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スペインGP レースの舞台裏
2008年4月27日(日)

●レースの舞台裏
今回ティモ・グロックは早めにバルセロナ入りし、F1と並ぶもう一つの大きなスポーツイベントを味わいました。カタルーニャ地方の首都で開催されたサッカーのチャンピオンズリーグ準決勝、FCバルセロナ対マンチェスター・ユナイテッドの試合を観戦したのです。

かなりの大一番の一つとなった今回の試合に際し、ティモには(サッカー観戦は好きですが、ドイツ代表チーム以外にはこれといって贔屓のチームはありません)カタルーニャにおけるサッカーの聖地、カンプノウ競技場の特等席があてがわれました。

ドイツのテレビ局のゲストとして観戦したティモでしたが、残念なことに試合そのものはそれほど記憶に残るような展開にはなりませんでした。マンチェスター・ユナイテッドが序盤にペナルティキックを外し、試合は0対0の引き分けに終わったのです。

「正直に言って、それ程エキサイティングな試合じゃなかったね」と認めるティモ。「雰囲気は素晴らしかったが、ファンのみんながとにかく大きな音を出していて、選手には相当なプレッシャーがかかっていたようだ」

サーキットに話を戻しましょう。バルセロナで開催されたGP2の第2レースでは、今年素晴らしい成績を収めている第3ドライバーの小林可夢偉がまたもや優勝を飾りました。

GP2アジアシリーズで印象的な走りを見せていた彼は、本格的なGP2シーズンの緒戦でも好スタートを切り、土曜日の第1レースで8位となりました。これにより優勝した日曜日の第2レースではポールポジションからのスタートとなりました。

現在の彼は、トップの二人(ブルーノ・セナとアルバロ・パレンテ)まで3ポイント差のドライバーズランキング4位につけています。

●ライバルチーム周辺で見つけたニュース
フェルナンド・アロンソは母国の大勢のファンの前で素晴らしい週末を送れそうに見えました。しかしながら、2度に渡ってその素晴らしいチャンスが彼の手からすり抜けていったのです。

2度のワールドチャンピオンに輝くアロンソは、予選で周囲を驚かせるような走りを見せ、ポールポジションを手にしたかに思われたのですが、最後の瞬間にキミ・ライコネンにその座を奪われてしまいました。

レースでは大幅に改善されたルノーの速さを示すかの如く、表彰台を狙える位置を走っていた彼ですが、結局はメカニカルトラブルのためリタイヤを喫してしまいました。

レースは荒れた展開となり、9台が完走できずに終わりましたが、その一方でフェラーリのライコネンは今シーズン2勝目を達成しています。

チームメートを抑えて優勝したライコネンはこれで29ポイントとなり、3位入賞したマクラーレン・メルセデスのルイス・ハミルトンが20ポイントで続いています。

コンストラクターズ選手権ではフェラーリが47ポイントでトップ、BMWザウバーが35ポイントで2位、更に1ポイント差でマクラーレン・メルセデスが続く展開になっています。

レースではBMWザウバーのロバート・クビサが4位、レッドブル・ルノーのマーク・ウェーバーが5位となり、また、ホンダのジェンソン・バトンが6位でチームに今シーズン初ポイントをもたらしています。また中嶋一貴がヤルノの追撃を振り切り7位入賞を果たしました。

様々な出来事が起こった今回のレースでは多くのクルマがリタイヤしましたが、まずはスタート直後の1コーナーでフォースインディアのエイドリアン・スーティルがスクーデリア・トロロッソのセバスチャン・ベッテルと接触し、派手な事故を引き起こしました。

セーフティーカーが入ったのはこの1回だけではありません。クルマにトラブルを抱えたマクラーレン・メルセデスのヘイッキ・コバライネンがタイヤバリアにかなりの勢いで衝突してしまったのです。ですが彼は容態確認のため搬送される途中、観客に向かって「大丈夫」という仕草をしてくれました。これにより誰もが胸を撫で下ろしました。

●レースリポート

2008年F1世界選手権第4戦スペインGPでは、ヤルノ・トゥルーリが8位入賞し、彼自身とパナソニック・トヨタ・レーシングに3戦連続でポイントをもたらしました。一方のティモは11位でした。

ヤルノは8番グリッドから、ティモは14番グリッドからスタートしたのですが、両者とも、スタート直後の1コーナーまでの争いで順位を落としてしまいます。ヤルノは9位に後退し、またティモはエイドリアン・スーティルとセバスチャン・ベッテルの接触の際に回避行動をとったため17位となりました。

1コーナーで起こった混乱のためティモはフロントウィングを破損してしまい、このせいで第1スティントでは十分な速さを発揮することができませんでした。それでもティモは、破片を処理するためのセーフティーカーピリオドが終わると、目の前の各車から離されることなく激しいバトルを続けました。

ヤルノは力強い走りで第1スティントを終え、マクラーレン・メルセデスのヘイッキ・コバライネンの大きなクラッシュでセーフティーカーが導入される前にピットストップを行い、再度オプションタイヤを装着しました。

ピットレーンがオープンになると、ティモがピットインし、彼もまたブリヂストンのオプションタイヤを装着。また、このタイミングで新しいフロントウィングに交換しています。これによりティモは順位を挽回すべく攻めた走りができるようになりました。

35周目を迎えると、ヤルノが6位、ティモが13位となり、しばらく後にそれぞれがプライムタイヤへ交換するため予定通り最後のピットストップを行いました。

着実に順位を上げていたティモですが、その後、デビッド・クルサードとの接触により勢いを削がれてしまいました。再びフロントウィングを破損した彼は、再度のピットストップを余儀なくされました。

「クルサードがピットから出て来て私の前に入ったが、彼のアウトラップのペースは遅かった」と話すティモ。「彼はややスペースを空けたが、その直後にそれを閉じてしまったため、私が彼に追突してしまった」

この際、不運にもコミュニケーションに問題が生じ、ヤルノがピットに入って来てしまいました。これにより順位を6位から8位に落としてしまいます。戦列に復帰したティモは11位でレースを終えました。

「再びポイントを獲得できたが、本来ならもっと多くポイントが獲れたはずだ」と話すヤルノ。「こうしたことが起こることもある。だが今日はそのせいで2ポイントを失ってしまった」

TMG会長兼チーム代表の山科忠はこの問題を次のように説明しています。

「ティモが接触した後、2台のクルマの間でコミュニケーションの混乱が生じ、ヤルノが誤ったメッセージを受け取ってしまった。これについては何が起こったのか分析しなければならないし、今後このようなミスを避けるためにしっかり確認しておかなければならない」

ヤルノが1ポイント獲得したことにより、パナソニック・トヨタ・レーシングの今シーズンの総ポイントは9となりました。コンストラクターズ選手権では5位を維持しています。ヤルノはドライバーズ選手権で7位をキープしています。