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2007年6月27日午後


  フランスGP直前の木曜日、マニクールサーキットのパドックにTDPの日本人ドライバー3人が勢ぞろいした。今シーズン、GP2選手権初参戦の中嶋一貴、平手晃平。そしてF3ユーロシリーズ2年目の小林可夢偉。今回はF1のサポートレースとして、この両カテゴリーのレースが併催される今季唯一の機会となる。日本からは、彼らを育てたフォーミュラトヨタ・レーシングスクール(FTRS)の関谷正徳校長も駆けつけた。


レース前の記者会見で3人はまず、開幕以来のこれまでの戦いを振り返り、今後の抱負を語ってくれた。
  可夢偉は3戦6レースを終えて、第2戦イギリス・ブランズハッチでの3位表彰台が最高位。ポイントランキングも暫定7番手と、やや不満の残る結果だ。これについては本人も、「苦戦状態ですね」と素直に認める。
  「調子は上がってるし、自信はあります。結果がなかなか、結びついてくれないんですが。ただチームからも100%の信頼を得ているし、やることはやっている。これからは1戦1戦大事にして、まずは1勝ですね」。
  一方のGP2は、これまでに3戦5レースを終了した。この時点で中嶋は、最速タイムや入賞などで3ポイントを獲得し、選手権14番手。平手はいまだノーポイントで22番手と、苦しい立ち上がりとなっている。
  オフのテストでは持ち前の速さを見せていた平手は、それが結果に結びついていないことに、歯がゆさを感じているようだ。
  「3大会を終えて、いまだに結果が出てない。GP2が初めてということで、これまではいろいろ戸惑うこと、かみ合わないことも多かった。今まで経験のなかった大きくて重いクルマを走らせているわけですけど、まだきっちりコントロールできてない部分もある。ただ開幕以来、ずいぶん長かったような感じですけど、まだ3つしか終えてないわけですしね。チームとの関係もすごくいいし、クルマ作りもいい感じで進んでいる。残り8大会、全力で頑張りたいと思います」。
  もう一人のGP2ドライバー中嶋は、レースの合間にウィリアムズF1の一員としてGPにも帯同。テストもこなすという、多忙な日々を送っている。
  「かなり忙しい毎日ですけど、GP2の方はチームにもだいぶ慣れました。チーム自体調子もいいし、僕自身も悪くなかった。ただ開幕戦以降、色々つまずいた部分がありましたね。予選はよかったのにスタートをミスしたりとか、ペナルティを受けてしまったりとか。そのために結果は残ってない。毎戦しっかりポイントを取って行きたいという目標を立てていたのに、ここまでそれができてない。今後は自分の本来いるべき位置でレースをして、きっちりポイントを重ねて行きたいですね。今年はおかげさまで色々得がたい経験ができているし、それを今後、後半戦に向けて活かして行きたいと思います」。


会場からは3人に、さまざまな質問が飛んだ。
◆TDPの3人が今回初めて、同じ週末にレースを戦うわけですが、お互いにいっそうのライバル心を感じたりとかは?
■可夢偉「3人いるからどうこうと言うんじゃなく、レースをやる限りは勝ちたい。いつもと変わりなく、優勝を目指して頑張りたいですね」。
■平手「他の二人のことを考えるより、自分のことで精いっぱいです」。
■中嶋「僕も二人がいるからということより、このレースを重要と思ってます。開幕以来、行けそうで行けないところがありましたからね。今回はぜひとも、結果を出したいと思ってます。まずは予選からレーススタート、フィニッシュまで、きれいに決めたいですね」。
◆3人とも去年から今年にかけて、F1走行を経験しています。それが今の走りとかレースへのアプローチに、何か変化を及ぼしましたか。
■可夢偉「自分が今、何をしないといけないのか、F1に乗ったことでいっそう明確になりましたね。F1チームはスタッフも個性のある人ばっかりですし(笑)、いろいろ吸収できました」。
■平手「F1のいろんな部分の凄さを、実感しました。それがいい意味で、自分へのプレッシャーになってると思います。そのプレッシャーに打ち勝たないと、F1には行けない。そして自分の気持ちの持ちようで、パフォーマンスが左右されることもよくわかりました。(昨年のGP2王者)ルイス・ハミルトンのF1での活躍を見てもわかるように、GP2でしっかりやれば、F1でもやれる。それが僕の、GP2を戦う上でのモチベーションにもなってますね」。
■中嶋「F1に乗ったことで、視野が広がったと思います。その結果、余裕を持って物事に臨めるようにもなりましたしね。ただ運転がうまくなったかと言うと、あまりそういう実感はないですね(笑)」。
◆F1に行きたいと言う気持ちは、いっそう強くなりましたか?
■中嶋「定期的に走らせてもらって、さらに間近でレースを観ると、やっぱり走りたいと思いますね。ただ今まで以上にF1でやりたいという気持ちが強くなったというより、より現実的な目標になったということでしょうか」。
平手「一度テストをしたあと、まだF1では通用しないなとはっきり実感したんですね。まだ自分のやるべきことがあって、それをしっかりこなしてからでないと、F1には進めないと」。
■可夢偉「乗りたいという気持ちは、変わってません。でもテストしてからは、F1マシンを乗りこなしたいという気持ちが強くなりましたね。単なる体験ではなく、このクルマのことをもっと知りたいです」。

◆GP2のお二人に質問です。ハミルトンのF1での活躍を、どう思いますか。
■中嶋「あのレベルは、凄いと思います。半分は期待してましたが、デビューしてすぐはむずかしいんじゃないかと思ってた。それだけに、想像以上の活躍ですね。僕自身があそこまで行けるか、やってみないとわからない。でも彼を目標として、やって行きたいですね」。
■平手「2年前、ハミルトンとF3をいっしょに戦ってましたけど、あの時は全然歯が立たなかった。それだけに、今の活躍はうれしいですね。自分も頑張れば、あそこまで行けるかと思うと同時に、想像を超える凄さも感じる。とにかくハミルトンが、今の僕の目標です」。
◆それでは今後結果を出すために、それぞれが直面している課題は何でしょうか。
■平手「もっと自分に厳しく、速さを追求して行きたいですね。今まで以上に、どん欲にならないといけないと思ってます」。
■可夢偉「ポテンシャルはあると思ってます。勝てると思ってるのに、うまく回ってない。今は努力し続けて、勝てるのを待つしかないですね」。
■中嶋「僕も今は、うまく行ってない部分がある。それは運とか一瞬の判断力の足りなさとか、そういうところが原因なんだと思います。今はとにかく、ひとつのレースウィークを一貫した流れで、進めていきたいですね」。


そんな3人の現状を、関谷校長はこんなふうに見ている。
  「今出ているリザルトが現実なわけで、その意味では彼らが期待に応えてくれてないことは残念ですね。ただ3人が見せる速さからは、大きな可能性も感じていますよ。たとえばドイツでの可夢偉は、二つのレースとも勝っておかしくなかった。もちろんレーシングドライバーとしてはそういう不運を乗り越えて、強運を引き付ける力も持っていないと、大成は出来ないわけですけどね」。
  「GP2の二人は、さらに苦戦を強いられている。それはチーム力とか、彼ら以上の経験者がいることとか、いろんな要因がある。でもハミルトンは、1年目でチャンピオンになってるしね。今の状況を乗り越えないと話にならないし、彼らなら乗り越えてくれると思ってますよ」。
  「TDPは日本人の世界チャンピオンを誕生させることを目的に、設立されたんですね。それが簡単なことじゃないのはわかってますが、今はひとつひとつ着実に、階段を登っていると思ってます。昔は日本人はダメなんじゃないかと、思ってたこともありました。でもこの3人のような才能を見ていると、きっとやってくれるという確信が持てる。僕らが10年かかって習得したことを、彼らは半年でこなしてしまう。メンタル面でも、すごくたくましい。期待してますよ」。


<マニクールのレース結果についてはレース結果ページをご覧ください>



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