新居レポート - 2009 第8戦 イギリスGP
イギリスGP 新居レポート
2009年6月22日
いつもご声援ありがとうございます。今年はF1がスタートして60年目の節目のシーズンですが、その第1回グランプリが開催されたのが、今回イギリスGPが行われたシルバーストーン。それでは、さっそく伝統の地で開催された第8戦イギリスGPの模様を報告しましょう。
好調ライバル勢にどこまで追いつけるかがカギに
シルバーストーンは優れた空力パッケージが求められ、平均速度も高い高速サーキット。ここまでのところ、トヨタは高速サーキットでよい成績を収めてきたこともあり大幅な改良を加えず、走行データからマシンを調整していった。
前戦トルコGPでは目標としていた表彰台を獲得できず惜しくも4位に終わりましたが、無得点が続いていたヨーロッパラウンドでの悪い流れは断ち切ることができました。今回のシルバーストーンも、イスタンブール同様にハイスピードタイプのサーキットなので、エアロダイナミクス的には前戦から大きな変更はなく、ダウンフォースレベルの微調整を行う程度でした。
とはいえ、今年のクルマは空気抵抗に対して、効率よくダウンフォースが得られるような設計となっているので、シルバーストーンとTF109との相性も悪くないだろうと予測していました。したがって、よほどのことがない限り、再び表彰台を目指す戦いができるだろうと考えていました。ただし、シルバーストーンではレッドブルが毎年いい戦いをしてきていますので、そう簡単にはいかないことも覚悟していました。
また週末の天気は「概ね良好」と予報されていましたが、シルバーストーンは天候が変わりやすいことでも有名ですから、ピット戦略を含めた総合力が問われるレースとなることが多く、いつも以上に緊張感を持ってグランプリに臨みました。
気温が低い中、いかにタイヤ温めその性能を引き出せるか
昨年のイギリスGPは7月の開催であり、路面温度など状況が異なる。そのためタイヤのパフォーマンスはフリー走行時にかなり入念にチェックが行われた。週末の気温が低かったため、2種類のタイヤともに温めには苦労した。
金曜日の午前中は気温・路面温度ともに低かったため、作動温度領域が高く設定されているハードタイヤの温まりに両ドライバーとも悩まされました。特にティモはピットインしてくるラップで「まったくグリップしない」と訴えてコースオフするほどでした。ただし6月のシルバーストーンということで、このような現象はある程度は予想できていたので、それほど驚くことはなく午前中はセットアップよりも走行データを収集することに努めました。
午後になると路面温度が30℃近くまで上昇したので、ハードタイヤも機能するようになり、ロングラン走行でのソフトタイヤとの比較を行いました。ソフトとハードの組み合わせはマレーシア、スペイン、トルコに次いで、今シーズン4回目。天候も違えば、サーキットのレイアウトも異なりますが、2種類のタイヤが持つ性質の傾向はだいたいつかむことができました。このことが金曜日最大の収穫でした。
初日のフリー走行を終えての順位がヤルノ8位、ティモ13位に終わりましたが、これはTF109のパフォーマンスをすべて引き出した結果ではありません。というのも、ハードだけでなくソフトタイヤもやや温まりに苦労していたため、前車に引っかかってペースが少しでも下がると、途端にタイヤの温度も下がってしまい、なかなかラップタイムが安定して伸ばすことができなかったからです。
ですから、初日のフリー走行の順位だけでは、まだ正確な力関係はわからない状態でしたので、予選に向けてトルコGP以上の成績を狙って2日目に臨みました。
クルマは手応え十分、惜しかったQ3最終アタック
ティモは若干アンダーステアに悩まされ、タイヤの温まりも十分とはいえず、グリップ不足を訴えていたが、予選では両ドライバーともにトップ10に入った。このことから、クルマの性能を引き出すことができていることが分かる。
金曜日の走行データを見る限り、クルマのバランスは取れていたので、セットアップはほとんど変更することなく、土曜日のセッションに臨みました。午前中のフリー走行は朝方に降った雨のせいもあって、序盤は路面が滑りやすかったのですが、路面にタイヤのラバーが乗ってきたセッションの後半は予想していたとおりのバランスになりました。午前中のフリー走行を終えた段階でヤルノから「もうセッティングは大丈夫」という手応えを感じさせる報告がありました。
この流れを維持して、予選の第1ピリオドではヤルノが4番手、ティモも9番手、さらに第2ピリオドではヤルノが3番手、ティモは10番手と2人そろってトップ10内に入って、最終ピリオドに進出することに成功しました。ところが、最終ピリオドの最後のアタックになって、ふたりのドライバーともに満足のいくアタックができずに終わりました。ヤルノは11コーナーでこの日強く吹いていた風の影響を受けて失速。ティモは7コーナーでアンダーステアが出て、タイムをロスしてしまいました。あれがなければ、ヤルノはトップ3に食い込んでいたでしょうし、ティモも5番手ぐらいには入ることができていただけに、非常に残念な予選結果となりました。
作戦の幅が狭いシルバーストーン。手痛いスタートでの出遅れ
決勝スタートでポジションを落としてしまったヤルノに対し、1回目のピットストップを巧みに行い、ポジションアップに成功した。しかしコース上でオーバーテイクできるまでには至らず、ややものたりない結果となった。
今回のイギリスGPはスタートがすべてだったと思います。ふたりそろってスタート直後にポジションを落としていますが、理由は異なります。まず8番手からスタートして10番手に後退したティモは、スタート自体は悪くなかったのですが、直後の1コーナーのポジション争いでイン側を回らなければならず、割を食った形となりました。さらに1回目のピットストップ後にジャンカルロ・フィジケラ(フォース・インディア)の後ろに回ってしまい、中盤ペースが上げられずにポイント圏外に脱落しました。
一方、4番手からスタートしたヤルノのスタートは、データを見る限りではクラッチが滑っているという状況です。その原因がどこにあるのかはまだわからないので、ファクトリーに帰ってから調査する予定です。このスタートの失敗でヤルノのポジションは4番手から7番手へと下がってしまうのですが、1回目のピットストップまでに我々は戦略を練り直し、最初のピットストップ後はひとつポジションを回復させることに成功しました。ところがタイヤを履き替えてからのヤルノのペースが思うように上がらず、2回目のピットストップでジェンソン・バトン(ブラウンGP)にポジションを譲ってしまったのは残念でした。
シルバーストーンはタイヤに厳しく、燃料搭載量がラップタイムに与える影響、重量感度も高いため、どのチームも似たような戦略しか採ることができず、いつも以上に予選でのポジションが重要なグランプリとなりました。今後再び表彰台を狙うためには、予選でのパフォーマンスを改善しなければなりません。
次戦ドイツGPは、2年ぶりとなるニュルブルクリンク。チームの本拠地であるTMGからもっとも近く、ホームグランプリともいえますので、ご声援よろしくお願いします。