SUPER GTに参戦するトヨタ系ドライバー自身による手作りイベントは、今年で4年目を迎える。 今年から名前を変え「レクサスチーム」としてSUPER GTに参戦しているドライバーが組織するレクサスGTドライバーズアソシエーション(LGDA)の会長として、このイベントの陣頭指揮を執るのは、脇阪寿一。 彼は、現在世界の経済状況の厳しい中に身をおくモータースポーツを盛り上げるべく、かつ、トヨタ自動車だけではなく、メーカーの垣根を越えたイベントを作りたいという「夢」をかねてから持っていた。こういう大変な時こそ、みんなでこの「イベント」作り上げたい、副題の「君たちの未来へ」が示すよう、子どもたちに「夢」を与えることをたくさんのドライバーで成し遂げたい、そんな野望を抱き、これに賛同したドライバー29名、関係者、多くのSUPER GTサポーターがメガウェブに結集することとなったのである。 これは、元会長でもある服部尚貴氏と共に抱いていた「夢」でもあった。それが実現する時が来たのである。
イベント前日には、会場となるトヨタ自動車の関連施設「メガウェブ」に、「ROCKSTAR 童夢 NSX」、「Xanavi Nismo GT-R」、「PETRONAS TOM'S SC430」の3台が並んだ。GTカーを3台並べると言っても、2台は他メーカーのGTカー。関係各所の理解が得られて、この3台並びは、初めて実現できるのである。各スタッフも脇阪も感慨深いと語っていた。
当日参加したドライバーは、LGDA会長脇阪以下 下記の通り。なお、当日参加は叶わなかったものの、賛同したドライバーはさらにいたとのこと。 「本山哲、道上龍、伊藤大輔、石浦宏明、立川祐路、平手晃平、大嶋和也、織戸学、服部尚貴、片岡龍也、井口卓人、国本雄資、飯田章、国本京佑、松田次生、荒聖治、R・クインタレッリ、安田裕信、星野一樹、柳田真孝、小暮卓史、井出有治、細川慎弥、伊沢拓也、金石年弘、塚越広大、L・デュバル、中山友貴」
それぞれ考えの違う3メーカーを束ねるということは至難の業、脇阪自ら、各メーカーに頭を下げてまわり、同意を取り付け開催にこぎつけた。イベント当日を迎え、朝早くから集まったドライバーたちは、この一大イベントを成功に導くという同じ目標に向かって、動き始めたのである。 トークショー、ドリフト三輪車、ラジコン大会、キッズカート講習、動体視力チャレンジ、サイン会、カート大会、ドライバーが出品したグッズのオークションとフルスケジュールで、休憩はたった30分ほど。移動時には、ファンからサイン責めにあうも、そこにはレースウィークと違い、ファンサービスに徹するドライバーたちの姿があった。
3メーカーのドライバーたちを脇阪の味付けでチーム分け。トークショーや各イベントは、脇阪、本山哲選手、道上龍選手のキャプテンズとそれぞれのチームごと(イケメンズ、ベテランズ、フレッシュメンズ、We are帰国子女、Mr.ストイック)に行われたトークショーでは、レースの裏話などイベントのみのオフレコ話で盛りあがり、観客そしてドライバーたちも笑顔を絶やすことはなかった。参考までにチーム分けは下記の通り。帰国子女は、海外のレースに参戦したことのあるドライバーという意味らしい。各ドライバー、この脇阪のチーム分けに納得する者、不服な者様々であった。
【チーム分け】
キャプテンズ |
本山哲 道上龍 脇阪寿一 |
イケメンズ |
柳田真孝 細川慎弥 立川祐路 大嶋和也 国本京佑 |
ベテランズ |
星野一樹 伊沢拓也 飯田章 服部尚貴 織戸学 |
フレッシュメンズ |
安田裕信 塚越広大 中山友貴 平手晃平 井口卓人 国本雄資 |
We are 帰国子女 |
荒 聖治 金石年弘 井出有治 伊藤大輔 片岡龍也 |
Mr.ストイック |
ロニー・クインタレッリ 松田次生 小暮卓史 ロイック・デュバル 石浦宏明 |
前日午後8時から列ができ始める異例の事態、座席や立ち見席の確保もできなかった観客でも楽しめるよう、メガウェブ館内では、終日ファンイベントが行われているプログラム。駆けつけたファンは、お目当てのドライバーに奔走していた。
また、メガウェブの施設 E-COMライドを利用して、ご指名のドライバーと同乗し二人きりになれるチャンスや、GTA坂東会長から「SUPER GT最終戦の観戦チケットとパドックパス多数」プレゼントも。
さらに、ファンの方が各GTカーと記念撮影をしている場に、キャプテンズの3名(本山、道上、脇阪)が突然現れるというサプライズ企画も用意され、歓声で沸いていた。
ファンの姿もこれまでとは当然違い、親子連れで賑わうファンも当然3メーカ-のファン。GTファンであり、家族で贔屓のチームが別れているという状況でも楽しめるというのが、今回の特徴だった。3メーカー別々だと、それぞれ3回移動しなければいけない。一緒にやってもらえると3倍楽しい、この企画を実現した“脇阪LGDA会長”に感謝しているというニッサン、ホンダのファンの声も数多く聞かれた。
ドライバー全員参加で大いに盛り上がったのは、3メーカードライバー対決『激走GTカート大会』。チーム分けは、リーダーシップを取ったキャプテンズ3人の「ドリームチーム」、「レクサスAチーム」、「レクサスBチーム」、「ニッサンチーム」、「ホンダチーム」。競うことに遊びはありえないということで、各陣営カートの調整は本気モード。しかし、最後は最終走者がコースを「自分の脚」で走るという、お遊びモードも取り入れての熱いレースとなった。
レース途中、トップ争いをしていたニッサンチームが車両トラブルによりリタイア。ホンダチームがトップでピットへ。いざ最終走者が自らの足で走る!といった場面で、リタイアしたはずのニッサンチーム松田選手がコースを激走開始。トップのホンダチーム小暮選手がやっとヘルメットを取り終え走ろうと思った途端、ニッサンチームが一致団結の“妨害”。どうにかコースへ出たところを、レクサス2チームが追うというハチャメチャぶり。その結果、後方より追っていったレクサスBチームの伊藤が、普段鍛えているという健脚を披露し逆転、優勝を飾った。そのコース反対側で、勢いあまって転倒していたレクサスAチーム大嶋が、最後ドライバー全員に迎えられレースは終了。カート大会は、次週対決するSUPER GT第6戦の行方を占いながら、幕を閉じた。
最後の催しは、ステージにてオークションの落札者の発表。各ドライバーが惜しげもなく出品した思い出の品々を獲得した方が壇上にのぼり、ドライバーと記念撮影などを楽しんでいた。レーシングスーツが多数出品されるなど、例年よりも豪華な内容。ファンは至極の一品がたくさんあり、目移りして大変だったことだろう。 イベントがすべて終了し、ステージに立ったLGDA脇阪寿一会長と、伊藤大輔副会長。エンディングの言葉は、最後まで感謝の言葉を口にし、またサーキットでのレース観戦を呼びかけ続けた。
今回参加したドライバーを代表して、本山選手と道上選手に話を伺った。
本山選手 「寿一から話を聞いたときは、以前よりなんとなくそんな話があったので、とくに驚くこともなく同意、協力しようと思った。脇阪寿一は、日本のモータースポーツの広報担当だと思っている。しかし、このようなイベントは、寿一ひとりが頑張ることではなく、各メーカー、チーム、レース主催団体が一体となり取り組んで欲しいことであり、ドライバーが声あげ、これから継続して行くことが大事だと思う。今日は1日楽しませてもらった。初めて参加したが、結果的に大成功に終わり、協力してくれた関係各所、脇阪寿一に感謝している」
道上選手 「トヨタ自動車でこのようなイベントをやっていることは知っていた。話があった時は、断る理由など何もなく、協力しようと思った。連絡がうまく行かず、当初寿一に迷惑をかけていたかもしれない。ホンダとしては、ラルフが来られなかっただけで、みんなこぞって参加してくれた。得意とするラジコンカーのイベントも楽しませてもらった。全日本のラジコンのレースにも出たこともあるが、ここで逆に手を抜くのは失礼だと思ったので、本気でやらせてもらった。長い1日が終わったが、天候に恵まれ、大盛況で終わって本当にうれしい。このような合同イベントが日本に根付いていき、みんなでわきあいあいとやっていけたらと思っている」
最後まで走り続けた脇阪は、朝、ドライバーが集まった時の顔をみて、「これは成功だと確信した」と語っていた。みんないい顔をしていると。ファンの方をサーキットとは違う速度で楽しませたいと、最後の最後まで、ファンのことを考え、人を動かし、結果、成功に終わった。言葉で書くととてもシンプルだが、機が熟したのか、何かの突破口になったのか、モータースポーツの世界を動かしたイベントは、みんなの心に何か熱いものを残したに違いない。
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