トヨタ自動車、2003年のモータースポーツ活動および支援計画を発表
トヨタ自動車(株)(以下、トヨタ)は、「フォーミュラ・ワン世界選手権(F1)」、「IRLインディ・カー・シリーズ(インディ)」、「全日本GT選手権(JGTC)」をモータースポーツのトップカテゴリー参戦の3本柱とし、「頂点を目指す挑戦」を2003年の共通テーマに掲げ活動する。また、将来に向けたトップ・ドライバー育成、モータースポーツの基盤を支える活動についても継続して行う。
参戦2年目となるF1については、今シーズンを「挑戦の年」としてとらえ、新型エンジン「RVX-03」および新型7速ギアボックスを搭載し、空力面を大幅に進化させた新型F1カー「トヨタTF103」と、新ドライバーのオリビエ・パニスとクリスチアーノ・ダ・マッタの布陣で臨む。初挑戦となるIRLインディ・カー・シリーズでは、6チーム10台へ新開発のV8 3.5リッター自然吸気エンジン「トヨタ・インディRV8I」を供給、「インディ・ジャパン(もてぎ)」および伝統の「インディ500」での勝利を目指す。国内では、全日本GT選手権シリーズへ参戦するスープラに、セルシオなどに搭載のV8 4.3リッターエンジン(3UZ-FE)をベースとする新開発のV8 5.2リッターエンジンを投入、ドライバーズ・タイトルおよびチーム・タイトルを狙う。
また、トップドライバーを継続的かつ長期的に育てることを目的とした「トヨタ・ドライバー・育成プログラム」については、日本国内および欧州での活動を継続し、才能ある人材の発掘と育成を進める。
さらに、モータースポーツの基盤を支える活動については、日本国内でのワンメイクレース 「ESSOフォーミュラ・トヨタ・シリーズ"や"Netz Cup(ヴィッツ・シリーズ、アルテッツァ・シリーズ)」の開催、米国での「CART・トヨタ・アトランティック・チャンピオンシップ」や欧州での「ヤリス・カップ」への支援などを、積極的かつ継続的に行うことにより、モータースポーツの発展に寄与していく。
なお、トヨタの様々なモータースポーツ活動は、東富士研究所のモータースポーツ部を中心に、日本ではトヨタテクノクラフト(株)TRD(以下、TRD)、米国ではTRD,U.S.A.Inc.(以下、TRD-USA)、欧州ではToyota Motorsport GmbH(以下、TMG)を、各地域での活動拠点として位置付けている。
【活動および支援計画概要】
1.フォーミュラ・ワン世界選手権
- 「パナソニック・トヨタ・レーシング」として、フルコンストラクター(単独チーム)での参戦を継続し、2年目となる2003年シーズンを、「挑戦の年」ととらえ活動を推進
- 昨年7月より本格的な稼動を始めた風洞設備を使用し、空力面を大幅に進化させた新型F1カー
- 「トヨタTF103」を開幕戦より投入。軽量化と低重心化、およびパワーアップによる性能向上を信頼性と両立させた新型エンジン"RVX-03"に加え、新型7速ギアボックスを搭載
- ドライバーには、オリビエ・パニス(Olivier Panis フランス)およびクリスチアーノ・ダ・マッタ(Cristiano da Matta ブラジル)を新たに起用。また、リザーブ・ドライバーとして、リカルド・ゾンタ(Ricardo Zonta ブラジル)を加え、レース・テスト・開発に万全の体制で臨む
- プロジェクトの拡大に併せ、TMGの経営とチーム運営の分離を図るとともに、技術部門の組織を見直し、レース&テスト・エンジニアリング部門を新設するなど、より一層の体制強化を実施
2.IRLインディ・カー・シリーズ(インディ)
- IRLインディ・カーシリーズ(Indy Car Series)に参戦する5チーム10台を、米国トヨタ自動車販売(株)(以下、TMS)およびTRD-USAを通じ、エンジン開発・供給にて支援
- 昨年7月より本格的な稼動を始めた風洞設備を使用し、空力面を大幅に進化させた新型F1カー
- TRD-USAを中心に新開発した、V8 3.5リッター自然吸気エンジン「トヨタ・インディRV8I」を各チームに供給
- エンジン供給チームとドライバーは下記の通り
チーム名 | ドライバー |
---|---|
マールボロ・チーム・ペンスキー (Marlboro Team Penske) |
エリオ・カストロネベス (Helio Castroneves ブラジル) |
ジル・ド・フェラン (Gil de Ferran ブラジル) | |
ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング (Target Chip Ganassi Racing) |
スコット・ディクソン (Scott Dixon ニュージーランド) |
トーマス・シェクター (Thomas Sheckter 南アフリカ) | |
ケリー・レーシング (Kelly Racing) |
アル・アンサー Jr. (Al Unser Jr. アメリカ) |
スコット・シャープ (Scott Sharp アメリカ) | |
モー・ナン・レーシング (Mo Nunn Racing) |
高木虎之介 (Toranosuke Takagi 日本) |
フェリペ・ジャフォーネ (Felippe Giaffone ブラジル) | |
AJフォイト・エンタープライズ (A.J. Foyt Enterprises) |
A.J.フォイト4世 (A.J.Foyt IV アメリカ) |
服部茂章 (Shigeaki Hattori 日本) |
3.全日本GT選手権シリーズ(JGTC)
- TRDを通じ、「全日本GT選手権シリーズ (All Japan Grand Touring Car Championship Series:JGTC)」に参戦するチームを支援
- 参戦車両は、新開発のV8 5.2リッターエンジン(3UZ-FE)を搭載するスープラ(GT500クラス)および2.0リッターターボエンジン(3S-GTE)を搭載するMR-Sとセリカ(GT300クラス)
- 新型V8 5.2リッターエンジンは、セルシオなどに搭載するV8 4.3リッターエンジン(3UZ-FE)をベースに、高性能かつ軽量・コンパクト・低重心を狙いに開発
- 支援チームおよびドライバーラインナップ(暫定)は下記の通り
チーム名 | ドライバー | ||||
---|---|---|---|---|---|
GT500 | ESSO・トヨタ・チーム・ルマン (ESSO TOYOTA Team LeMans) |
脇阪寿一 (Juichi Wakisaka) | |||
飯田章 (Akira Iida) | |||||
トヨタ・チーム・トムス (TOYOTA TEAM TOM'S) |
土屋武士(Takeshi Tsuchiya) | ||||
黒澤琢弥 (Takuya Kurosawa) | |||||
T.B.N. | |||||
T.B.N. | |||||
トヨタ・チーム・セルモ (TOYOTA TEAM Cerumo) |
竹内浩典 (Hironori Takeuchi) | ||||
立川祐路 (Yuji Tachikawa) | |||||
トヨタ・チーム・サード (TOYOTA TEAM SaRD) |
ドミニク・シュワガー (Dominik Schwager) | ||||
織戸学 (Manabu Orido) | |||||
アドバン・レーシング・チーム (ADVAN Racing Team) |
荒聖治 (Seiji Ara) | ||||
ジェレミー・デュフォア (Jeremie Dufour) | |||||
クラフト (KRAFT) |
服部尚貴 (Naoki Hattori) | ||||
脇阪薫一 (Shigekazu Wakisaka) | |||||
GT300 | ※チーム、ドライバー未定 | ||||
(T.B.N.:後日決定) |
4.その他の活動支援
<日本国内>
- TRDを通じ、下記のカテゴリーへの参戦を支援。主に参戦マシン設計・開発・製作を担当するほか、トヨタ車を使用する各カテゴリーのチームへの技術的支援も実施
(1)全日本F3選手権シリーズ
- 「全日本F3選手権」に参戦するチームおよびドライバーを支援
- 支援チームおよびドライバーラインナップ(暫定)は下記の通り
チーム名 | ドライバー |
---|---|
トムス(TOM'S) | ジェームス・コートニー (James Courtney オーストラリア) |
トムス(TOM'S) | 片岡 龍也(Tatsuya Kataoka 日本) |
トムス(TOM'S) | 小早川 済瑠(Wataru Kobayakawa日本) |
NOW MOTORSPORTS | 吉本 大樹 (Hiroki Yoshimoto 日本) |
NOW MOTORSPORTS | 番場 琢 (Taku Banba 日本) |
インギング(INGING) | 横溝 直輝 (Naoki Yokomizo 日本) |
インギング(INGING) | ロニー・クインタレッリ (Ronnie Quintarelli イタリア) |
(2)ESSOフォーミュラ・トヨタ・シリーズ
- ワンメイク・フォーミュラ・レース 「ESSOフォーミュラ・トヨタ・シリーズ(全10戦)」の開催(1990年以来14シーズン目)
- 参戦用車両(FT30)は、カーボンコンポジット製シャシー、ラジアルタイヤとL.S.Dの採用により、上級カテゴリーへのステップアップを考慮
(3)Netz Cup 「アルテッツァ・シリーズ」および「ヴィッツ・シリーズ」
- 「観る」から「参加する」をコンセプトに2000年にスタート、これまで延べ約4300名(アルテッツァ・シリーズ約900名、ヴィッツ・シリーズ約3400名)の参加者を記録
- 主要サーキットを網羅する全国シリーズとし、全7戦を開催
- 5つの地方シリーズ(東北、関東、関西、西日本、北海道) 全27戦を開催
- 各地方シリーズの上位者が集うチャンピオン戦を開催
(4)その他各種グラスルーツ活動への支援
- 各種活動(スーパー耐久シリーズ、全日本ラリー選手権、全日本ダートトライアル選手権など)における参戦チームへの支援
- B級ライセンスで初心者も参加が可能なイベントとして、ヴィッツによるワンメイク・ラリー TRD Vitz Challenge(全6戦)の開催
- トヨタモータースポーツクラブ(TMSC)の活動支援等
<米国>
- TMSおよびTRD-USAを中心に、IRLへの参戦に加え、主に下記の活動を支援
(1)NASCAR(National Association for Stock Car Auto Racing)
- NASCARグッディーズ・ダッシュ・シリーズ(NASCAR Goody's Dash Series)へV6 4.1リッターエンジン搭載の「セリカ」にて参戦。ドライバーは、ロバート・フォフマン(Robert Huffman)ほか
- NASCARクラフツマン・トラック・シリーズへの2004年からの参戦に向けた、NASCAR用V8 5.8リッターエンジンおよび参戦車両の「トヨタ・タンドラ・NASCARクラフツマン・トラック」の開発
(2)CART・トヨタ・アトランティック・チャンピオンシップ
- 今年で15回目となるタイトル・スポンサーおよびワンメイク用1.6リッターエンジン(4A-GE)の供給にて支援。2003年シーズンは、全12戦、約30台をサポート
(3)CORR(Championship Off Road Racing)
- トヨタ「タンドラ」にて参戦するジョニー・グレーブス(Johnny Greves)、およびトヨタ「タコマ」で参戦するジェフ・キンケイド(Jeff Kincaid)を支援
(4)グランド・アメリカ・ロード・レーシング(GRAND AM)
- 「ロレックス・スポーツ・カー・シリーズ」に参戦するセグワ・レーシング(Cegwa Racing)へのV8 4.3リッターエンジン供給による支援
(5)NHRA(National Hot Rod Association)ドラッグレース
- 「ファニーカー(Funny Car)」クラスに「セリカ」で参戦するアラン・ジョンソン・レーシング(Alan Johnson Racing)とドライバーのブルース・サーバー(Bruce Sarver)への支援等
- CARTチャンプ・カー・ワールド・シリーズ第3戦ロングビーチ・グランプリへのスポンサード(ロングビーチ・グランプリへのスポンサードは、1975年以来29回目)
- IRLインディ・カー・シリーズ開幕戦マイアミ・ホームステッド、および第15戦フォンタナへのスポンサード
<欧州>
- ヤリス(日本名ヴィッツ)1.3リッターをベースとするワンメイクレースを開催、2003年は欧州数カ国で各6~8戦を開催予定
【トヨタ・ドライバー育成プログラム】
1.基本的な考え方
- 世界および日本のトップカテゴリーにおいて活躍できるレーシングドライバーの育成を目的に、才能ある人材を発掘するとともに、継続的にステップアップできるプログラムを用意
2.プログラムの内容について
<日本における育成プログラム>(1)トヨタ/ヤマハ ステップアップ・システム
- ヤマハ発動機(株)が展開するレーシングKARTプロジェクトを支援するとともに、優秀ドライバーをESSOフォーミュラ・トヨタ・レーシングスクール(FTRS)に招聘
(2)ESSO・フォーミュラトヨタ・スカラシップ
- レーシングKART、入門フォーミュラシリーズの成績優秀者などを対象(18歳前後)とする「ESSOフォーミュラ・トヨタ・レーシング・スクール(FTRS)」より選抜した3名のドライバー小林可夢偉(Kamui Kobayashi 16歳)、中嶋一貴(Kazuki Nakajima 18歳)、大嶋和也(Kazuya Ohshima 15歳)のESSOフォーミュラ・トヨタ・シリーズへの参戦を支援
(3)F3スカラシップ
- 2002年「ESSOフォーミュラ・トヨタ・シリーズ」のシリーズ上位入賞者を対象としたオーディションにより、シリーズ・チャンピオンの小早川済瑠(Wataru Kobayakawa21歳)の「全日本F3選手権」へのトムスからの参戦を「ESSO・トヨタF3スカラシップ」として支援
- 片岡龍也(Tatsuya Kataoka)、小早川済瑠(Wataru Kobayakawa)、吉本大樹(Hiroki Yoshimoto)、番場琢(Taku Banba)、横溝直輝(Naoki Yokomizo)の5名のドライバーの「全日本F3選手権」への参戦を「トヨタF3スカラシップ」として支援
(4)トヨタレーシングスクールの開催
- 関谷正徳を校長とした「ESSOフォーミュラ・トヨタ・レーシング・スクール(FTRS)」の実施
- 各スカラシップ選定者を対象としたトレーニング・プログラムの実施(レーシングカーの 基礎知識、ドライビング理論、メンタル・フィジカル両面でのトレーニング等の幅広いメニュー)
- フォーミュラカーおよびツーリングカーのドライバーを対象とした、新たなレーシング・スクールの設立に向けた準備 (富士スピードウェイを拠点に、2005年スタート予定)
(5)世界トップカテゴリーへ参戦するドライバーへの支援
- 高木虎之介の「IRLインディ・カー・シリーズ」への参戦を支援
- 優秀なドライバーのトップ・カテゴリーへの参戦支援については、継続的に検討
- TMGによる「ヤング・ドライバーズ・プログラム」として、将来のF1ドライバー育成を目標に活動
- レーシングカーやドライビングに関する理論の習得、メンタル・フィジカル両面でのトレーニングや、PRおよび語学等のトレーニングを実施
- 2003年は、下記の5名のドライバーが対象
ドライバー | 参戦カテゴリー | チーム |
---|---|---|
ライアン・ブリスコ (Ryan Briscoe オーストラリア 21歳) | ヨーロピアンF3(European F3)およびマールボロ・マスターズF3(Marlboro Masters F3) | プレマ・パワーチーム(Prema Powerteam) |
平中克幸(Katsuyuki Hiranaka 日本 21歳) | ||
フランク・ペレラ(Franck Perera フランス 18歳) | イタリアン・フォーミュラ・ルノー(Italian Formula Renault)およびユーロカップ(Formula Renault Eurocup) | |
平手晃平(Kouhei Hirate 日本 16歳) | ||
ロベルト・ストレイト(Roberto Streit ブラジル 19歳) |
<ご参考>
【富士スピードウェイ・全面リニューアル計画について】
- 2003年は、9月15日(月・祝)まで平常営業し、全日本選手権レースを含む主要レースイベントを開催。9月16日以降、約1年半の間、場内の一部を除き営業を休止
- 現在、平常営業と平行して、順次リニューアル工事に着手しており、進捗状況は当初計画通り。全面リニューアル・オープンは、2005年4月を予定