まるで溶鉱炉のようなコンディションのセパン・サーキットで行われるマレーシアGPは、ドライバーとチームの両方にとってかなりの試練となる。この日すでにコース上の気温は55度。さらには体力を容赦なく奪い取る湿気にもドライバーは耐えなければならなかった。通常のレースでドライバーは1レースで最大1リットルの水分を失うが、マレーシアではその数字が4倍にもなる。また、体内の水分のわずか3パーセントを失うだけで筋力が10パーセント落ちてしまうことも覚えておきたい。同時に、身体的な負荷が高まっていけば、それにつれて集中力も低下してしまうのだ。
暑さはエンジンとタイヤ、クルマの各パーツにも大きなストレスになる。日曜日はオフになるゾンタは、こうした状況にも関わらず週末のレースに向けて素晴らしいスタートを切ってくれた。「暑さはあるけど、僕はこのサーキットをドライブするのが大好きなんだよ」、と話すゾンタ。「午前中のセッションではトップタイムを出したけど、午後はレッドブルがコース上で止まってしまい、最終セクターで黄旗が出されてしまった。あれがなければ同じようにトップタイムを出せる自信はあったよ。クルマもタイヤも感触は上々だ」
ゾンタの1分34秒092というタイムは、2位のペドロ・デ・ラ・ロサ(1分35秒144/ウェスト・マクラーレン・メルセデス)に1秒以上の差をつけている。この日の3位はザウバー・ペトロナスのフェリペ・マッサ(1分35秒608)だった。4位はファン・パブロ・モントーヤ(ウェスト・マクラーレン・メルセデス)の1分35秒620、続いてレッドブルのヴィタントニオ・リウッツィが午前のセッションで出した1分35秒691が5位、キミ・ライコネン(ウェスト・マクラーレン・メルセデス)が1分35秒719で6位、そしてラルフ・シューマッハーが1分35秒838で続いた。周回を重ねることが難しかったヤルノ・トゥルーリは、1分36秒841で15番手だ。
「クルマはいい感じだ。タイヤを何セットも使えるリカルドの走りが、われわれの実際の周回ペースを示している」、と話すラルフ。「オーストラリアGPのように、僕に不利になるような雨が降らないことを願っているよ!」
トゥルーリが続ける。「朝のセッションでは、エンジンをいたわるために走行を数周だけにとどめておいた。メルボルンではかなりの距離を走ったし、今年は2レースをエンジン1基で走らなければならないことを考えれば、これも理に適ったやり方だと思う。2回目のフリー走行では、電子機器にトラブルが生じた。でもラルフとリカルドのタイムを見れば、明日、あさってに向けて、気分的にもいい状態で臨めると思う」
今回の東南アジアでのレースに向けて、シャシー部門のテクニカル・ディレクター、マイク・ガスコインはドライバーの3人よりもさらに楽観的な姿勢を見せている。「リカルドの走行結果から、どのタイヤを選ぶかは明白だった。クルマのバランスはかなりいいし、ドライバーは全員それなりにハッピーだよ。フリー走行の最後でヤルノはエンジンの電子機器にトラブルを抱えてしまったが、それでもわれわれの競争力はかなり高いように見える。この位置につけられたわけだから、われわれは喜んでいいと思うね」
開幕戦のオーストラリアGPでは2位を走っていたトゥルーリにタイヤの問題が生じた。それでもガスコインはマレーシアでの順位に自信を見せている。「メルボルンのレースでは――16周目までは明らかに――クルマのバランスはかなりいい状態にあった。われわれの競争力はヤルノのタイヤ・トラブルのせいで目に見えにくくなってしまったけどね。だが今回のレースでは、われわれがどの位置にいるのかがはっきりとわかるはずだ。メルボルンのコースは路面温度が低すぎてタイヤに十分な熱が得られなかった。だがここは暑いからタイヤも期待通りに性能を発揮している。われわれはいい状態にあると言えるね」 |