F1ドライバーに、最も好きなサーキットを聞くと、ほとんどのドライバーが“スパ”と答えるだろう。今週末、ベルギー・アルデンヌ地方に位置するこのサーキットで2週連戦の2戦目として行われる第16戦ベルギーGPでは、20台のF1カーのコクピットに、笑顔のドライバーがいるに違いない。ベルギーGPの開催地であるスパ・フランコルシャンは、2005年シーズン、ヨーロッパで行われる最後のGPとなる。全コースに丘と高速コーナー、そして低速コーナーが混在する、典型的なドライバーズ・サーキットである。このクラシックなサーキットは、ドライバーだけでなく、エンジニアにも挑戦を要求する。パナソニック・トヨタ・レーシングは、前戦イタリアGPで、エンジニアチームによる素晴らしい戦略によって、2台が入賞を果たし、7ポイントを獲得。コンストラクターズ選手権では、78ポイントを携え、3位のチームにわずか8ポイント差の4位でヨーロッパラウンドの最終戦となるベルギーGPへと挑む。
ヤルノ・トゥルーリによれば、スパを速く走る秘訣は、リズムを見出し、全ての異なるコーナーを流れるように走り抜けることだと言う。
ヤルノ・トゥルーリ : カー・ナンバー16
「スパへ向かうのはいつも楽しみだ。そして、グリッドに並ぶ全てのドライバーも、同じ気持ちを抱いているだろう。世界で最も難しいコースの一つであり、コックピットに居ても、全てがエキサイティングだ。このテクニカルサーキットは、本当に優れたドライバーかどうかをはっきりさせる。1周の間にあらゆる種類のコーナーがあり、タイムアップ出来るチャンスも多い。他のどのコースよりも1周が長く、限界を見出すのは難しい。周回中、ずっと集中力を保たなくてはならないが、全てはサーキットにおけるリズムを探るためである。これまで私はスパ・フランコルシャンで良い成績を残してきているが、今週末、再びこのコースに挑戦出来るのを楽しみにしている。いつもながら、レースが始まる前に予測することは困難だが、前戦イタリアGPの勢いを維持し、さらなる好結果が得られることを期待している」
スパ・フランコルシャンでは、いつも天候が大きな要因となってきた。1周の間に、ウェットとドライを含む、全てのコンディションに遭遇することもあるとラルフ・シューマッハーは語る。
ラルフ・シューマッハー : カー・ナンバー17
「多くのドライバーにとって、スパはF1カレンダーの中で最高のサーキットであるが、それは私にとっても例外ではない。迫り来る急勾配へと進入し、駆け上がって行くオー・ルージュは、ドラマティックなコーナーとしてよく知られている。このコーナーの難しさは、針に糸を通すようだと例えられるが、確かに間違ってはいない。スタベロとブランシモンの高速コーナーもまた走る喜びをもたらしてくれる。ここは“本物の”サーキットだ。スパ・フランコルシャンにおけるもう一つの大きな要因は、天候にある。ベルギー・アルデンヌ地方は天候が変わりやすく、どう変わるのかを正確に把握することは出来ない。天候が変わると、コースの一部ではまだドライコンディションなのに、他の一部ではウェット、というような状況になることもあり、慎重に走る必要がある。今年のレースは、例年に比べやや遅い開催となるので、週末、降雨無しで過ごせたら驚きだ。今年はこれまで、ウェットでのレースが無かったので、もし降雨に見舞われれば、ドライバーにとっても、チームやタイヤメーカーにとっても興味深いレースになるだろう」
アルデンヌの丘に位置するスパ・フランコルシャンは、独特のチャレンジを要求し、ドライバーだけでなく、エンジニアにとっても極限の試練となる。
マイク・ガスコイン : シャシー部門テクニカルディレクター
「スパ・フランコルシャンは、ドライビング、そしてエンジニアリングの両面から見て、シーズンを通して最もチャレンジングなサーキットだ。コースは、あの伝説的なオー・ルージュを含む、いくつかの非常に高速なコーナーと、ラ・ソースやバスストップ・シケインのような低速コーナーを併せ持つ。一般的なサーキットと、一般道を組み合わせたコースは、かなりのアップダウンがある。1周の間に、対応しなくてはならない速度域が非常に広いため、これに適応出来る、競争力の高いセットアップを見出すことが最大の挑戦となる。オー・ルージュのような高速コーナーでは、ウィングを寝かせる傾向になるが、低速なバスストップ・シケインや、全開で抜けるブランシモンの左コーナーでも良い速度を維持できるようにセットアップする必要がある。このサーキットはまた、エンジンにとっても大きな試練となる。特に、ラディロンからブランシモンへ戻ってくるまでの長いセクションでは顕著だ。我々のパッケージは、スパ・フランコルシャンに適していると予想している。今シーズンは全てのタイプのサーキットに我々の“TF105”は順応していたが、この傾向は続くと思っている」
|