前戦のバルセロナでは堅実な走りで3位と4位のダブル入賞を果たしたパナソニック・トヨタ・レーシングは、コンストラクターズ選手権ランキング2位を維持したまま、F1カレンダーの中で最も華のあるイベントとして今週末に開催されるモナコGPに挑む。それにしてもスペインGPの舞台となった高速サーキットと今回のモナコ公国の狭くタイトなコースほど、その対比が鮮やかに映るグランプリもないだろう。
1日目は2回のフリー走行を終えた時点で、ラルフ・シューマッハーが9位(1分16秒917)、リカルド・ゾンタが10位(1分17秒046)、ヤルノ・トゥルーリが13位(1分17秒487)という結果となった。ただしモンテカルロのコースでは、伝統的に初日の結果からなんらかの結論を導き出すのは――他の通常のサーキットと比較して――かなり困難だ。これは、日曜日に向けてスケジュールが進むにつれてコース上に付着するタイヤのゴムの影響が非常に大きくなるためだ。土曜日午後に開催される予選1回目のコースコンディションは現在の状況とまったく違うものになっているはずだ。
トゥルーリにとっては、当然のことながらモンテカルロは最高の思い出の場所でもある。このコースを舞台に、ポールポジションからスタートした彼が驚異的な走りでグランプリ初優勝を遂げたのはわずか1年前のこと。とはいえ現実主義者でもあるヤルノは、モナコが幻想だけで勝てる場所ではないことを心得ている。このコースのドライビングには、木曜日の最初のセッションから日曜日の午後にチェッカーフラッグが振られるまでの間、途切れることのない高いレベルの正確性と集中力が求められる。
「今日は難しい一日だった」と話すトゥルーリ。「ここでの典型的なパターンだけど、グリップがほとんどなかったからね。こういった路面コンディションでは、セットアップを進めていくのもかなり難しくなる。重要なのは、サーキットのリズムに慣れること、そしてクルマにダメージをあたえないことだ」
シューマッハーとゾンタもトゥルーリの言葉に同調している。「一日中、グリップ不足に悩まされた」と話すラルフ。「とはいえ、土曜と日曜の展開に関してはかなりいい方向にいくだろうと思っているけどね」
いっぽうのリカルドのほうはさらに率直に感想を語ってくれた。「ひどい一日だったよ! グリップ不足のせいでロングランがかなり難しかったし、セットアップに関して明確な決断を下すのが大変だった。もっといいタイムを残せたはずだけど、あいにく最速ラップの途中で黄旗が振られてしまって、アクセルを緩めざるを得なかった」
最速ラップを記録したのは今シーズンすでにチームとして4勝を挙げているマイルドセヴン・ルノーF1チームのフェルナンド・アロンソだった(1分15秒835)。2位はウェスト・マクラーレン・メルセデスのサード・ドライバー、アレキサンダー・ヴルツの1分15秒912、3位はデヴィッド・クルサード(レッドブル・レーシング)の1分16秒184となり、以下、ジャンカルロ・フィジケラ(ルノー/1分16秒519)、ファン・パブロ・モントーヤ(マクラーレン/1分16秒534)、キミ・ライコネン(マクラーレン/1分16秒558)と続いた。
パナソニック・トヨタ・レーシングのシャシー部門テクニカル・ディレクター、マイク・ガスコインは次のように今日の走りを説明している。
「3台のクルマには何も問題はなかった。今日はグリップがほとんどなく、モナコGPの初日の典型的な結果になった。こうした状況では明確な判断が難しくなるし、また、タイヤの選択も容易ではない。過去にも、木曜日はまったく機能しなかったタイヤが土曜日の予選でフロントローを獲得する、というパターンを何度も目にしている。したがってここでは、データの分析と並行して経験も重要になってくるわけだ。マクラーレンとルノーはここでも速そうだが、それ以外の後続に関して言えばわれわれにも十分競争力があると思う」
トヨタのドライバー2人にとって都合がいいのは、前回のレースを3位と4位で終えているため、土曜日に行われる重要な予選1回目の出走順が最後の方に近くなることだ。雨が降らない限り、予選の最後に近づけば近づくほどグリップレベルが理想の状態に近づいていく。もちろん、モンテカルロのレースの歴史の多くは、偶然によって彩られてきた。モナコGPではあらゆることが起こり得るし、それが当たり前でもある。 |