年もスペイン・バルセロナとなりました。それでは、さっそくスペインGPの報告をいたしましょう。

ファクトリーから完成直後の新パーツを持ちこみ、気合いを入れる

スペイン、カタロニア・サーキットは1周が4.655kmと短め。各チームこのGPに向けて新型パーツを開発し、導入してくるため、今後のシーズン展開を占ううえで重要な意味を持つ。昨年はヤルノ8位、ティモ14位完走。

開幕戦のオーストラリアGPから1カ月以上が経ち、第2の開幕戦とも言われるヨーロッパ緒戦のスペインGP。ファクトリーがあるドイツから近いということもあり、我々もギリギリまで新しいパーツを製作して、グランプリ直前に持ち込みました。前回のバーレーンGPでは悔しい思いをしましたが、クルマに勝てるポテンシャルがあったことは確認できました。バーレーンGPの後に行ったミーティングでも、異なる戦略を立てていればデータ的にみて、優勝できていたという報告もありました。しかし、過去を振り返っても結果は変わりません。ここは気持ちを新たにして、スペインGPからもう一度スタートするつもりで、バルセロナに乗り込んできました。


順位を気にせずに、新しい空力パーツの比較テストに集中

新たに持ち込んだパーツのひとつがフロントウイング。上からみると全体のウイング面積が広くなっている。シーズン中の走行テストが禁止されたので、これら新型パーツのテストはフリー走行時に行う事になる。

今回、非常に多くの新パーツをスペインGPで投入することを予定していました。フロントウイングはひと目でわかるほど改良されていましたし、リアウイングは違いがわかりにくいかもしれませんが、2種類持ち込んでいました。さらにエンジンカウルも新しいものを持ち込みました。今年はシーズン中のテストが禁止されていますから、これらのパーツがコース上でも風洞実験どおりのパフォーマンスを発揮するかどうかを判定するのは、グランプリの舞台でしかできません。そのため、金曜日のフリー走行1回目はこれらのニューパーツの比較を行うために、2種類のタイヤを1セットずつ使用しました。
午後のフリー走行2回目では2種類のタイヤでロングランを行いながら、午前中の走行データを元に決定した空力パッケージでのセットアップもいくつか試しつつ、タイヤのパフォーマンスを比較しました。したがって、ポジション的には他チームに対してやや見劣りする結果となりましたが、2日目以降に向けて非常に有意義なデータが収集できたという点では満足のいくフリー走行となりました。予選も、残りのテストメニューを確認した上で自分たちのやるべきことをきちんとやれば、必ず結果は付いてくると信じていました。

新パーツ導入を見送った結果、低ダウンフォースに悩まされた予選

サーキットの特性に完璧にクルマをセットアップできないまま臨んだ予選だったが、2台そろって10位に入った。幾とおりかの戦略が考えられるサーキットだが、ヤルノは燃料を多めに積み、上位を目指す作戦だった。

決してうまく行った予選だったとは言えませんでしたが、レース戦略を考慮したスタートポジションだったと考えれば、必ずしも悲観するような予選だったとは思いませんでした。
バーレーンGPのような最高の予選が戦えなかった原因は、前日やり残したメニューを土曜日午前中のフリー走行3回目で試した結果、新しい空力パッケージがまだ実戦に投入できる段階ではないという判断に至り、従来型の空力パッケージに戻したためです。そのため、我々が想定していたよりも低いダウンフォースレベルで予選を戦わざるを得ませんでした。そのため、セクター1は速かったのですが、ダウンフォース量がスピードに結びつくセクター2からセクター3にかけてのセクタータイムで、ライバル勢に対して引けを取ってしまいました。
また予選の第1ピリオドではヤルノ(トゥルーリ)が渋滞に引っかかって、少し心配しましたが、なんとか踏ん張ってくれました。今回の予選では渋滞が起きることと、ソフト側のタイヤのタレが少ないことから、2周から3周連続でタイムアタックできるだけの燃料を搭載して、コースインさせていたことが功を奏しました。ただティモ(グロック)は第2ピリオドで3番手のタイムをマークしていたものの、最終ピリオドでは燃料搭載量を考えるとやや物足りない結果に終わりました。ティモ曰く「燃料を多く搭載してアタックした最終ピリオドになって、クルマがトリッキーになった」ということで、これもダウンフォースが想定していたよりも低かったことが影響していたのかもしれません。

ティモ、オイル系トラブルでパワーダウン。スタート出遅れが大きく響く

2台ともスタートが思うようにきれず、アクシデントに巻き込まれるなどの不運も重なり、悔しい結果となってしまった。各チームの力の差が縮まってきているとティモは感じていたようだった。

決勝レースは、スタートでほとんど決まってしまいました。2台ともにスタートで出遅れましたが、理由はそれぞれ異なりました。まずヤルノはスタートの反応自体は悪くなかったのですが、ホイールスピンを嫌って、トルクを絞ったスタート用のセッティングが裏目に出てしまい、路面のグリップに駆動力が負けてしまって失速してしまったようです。さらに1コーナーで前を走るロズベルグ(ウイリアムズ)がコースオフして、2コーナーでコースに戻ったときにはヤルノに横からぶつかるかの様な形になりました。ヤルノが衝突を避けた結果、後輪がグラベルに出てしまい、スピンしてしまいました。ヤルノの燃料搭載量を考えれば、表彰台も狙えたので、とても残念な結果でした。
一方、ティモはスタート直後にエキゾーストから煙が上がっていました。どうやらオイルが燃焼室に混じり込み、スタート時にパワーダウンしてしまったようです。バーレーンでもヤルノに同じような症状がでていましたので、その点の対策は施してきました。ですので今度は別の問題が発生したのではないかと思っています。いずれにしても、スタートは重要なので、今後はこの点をきちんと見直していきたいと思っています。
いくつかの不運が重なったとはいえ、今回は自力で優勝できるだけのスピードがクルマになかったことは確かです。次のモナコまでにアップデートして、再び表彰台に戻りたいと思っていますので、今後もパナソニック・トヨタ・レーシングへのご声援、よろしくお願いします。


バルセロナでの新居章年。新しい空力を持ち込み、フリー走行で試すも速さにつながらず、開幕からここまで続いてきたチーム連続ポイント獲得を逃す。次戦モナコでは立て直し、表彰台を狙う。

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2009 チャンピオンシップポイント

ヤルノ・トゥルーリ
32.5pt / 8th
ティモ・グロック
24pt / 10th
小林 可夢偉
3pt / 18th
59.5pt / 5th

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