パドック通信 - 2009 第17戦 アブダビGP
アブダビGP パドック通信
2009年11月2日
新サーキットの高水準の施設
F1は、新設サーキットを訪れることや、更に1ランク上の施設を経験することに既に慣れているため、パナソニック・トヨタ・レーシングがアブダビに到着した際も、期待が高まっていました。
今回のヤス・マリーナ・サーキットは元トヨタチーム所属の3人によって監督されているだけに、チームは落胆することも驚くこともありませんでした。
1年前、リチャード・クレーガンはチームマネージャー、ゲルト・プファイファーはテストチームマネージャー、そしてアンディ・ビーベンはロジスティクスの調整を担当していましたが、新たなるキャリアに踏み出したこの3人全員が、ヤス・マリーナを一流のF1コースに変えるべく、大きな役割を果たしてくれたのです。
当然ながら、パドックでは元同僚たちとチームメンバーの面々が嬉しい再会を果たし、お互いのユニフォームと日焼け具合を比べ合っていました。
このコースの施設には数多くの賞賛の言葉が寄せられました。今回、チームは広いオフィスビルの一角に陣取り、しかもこれにはサーキットを一望でき、特に象徴的なヤス・ホテルも目にできるルーフテラスも設けられていました。
贅沢な環境で仕事ができたのは、このオフィスで働くスタッフだけではありません。ガレージの快適レベルも新たな水準に達したのです。
ガレージでは、気温が不快なレベルに上昇すると、常に巨大なエアコン設備が冷えた空気を送り込んでくれました。こうした革新的な設備は、F1カレンダーに含まれている暑さで汗まみれになる数多くのガレージでも、同じように歓迎されるはずです。
グロックの復活
アブダビでは、F1パドックに、怪我のためブラジルGPを欠場したティモ・グロックが戻ってきました。
残念なことに彼は日本GPの予選中に被った背中と足の負傷のため、今回もドライブすることはできませんでした。彼自身が全てのF1セッションに参加しているときと全く同じ、というわけにはいきませんでしたが、少なくとも生で観戦する機会を手にすることができました。
ティモはブラブラしたり、くつろいでいたわけではなく、自分の回復具合に関する最新情報をチームのファンに伝えるため、一連のメディアのインタビューに忙しく答えていました。
ティモはドイツのテレビの長いインタビューに答えましたが、この番組ではおまけとしてちょっとしたオフロードのドライビング場面も挿入していました。また、ティモは、日本、イギリス、イタリア、オランダ、ポーランド、スウェーデンなど、様々な国々のテレビ視聴者向けに、自分が考えていることを話していました。その他、数多くのプリント媒体のインタビューに答えたことは言うまでもありません。
彼はこう話していました。「ここアブダビには、巨大な施設を持つ新コースがあり、日曜日には素晴らしいショーを見せてくれるだろうけど、(レースに参加できないため)とにかくテレビで見るしかない。これはかなりキツい。それにこれが今シーズンの最終戦だけに、本当にがっかりだ」
また、ティモは彼の代役として走る小林可夢偉とヤルノ・トゥルーリにレース中にガレージ内から声援を送るなど、彼らを支援していました。
速さが全て
パナソニック・トヨタ・レーシングは、ピットレーン全体の中でも非常にピットクルーの作業が速いチームの一つとして知られていますが、今シーズンの彼らは、更なる迅速なパフォーマンスを披露してくれました。
アブダビGPはシーズンの最終戦でしたが、これは同時に、ピットクルーたちがその技を誇示する最後の機会でもありました。
彼らは今回もスムーズに作業を完了させ、速さと安定感と精度に関し、自分たちこそF1において最高のピットクルーとされる2チームのうちの1つである、と自信を持っている理由を実証してみせました。
当然ながら、この事実は偶然の結果ではありません。これは、研究とハードワークと頻繁な練習の賜物なのです。しかも、そうした作業は、グランプリの週末中だけではなく、シーズン中と冬の間にもファクトリーで続けられているのです。
F1では1秒たりとも無駄にはできません。それため、チームはピットストップのあらゆる側面を改善する作業にトヨタウェイを適用しています。過去数年にわたり、これが大きな実りとなり、そしてピットクルーの迅速な作業のお陰で、チームのドライバーはいつも順位を稼ぐことができているのです。
来シーズンは今までとはピットストップの内容が変わります。というのも、レース中の給油が禁止されるからです。このため、タイヤ交換に要する時間が今まで以上に重要になります。
現在、ほとんどのピットストップ作業時間は給油によって大きく影響を受けます。クルマに注入される燃料量が、単位時間当たり一定に規制されているためです。このため、給油ホースを給油口に正確に差し込み、引き抜くことが特に重要になっていました。
来年は再給油がないため、ピットクルーたちの戦いは、直接時間との戦いになります。その中で彼らは、4本のタイヤをできる限り短時間のうちに正確に交換しなければなりません。
冬の間、パナソニック・トヨタ・レーシングが再びそうした作業の練習に精力的に取り組むのは間違いありません。