新居レポート - 2009 第10戦 ハンガリーGP
ハンガリーGP 新居レポート
2009年7月27日
いつもご声援ありがとうございます。2009年のF1グランプリも10戦目を迎え、いよいよ後半戦に突入しました。後半戦最初のグランプリは、「東欧のパリ」と称えられるほど美しい街並みのブダペストで開催されたハンガリーGP。それでは、ブダペスト郊外のハンガロリンクで繰り広げられた真夏のグランプリの模様を報告しましょう。
低速サーキットにあわせて大胆な空力アップデートを実施
前戦のニュルブルクリンクでは、本来の力を出せないまま3日間を終えるという残念な結果に終わりました。ファクトリーに帰ってデータを精査しましたが、あの結果はクルマのポテンシャルを現したものではなく、我々の実力を反映したものでもありません。ドイツでは不安定な天候によって予選で苦しんだことがレース結果に大きな影響を与えましたが、今回のハンガリーGPは週末を通して天気が良いという予報でしたので、しっかりと実力を発揮したいと考えていました。
実力を十分発揮するために、クルマの改良も行いました。ハンガリーGPが開催されるハンガロリンクは低速サーキットでダウンフォースを必要とするため、ウイングはフロントもリアも改良。ユニークな処理を行ったので、テレビ画面でも変更点が見えたはずです。
今回は後半戦の緒戦となるだけでなく、夏休み前の重要な一戦だっただけに、是か非でも表彰台を取りに行く覚悟でハンガリーに入りました。
新リアウイングとスーパーソフトの相性を確認。予選への期待が高まる
これまでは、軟らかさに2段階の差がある2種類のタイヤが供給されていたが、今回はスーパーソフトとソフトという連続するスペックだった。タイヤに厳しいサーキットだけに、ティモがもたらした走行データが大いに役立った。
昨年このハンガロリンクで2位表彰台を獲得したティモは、金曜日のフリー走行で、とてもいいロングランを行うことができました。特に軟らかいほうのスーパーソフトタイヤがロングラン走行で予想以上に安定したタイムを刻んでいたことは、レースに向けて大きな収穫でした。今回投入したふたつのウイングレットが装着された新しいリアウイングもこの安定さに影響を与えていたと思います。ティモも「リアが今まで以上に安定している」と、上々の反応でした。
逆にヤルノのクルマに午前と午後の両セッションでトラブルが出たことは、反省しなければなりません。ふたつのトラブルともセンサー系の不具合で、クルマ本体には問題のないつまらないトラブルだったのですが、今年のF1はタイム差が接近した戦いが繰り広げられているだけに、このような小さなトラブルでも順位に大きく影響する可能性があるだけに気をつける必要があります。とはいえ、クルマの調子は悪くなかったので、土曜日の予選は表彰台を狙う位置につけたいと思って臨みました。
車両セットアップは進んでいたものの、渋滞に阻まれた予選
予選では2台ともにスーパーソフトタイヤでアタック。しかし午前中に発生した技術的なトラブルとクリアなラップを取るタイミングを逸してしまったことなどが影響しQ3進出はならず、納得のいかない結果に終わった。
土曜日の予選結果は予想していなかったので、がっかりしたというのが正直なところです。そして、パナソニック・トヨタ・レーシングを応援してくださっている方々に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
まず、ヤルノですが、第2ピリオドの最初のアタックで、渋滞に引っかかったために1回目のアタックに入らずにピットイン。2回目のアタックに賭けました。最後のアタックとなる2回目は、渋滞を考慮して3周連続でアタックできるだけの燃料を搭載してコースインさせました。まず最初に1分21秒082をマークしたのですが、その後、タイムが更新できませんでした。燃料が軽くなった分に応じてタイムを更新できていれば、簡単に1分20秒台に入っていたでしょうから、最終ピリオドに進出できていたと思っています。
次にティモですが、第2ピリオドでは肝心の2周目のアタックで渋滞に引っかかってしまいました。本人は「あれがなければ、あとコンマ5秒は速かった」と言っているので、こちらも最終ピリオドには進出できていたでしょう。とはいえ、どのドライバーも路面コンディションの変化と格闘し、渋滞に遭遇するリスクを考えながらアタックしていたわけで、言い訳はできません。セットアップが良かっただけに、本当に残念な予選でした。
フリー走行のデータを活用、ロングスティント作戦が成功しダブル入賞
スーパーソフトを履いてのスタートが功を奏し、両ドライバーともにひとつずつポジションアップに成功した。長めに第1スティントを取ったこと、そしてミスの無い、素早いピット作業もあり、6度目のダブル入賞を果たした。
土曜日の予選結果を考えれば、日曜日のレース内容は非常に素晴らしい結果だったと思います。ただし、現在のF1は予選もレースの一部。しかも、ガードレールがないモナコと例えられるハンガロリンクは、コース上で抜くチャンスがほとんどないため、普段『レース結果の3分の1が予選』と言っている以上に、予選は重要でした。したがって、予選でしっかりと結果を出すことができなかったことは、反省しなければなりません。
逆に言えば、予選でまともな結果を出していれば、今日のレース内容からいって、もっと上位を狙える力があっただけに、残念でなりません。日曜日のレースではヤルノが28周目まで、ティモも32周目まで1回目のピットストップを引っ張りましたが、レースペースがとても良く、順位を上げることに成功しました。スタート時にふたりにスーパーソフトタイヤを装着させようと判断できたのは、金曜日にティモがしっかりとロングランを行ってデータを収集してくれたおかげです。
1回目のピットストップが32周目となったティモには、1ストップ作戦に切り替えるという選択もありました。しかし、その時点で硬いほうのソフトタイヤを装着して走行していた他チームのドライバーのペースを見ると、レース中盤でこのソフトタイヤを投入するのは早すぎると判断して、2ストップのままでレースを続行しました。その判断自体は間違っていなかったと思います。
第6戦トルコGP以来、3戦ぶりのダブル入賞となった今回のハンガリーGP。もちろん、この結果に100%満足はしていませんが、後半戦へ向けて浮上するきっかけにはなったと思います。次のグランプリは4週間後のヨーロッパGP。さらに上位を目指した戦いを披露したいと思っていますので、ご声援よろしくお願いします。