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Rd6. Grand Prix of Spain
grand prix
新居章年リポート
2006年5月14日(日)
 

いつも応援ありがとうございます。2週連続開催の2戦目となりました第6戦スペインGPの報告をいたしましょう。

スペインはエンジン、ドライバーに過酷なサーキット
みなさん、前戦ヨーロッパGPで心配されたと思いますが、ラルフ・シューマッハーのリタイア原因となりましたエンジントラブルは、おかげさまでと言いますか、不幸中の幸いでエンジンがバラバラにならなかったので、壊れた部分を把握することができました。その点、今回はきちんと対応ができています。

ストレートの長いカタルニア・サーキットで、2.4リッターエンジンとなった今年のF1カーは、昨年までの3リッターエンジン車と比較してもポールタイムはおよそ1秒落ち程度。コーナリングスピードが上がった分、ドライバーの体への負担も増える。  

一方のヤルノ・トゥルーリは、第1スティントでペースに伸び悩んでいたのですが、タイヤ空気圧の設定が原因だったと判断できました。第1スティントは(空気圧が高めでタイヤが)ちょっと硬めだったのと、セーフティカーが入ったせいでペースが変わり、バランスが崩れたのとでおかしくなったんだろうと。そのあたりがちゃんとコントロールできなかったのが原因です。

ここバルセロナでは何度かテストをしていますが、今年から2.4リッターのV8エンジンになったことで、最高速が落ちています。昨年はストレートエンドで320~330km/hほどあったんですが、今年は少し落ちるでしょう。それでも、直近のテストの感じからすると、速いクルマは昨年のポールポジションと同じ1分14秒前後で周回するという予測をしていました。

 
ヨーロッパGPで出たトゥルーリのクルマのペースが上がらない原因は、タイヤ空気圧の設定だということで判断したものの、今回のレースでもスティントごとにバランスが変化するという状態になり、再びペースアップに苦しんでしまった。

最高速が落ちているのにラップタイムが落ちない。ということは、コーナリングスピードが上がっているということですね。ここはもともとストレートが長いんですが、さらにスロットルを開ける時間も長くなっている。エンジンへの負担は上がっています。また、コーナリングスピードが上がっているので、ドライバーへの負担も高くなります。

空力については、前回もそうでしたが、外から見て分かる範囲では変わっていません。エンジンについても毎回少しずつ手を入れていますが、ドンと大きくは変わってはいません。

久々となるノートラブルのフリー走行。順調に準備を進める
朝に雨が降ったため、午前中のプラクティスはインスタレーション(機能チェックのための走行)だけでやめましたが、午後は順調に走れました。特別報告するようなトラブルもなく、ひとことで言って順調にいきました。ここ数戦いろんなことがありましたが、これが普通だと思います。

クルマはほとんど持ってきたままで走っています。ばねを少し調整したりキャンバーをいじったりしていますが、重量配分を大きく変えたり、ウイングを取り替えたりという話もなく、非常に順調にいきました。

土曜日の予選は2台そろってQ3(最終セッション)まで残り、決勝では上位を狙うのが目標ですが、非常にうまくいった金曜日でした。

順調だったものの、満足半分、不満半分の予選
ひとことで言ってしまえば、満足半分、不満半分です。朝から順調に走行できましたが、もう少し上に行けた可能性もありましたので、その意味で不満半分です。

金曜日から順調に走行できましたが、土曜日も朝から本当に問題なく走行を重ねることができました。Q1(予選第1セッション)もQ2も作戦どおり。Q3ではタイヤの交換を最後の最後まで引っ張り、ほぼ狙いどおりのタイムを出すことができました。タイヤ交換のタイミングがあと10秒遅かったらダメでしたね。

2台揃ってトップ10内に入り、狙った通りの展開となった予選ではあったが、「ヤルノのクルマをQ3に向けてもう少し調整すればよかったかもしれない」と新居DTCが振り返るように、もう少し上の順位も手に届きそうな手応えもあった。  

ヤルノは少しアンダーステアが出るということだったので、フロントウィングを調整しながら予選を進めたのですが、Q3に向けてもう少し調整しても良かったのかなと思っています。そうすればもう少し攻められただろうし、ラルフの近く、あるいはその上までいけたかもしれません。

ラルフも第3セクターで不満が残るようなところがあったみたいですから、それを考えると、ラルフももう少しタイムを短縮できたかなと思います。ラルフはラップタイムが(5番手と)同タイムですからね。不満半分なのはそのことです。もう少しいけたと。

いずれにしても、2日間2台そろって順調に走れ、Q3に2台残すことができました。『あそこでああすればよかった』という部分が過去にはありましたが、今回は本当に良かったと思います。

レースで順位を上げるはずが、思いもよらぬ結果に
レースについては、まず、スタートのことから話さなければいけないでしょう。6番手、7番手の位置から、スタートでひとつでも順位を上げたいと思っていたのですが、逆に順位を下げてしまい、その後のレースの展開がつらくなってしまいました。ヤルノはクルマのバランスの変化に苦しみ、ペースを上げることができなかったということです。

その後、ヤルノはラルフと接触しましたが、あれはレーシングアクシデントだと思っています。私たちとしては、ドライバーをコースに送り出してしまえば「頑張ってこい」ですから、こちらからドライバーの動きをコントロールすることはできません。ヤルノがドアを閉めたとかそういうことではなかったので、仕方ないと思っています。

 
レーススタートで順位を落とし、波に乗れない展開となってしまった。ラルフ車のペースは問題なかったものの、チームメイトとの接触と電気系トラブルと2度の不運に見舞われる。次戦から投入予定のTF106Bでこれまでの流れを断ち切ることを期待したい。
ラルフのペースは問題なかったですね。1回目のピットストップで燃料を積んだあとも、すぐにペースが戻りましたから。ただ、ヤルノの接触とは直接関係ないとは思うのですが、電気系にトラブルが発生してギアが動かなくなってしまいました。リタイアしたのはそのせいです。

一方、ヤルノはずっとクルマのバランスに問題を抱えていました。第1スティントはオーバーステア現象に苦しみました。第2スティントは1~2ラップ経過したところで安定したのですが、第3スティントでまた第1スティントと同じような状態に戻ってしまったということです。前回も似たような現象に悩みましたので、思いもよらぬ結果になってしまいました。

スティントごとにバランスが変わってしまう点については、きちんと調べてモナコに臨みたいと思います。モナコではフロント部分を改良したTF106Bを持ち込みます。テストを済ませたドライバーからは「フロントのパフォーマンスが上がっている」というコメントを得ています。

現時点ではルノーとフェラーリが一歩抜けているようですが、彼らに食いつけるよう頑張りますので、次戦モナコGPでも応援よろしくお願いします。

予選までの順調な流れに表情が和らぐ新居章年。だがレースではまたも十分なパフォーマンスを発揮できず、課題が残った。