新居レポート - 2009 第7戦 トルコGP

トルコGP 新居レポート

2009年6月8日

いつもご声援ありがとうございます。6月に入り、F1グランプリもシーズン中盤に突入しました。今年7戦目の舞台はトルコ。昨年は5月に開催されたトルコGPですが、今年は1カ月遅い初夏の陽気の中での開催となりました。それでは、さっそくトルコGPの模様を報告しましょう。

テストを実施し、万全な状態で臨む、中高速サーキットのトルコGP

2戦続いた低速サーキットでの不振原因解明に総力を上げて取り組み、風洞実験や直線走行を十分に行った空力パーツを持ち込んだ。それらのパーツを実際のレースでも採用し、フロントウイングにも改良を施している。

前戦モナコは本当に歯がゆいグランプリとなりました。モナコGP後にTMGでさまざまな面から検証を行った結果、予選であのようなリザルトとなってしまった原因は、必ずしもクルマのパフォーマンス不足ではないということが見えてきました。予選では渋滞もありましたし、普通に戦うことができていれば、第2ピリオドには進出できたという結論に至りました。
また準備していた空力パーツを本番で使用できなかったことも、少なからず影響していたのかもしれません。そこで我々はトルコGPに備えて、レギュレーションで許されている直線走行のみのエアロテストを2日間に渡って行い、投入を予定していた新しい空力パーツをテストしました。テストの結果も上々でしたので、今回のトルコGPでは再び表彰台を目指して、イスタンブールへ乗り込みました。

タイヤ選択に悩んだが手応えを感じた初日

予選で、ハードタイヤで最速ラップを出したヤルノに対し、ティモはソフトでタイムを出した。この結果が、2種類のタイヤに性能差が少ないことをよく表している。通常とは異なっていたため、タイヤ選択に悩まされた。

今回、イスタンブールに持ち込まれたタイヤはソフトとハードの2スペックでした。この組み合わせはマレーシアGP、スペインGPに続いて今シーズン3回目。したがって、週末のタイヤの使い方に関しては、それ程悩まずに済むと考えていたのですが、実際金曜日に走行してみると、予想とは異なる結果となりました。
通常であれば、ソフトはグリップ力が高いけれどもロングランでの安定性に欠け、ハードはロングランで安定したタイムを刻むことができるけれども、一発の速さに欠けるという結果が出ます。しかし、イスタンブールではソフトを装着した際に思うようなグリップ感が得られず、一発の速さに関してもハードのほうが速いラップを刻むことがありました。
タイヤの使い方に関しては悩みましたが、セットアップに関しては順調に作業が進みました。今回は2台そろって、トップ10を目指した戦いができる、そんな手応えを感じて、初日を終了しました。

難しいタイヤ選択は的中、ヤルノはモナコのどん底から挽回のトップ10入り

ソフトタイヤのグリップ力が低かったこと、路面温度が約50℃にも達していたことから判断し、チームはこのタイヤを履いて走る周回数を減らす作戦をとった。2台とも残り約10周を残した時点でソフトタイヤに履き替えることで、競争力を保った。

初日の予想通り、予選で使用するタイヤに関して、いつも以上に難しい選択を強いられた土曜日となりました。通常であれば、予選はグリップ力の高いソフトタイヤをメインに使うようなプログラムを立てて戦うのですが、今回はフリー走行3回目になっても、2種類のタイヤの差がほとんどありませんでした。どちらをメインにするか最後まで悩みました。
午前中のフリー走行を終えた段階では、若干ソフトタイヤのほうが速く、最後にヤルノが2番手、ティモも3番手に入りましたが、路面コンディションは変わりやすいので、予選の第1ピリオドで再び2種類を履き分けて様子を見ることにしました。その結果、ソフトのほうは乗りにくいもののハードより若干速く、ハードは乗りやすいものの、若干ソフトよりも遅いことが分かりました。それはライバル勢のタイムを見ても似たような傾向でした。そこで我々は予選第2ピリオドでは、最初にハードタイヤを装着して、まず確実にタイムを刻んだうえで、2回目のアタックではソフトをふたりのドライバーに装着することにしました。
ライバル勢も2回目のアタックでほとんどがソフトを選択して、タイムを更新していたことから、この選択に間違いはなかったと思います。2回目のアタックのバックストレートエンドで、ティモ(グロック)がブレーキングでミスして最終ピリオドに進めなかったのは残念ですが、ヤルノ(トゥルーリ)が再び予選でトップ10内に入ってくれました。モナコGPからの復活を確信させてくれた予選でした。

不振を完全に払拭する力強い走りで3戦ぶりのダブル入賞

ヤルノは一時3位に上がったものの、タイヤの温まりが十分でなかったこともあり順位を落としてしまったが、ピット戦略も手伝って4位に。ティモもレース中5番手のラップタイムを記録してポイントを獲得し、2台揃って速さを取り戻した。

今回のレースでは、ふたりともいいスタートを切ることができました。スタート直後に3番手にポジションアップしたヤルノでしたが、まだタイヤが十分に温まっていない中でコースオフを喫して、マーク・ウエーバー(レッドブル)にポジションを譲ることになってしまい、表彰台を獲得できませんでした。レース中のファステストラップでもウエーバーとはほとんど差がなかっただけに、最初の1周目をしのぎきっていれば、表彰台を獲得していた可能性はあったと思いますが、2戦連続ノーポイントだったチームとしては、この4位は大きな意味を持ちます。1回目のピットストップで先を越されたニコ・ロズベルグ(ウイリアムズ)を、2回目のピットストップで抜き返したのは、ヤルノの素晴らしい走りだけでなく、的確な戦略を立てたエンジニアと、ピットストップで迅速な作業をしたメカニックの頑張りがありました。
13番手からスタートしたティモは、スタート自体は良かったのですが、1コーナーの混乱で押し出される格好となり、結果的にポジションをひとつロスしてしまいました。それでも、粘り強い走りを続け、最後にポイント圏内に飛び込んできてくれました。レース中のファステストラップを見ても、ヤルノに次ぐ5番手のスピードがあっただけに、予選でのミスがなければ、もっと上位でフィニッシュしていたことでしょう。
今回のダブル入賞はポイントを稼いだだけではなく、新しく投入した空力パッケージのパフォーマンスをサーキット上で確認できたという点でも大きな成果です。まだ優勝したライバル勢とは差はありますが、開発の方向性は見失ってはいません。次はイギリスGPではその差を少しでも縮めたいと思いますので、引き続き、ご声援よろしくお願いします。


イスタンブールパークでの新居章年。今回難しいタイヤ選択に悩むも予選での手応えを感じ、チームの復活を確信した。決勝では力強い走りでダブル入賞し、次戦イギリスGPでさらに上を目指す。

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2009 チャンピオンシップポイント

ヤルノ・トゥルーリ
32.5pt / 8th
ティモ・グロック
24pt / 10th
小林 可夢偉
3pt / 18th
59.5pt / 5th

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