●マレーシアGPでトヨタが初めての表彰台を獲得しました。これについてどう感じていますか?
「マレーシアでトヨタの表彰台デビューを目にできたのは素晴らしかったね。ヤルノはいい仕事をしたし、それにTF105がレースの週末を通じてずっと速いペースを維持できたのもよかった。われわれが相手にしている各チームの経験や、F1の難しさといったものを、みんなは過小評価している。フェラーリやマクラーレン、ウィリアムズといったチームには、合計したら100年以上もの経験の蓄積があるんだ。わずか50数戦で2位入賞を果たしたトヨタは賞賛に値するよ」
●2005年の最初の2戦を走ったあなた自身の感想は?
「メルボルンでの開幕戦では私にできることはあまりなかったね。予選ではひどいタイミングで最悪の天候に見舞われたし、あそこから挽回するのは無理だった。レースの大半で遅いクルマにひっかかったままだったけど、でも、前がクリアになったときに速いタイムで周回できたのは励みになったよ。ヤルノのクルマがバランスの問題を抱えていたのは明らかだったけど、レースを終えてからも原因は発見できなかった。ヤルノはレース終盤ではそこそこのタイムで周回できていたけど、レース中盤はクルマのバランスに手こずっていた」
●そしてセパンでは?
「サードドライバーのリカルド・ゾンタが金曜日にトップに迫るタイムを出して、その後、ヤルノと私も各セッションでトップ争いができた。残念ながら最初の予選では第1セクターで私のクルマにかなりのアンダーステアが出てしまったけどね。そのせいで予選順位はマーク・ウェバー(BMWウィリアムズ)の後ろになった。レースのペースはウィリアムズよりも速かったけど追い越すことができなかった。ターン15で追い越そうとしたときは彼と接触してしまって、その後は空力的なパフォーマンスが低下してしまった。最終的に手にできたのは5位の4ポイントだったけど、でもお陰でチームはバーレーンGPを前にしてコンストラクターズ選手権で2位になれたからね。開幕前にこんなシナリオを用意されていたら、飛びついていたはずさ」
●マレーシアGPは身体的にどのくらいきつかったですか?
「正直に言うと、身体的には問題なかったよ。クルーの中には顔中汗まみれの人間もいたから、見るからに暑そうだったと思う。湿度は相当に高かったけど、でも問題は耐火服を着てじっとしているときなんだ。クルマで走っているときは少なくとも空気が当たるからね。もちろん、空気そのものもかなり暑いんだけど! トレーニングを積んでおけばいい状態を保てるし、環境にも順応できる。それができれば問題はないんだよ。脱水症状になったらまずいから、体内の水分レベルを高く保っておく必要がある。たとえば、通常のレースでドライバーは約1リットルの水分を失う。マレーシアでは最悪の場合、その4倍も失うんだ。その結果、筋力が落ちるし集中力も低下する。でもきちんと準備をして、身体のコンディションを良好に保っておけば問題はないよ」
●セパンでの結果は、トヨタの力を正しく反映しているでしょうか?
「クルマの競争力について、そのパフォーマンスを偽ることなんて無理だ。(TF105には)間違いなくかなりの競争力がある。冬のテストの間も、はっきりと目には見えないけどクルマの基礎はかなりいいし、開発次第でどんどん進化する、と私は言い続けていた。滑り出しのテストでは苦労するとわかっていたけど、早い時期に新車を発表したのは意図的だったしね。あれは機械的な問題をすべて解決してしまうためだった。その後、空力パッケージをすこし変更したら、クルマのポテンシャルが表れはじめた。これからもそれは続いていくよ。しっかりした計画を立てているし、それに従っていけばシーズンを通して間違いなくいい状態でレースができるはずさ」
●空力パッケージをどう評価していますか?
「これまでのところ、空力対策はどれもうまく機能しているし、お陰でクルマの性能も改善されている。工場には最新の設備がそろっているし、スタッフのみんなもいい仕事をしてくれている。クルマの出来もいいし、正しい方向に進んでいると思う。1月にTF105を発表した際、最初は空力的に妥協しなければならないとわかっていた。だから新しい空力パッケージが(クルマの性能に)かなりのインパクトを与えたときも、別に驚きではなかった。それに冬のテストはかなり寒かったことも忘れてはいけないだろう。各チームのクルマのなかには、確かに他よりもタイヤにきついクルマもあった。噂ではトヨタのクルマはタイヤにきつい、ということになっているようだけど、そんなことはない。セパンでのレースがそれを証明している。当初ダウンフォースが低いままだった頃は、1周の速さを追求するのが難しかった。でもメディアが注目するのはまさにそこだったからね。たぶんそのせいでわれわれのクルマは実力よりも低く見られてしまったんだ。でも“冬の世界選手権”なんてものは存在しないんだからさ」
●マレーシアで見られたトヨタの急速な進化には驚きましたか?
「マイク・ガスコインが加入(2003年12月1日)してから、彼はシャシー部門にてこ入れをしてきた。TF105は実質的に初めて彼が手がけたクルマになる。2005年のレギュレーションによって失ってしまったダウンフォースを取り戻すためには、まだまだかなりの仕事が必要だけど、でもわれわれは間違いなく正しい方向に進んでいる。2レースを終えて12ポイント獲得というのは上々のスタートだけど、これからもっと手にできるはずさ」 |