2010年9月 2日(木)配信

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MOTOR FESTA 開催!

 8月28日(土)、29日(日)の両日に渡り、JR桜木町駅前(神奈川県横浜市)において、MOTOR FESTA ~親子で楽しむモータースポーツ~が開催された。

 初開催となったこのイベントは、"サーキットが街にやって来た"というコンセプトで、一般の方々に、イベントを通して、クルマ・モータースポーツのおもしろさ・楽しさを伝えることを目的に実施したものである。具体的には、現在のレースにも通じるレーシングカートや、四輪のモータースポーツの原点ともいえる、エンジンなしで坂道を滑走するソープボックスダービーのミニチュア版、木製のモックカー製作などを通して、モータースポーツを体感していただくというものだ。全くレースを知らない方々は、そんなコンテンツが突然目の前に現れた時、どのような反応を示すのだろうか?実際に体験してくれるのだろうか?その反応から、これから先のクルマ・モータースポーツの未来はどうなるのであろうか?など、主催する側としても興味津津であり、リサーチする必要があった。よって、イベントは敢えて事前告知を行わず実施することで準備を進行。総勢13名に及ぶ豪華な参加ドライバーも、ブログやツイッターでの告知を一切しなかった。そんな大胆な戦法で臨んだため、イベントの集客に一抹の不安を覚えながら開催当日を迎えることとなった。

 JR桜木町駅前に、SUPER GT、フォーミュラ・ニッポン、FJ1600のレーシングカー3台を並べた。電車を降り改札を出ると、眼前にレーシングカーが飛び込んでくるという、ビジュアルに訴える準備は整った。そこへ、SUPER GTに参戦しているレクサスチーム、トヨタチーム所属のドライバーが集まり、オープニングセレモニーが始まった。場所は、都会のど真ん中、サーキットではない。しかも、いつも彼らが参戦しているレースを全く知らない人たちを相手にイベントを進行させていくのだ。そんな異例なイベントの初日に挨拶に立った脇阪寿一選手は、今までにない切り口でこう語りかけた。「SUPER GT知っていますか?」と。観客のふいをついたような一言であったが、まさに聞きたいことはそれであり、脇阪選手の元気の良さ、軽快な語り口に人が更に集まり始め、思いがけず朝からテントの中は人でいっぱいに。良い意味で予想を裏切る展開で、熱い二日間がスタートした。

【参加選手】

SUPER GT GT500クラス

脇阪寿一選手、伊藤大輔選手、石浦宏明選手、大嶋和也選手、立川祐路選手、平手晃平選手

 

SUPER GT GT300クラス

織戸学選手、片岡龍也選手、嵯峨宏紀選手、松浦孝亮選手、井口卓人選手、国本雄資選手

 

TDPドライバー

蒲生尚弥選手


レーシングカート体験コーナー

  現在、プロのレーシングドライバーは、レーシングカート経験者が多い。最近では、全日本クラスのチャンピオンなど、輝かしい戦績を残して、4輪のトップカテゴリーに進出して来る。そこで、そのレーシングカートを体験してもらおうということで、カート教室を設置した。未経験のお子さまでも大丈夫なように、基本の動作を体験できるものである。講師は、松浦孝亮選手、嵯峨宏紀選手、蒲生尚弥選手。興味のある子どもたちは、まっしぐらに受付へ向かっていた。「クルマを運転する」という行為は、子どもたちにとって「憧れ」。大人になった気分だ。そんな憧れを少々お手伝いするコーナーでもある。日曜日、大阪から横浜へ観光にいらしていたという萬田ファミリーは、たまたま通りかかり兄弟そろってカート体験。全く初めての経験だったが、とても楽しくまた乗ってみたい、先生の指導がとてもわかりやすかったとうれしい感想を寄せてくれた。

 

  また映画を観に来て通りかかったという横浜市内からお越しの大内悠生くん綜太くん兄弟は、お兄ちゃんがゴーカートは体験したことがあるそうだが、このレーシングカートは二人とも初体験。ハンドルが重くて操作が少し大変だったが、面白かったと、操縦する楽しみを見出したようだ。やや緊張した面持ちで臨んでいたが、やはり機会があれば是非やってみたいという事だった。お母様に、講師はプロのレーシングドライバーということを告げると、とても驚かれていた。あまりに身近に接していたからだろうか? 一緒にこの組で体験した座間市内からお越しの波多野 鈴くんも同様にまた乗りたいとの感想をくれ、最後にドライバーと撮った写真を見せてくれた。


ソープボックスコーナー

 二日間を通して一番人気だったのが、ソープボックスのミニチュア版モックカー製作のブース。ゲーム機で遊ぶお子さまが多い昨今、木のぬくもりとシンプルな構造、ハンドメイドで自分のクルマ製作に励むこのブースは、朝からイベント終了時までずっと人が絶えなかった。オリジナルのカラーリングを施したクルマが出来上がったら、次はみんなでレース! 世界にたった一台しかない自分のクルマでレースをする、というところが魅力。単純に先にゴールしたクルマの勝ち。大人も力が入ってしまうほどである。出来上がるまでの時間、親御さんまで真剣な表情。海外から来た観光客も製作に勤しみ、レースを楽しんでいた。

 

メカニック体験コーナー

 レースシーンでドライバーの縁の下の力持ちと言えばメカニック。その陰の活躍者メカニック気分を味わってもらうメカニック体験ブースも設置した。トヨタ東京自動車大学校の協力の下で実現したこのブースは、発電の仕組み、自動車の組み立てを簡単ではあるが、体験していただくものである。一生懸命自転車をこぎ発電するお子さま、ボルトナットをしめたり、クルマのランプの配線とにらめっこするお子さまなど、それぞれが時間を忘れ夢中になっていた。

 

ドライバートークショー

 レーシングドライバーによるトークショーも開催された。普段とはやや面持ちが違うドライバー達。彼らがいったい誰なのか?まったくわからない観客を前にして行うトークショーであるので、当然であろう。レースとは何か?の入門編のトークを展開。SUPER GTのレースについて、そのレースに使用されるクルマの構造、自分たちの仕事は何なのか?など、改めて原点に戻る内容であった。これまで沢山のレースを戦って万難を排してきた彼らが、基礎的な事を自ら説明するところが、ポイントだったかもしれない。観客は一様に聞き入っていた。


その他のブース

 ドリフトラジコンコーナー、スロットカーコーナー、ペダルカーコーナーは、レーシングドライバーがサポートした。子どもたちは、彼らが時速約300キロの世界で戦っているドライバーだとはわかっていないだろう。そんな彼らも、屈託のない子どもたちの微笑みに囲まれ、童心に返り一緒に楽しむ優しいお兄さんになっていた。二日間彼らも「素」のまま、楽しんでいたに違いない。

 二日間に渡り、「未知」へチャレンジしたこのイベントは、結果的には大勢の子どもたちが訪れ大盛況であった。しかし、このイベントはこの1回に終わるものではなく、この先にあるものを求めての開催なのだ。モータースポーツのすそ野を広げるには、更に認知されることと、地道な努力が必要。内容を吟味し、寄せられたたくさんの声に耳を傾け、良いモノを作っていく必要がある。満足せずに、次に繋がる努力をこれ以降も続けていきたい。