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Rd.6 Grand Prix of Monaco
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モナコGP テクニカルインサイト
リチャード・クレーガン(チームマネージャー) Q+A

●モナコではロジスティクスに関してどんなことが問題になるのでしょう?
「毎年問題となるのは交通とモナコの基本特性そのものだ。スペースが非常に限られているため、例えばスペアパーツ用のトラックをモーターホームがあるパドックに駐車しなければならないなど、色々と妥協を強いられることになる。(パドックは)F1カーがあるピットエリアからかなり離れているのにね。通常のサーキットであれば必要なパーツは全てガレージ内か、あるいはそのすぐ隣に置いておく。つまりモナコでは必要なパーツを必要な場所に時間通り届けること自体が一つの挑戦なんだ。オーガナイザーが幾ら努力しようとも、困難なこの状況は避けようがない。だがそれもまたモナコGPを特別なものにしている要素の一つだからね」

●F1の新しいサーキットと比べると、その厄介さが一層際立つのでは?
「そうだね。例えばイスタンブールのように新しいパドックに行くと、あらゆるものが整然としていて素晴らしい。だがモナコではそうはいかない。だがそういったモナコへ挑むことが楽しくもあるんだ。全ての準備が整ってしまえば、そこは唯一無二の世界になるからね。これはF1で仕事をしている者にとっては嬉しいことの一つだ。今後もモナコでずっと開催できればいいと思っているよ」

●この状況は年月と共に改善されてきたのでしょうか?
「設備面で近年一番大きな改善だったのが、新しいガレージとピットレーンだ。お陰で今はなんとかレースの週末を上手くこなせるようになったから、これがもたらした違いはかなり大きいと言える。それ以前は、王宮の下にあるパーキングエリアでクルマの準備をしていたんだ。あれはまるでラリーのサービスパークのようなもので、クルマの周りに色々な備品が散らばっていたんだよ。あらゆる類の制限があることを考えれば、今の形のピットとガレージは最善のソリューションだ。今年の一番の違いは、スペアカーがなくなったことだね。それによって当然ながらスペースに更なる余裕が生まれた。2~3年前まではTカーを2台ガレージに用意していたんだ。だからかつての4台体制から今は2台に減ったことになる」

●エンジニアがピットウォールに陣取らないのはこのレースだけですか?
「そうだ。ここではピットガレージの上の建物内に陣取る。いつものピットウォールスタンドもそこにあるんだ。スターティンググリッドを俯瞰できるよう、ガレージの裏手に設営しようとしたのだが、そこはタイヤのためのスペースとして使わなければならなかった。様々な意味で、エンジニアは全員同じ部屋にいたほうがいい。そうすればコミュニケーションが楽になるからね。だがその一方でレースエンジニアにとっては状況が一層困難になる。なぜなら、常に階段を上に下に行ったり来たりしなければならないからだ。それでもなんとかできるものだし、我々は上手くやっているけどね」

●チームスタッフはガレージとパドックの2カ所に分散していますが、これにはどうやって対処するのですか?
「この2つの場所はお互いにかなり離れていて、しかもコース上をF1カーが走っている時はガレージへのアクセスが制限されるため、自由に行き来できないこともある。いつも抱える問題の一つが携帯電話による通信だ。地域の携帯ネットワークに多大な負荷がかかるため繋がりにくくなるんだ。このためチームは自前の無線ネットワークを準備しなければならない。通常より広範な無線システムを構築するため、IT専門スタッフも増員が必要だ。更に、常時パドックに1~2名スタッフを配置しておく必要もある。なぜなら全てのパーツが基本的にそこに置いてあるからね。何か必要となれば、そのスタッフがそのパーツをガレージまで持ってくるんだ。これを適切に機能させようと思ったら、追加の人員が必要になる」

●モナコでは金曜日に走らないわけですが、これは不思議な感じじゃないでしょうか?
「色々な面でこれは良いことではあるが、個人的にはレースの週末の一環した流れが好きだね。モナコでは月曜、火曜、水曜と準備を進め、木曜日にクルマを走らせる。そして翌日はお休みで自由な日になるからここでみんなリラックスする。そのため、土曜日に向けてアドレナリンを高めるために再度みんなを鼓舞しなければならないんだ」

●モナコGPに参加するのは何回目ですか? その中で印象に残っていることはありますか?
「今回で7回目になるが、いつ行っても、実際にドライバーがF1カーを走らせて結果を出していく様子を目の当たりにすると圧倒されるね。モナコのマーシャルはコースオフしたクルマの撤去作業も他より早い。彼らは本当に有能で、オペレーションがとてもスムーズなんだ」

●何かモナコに関してすぐに思い出せる逸話はありますか?
「昨年、セッション開始前に最上階の水道管が破裂して、当然ながら、ありとあらゆるありがたくない場所に水が流れ込んでしまった。大量の水が最上階の床から漏れてきて、ガレージ内にあった配電ボックスと棚が濡れてしまったんだ。そのため我々は2台のクルマをラップトップPCの“パナソニック・タフブック”から操作した。でもその後は、何人かが携帯電話や無線をハーバーに落としてしまった以外は、それほど酷いことにはならなかったよ!」

●ハーバーの管理者との交渉にあなたも関わっているのですか?
「自分のボートをハーバーに停泊させたいというスポンサーやクライアントのために、私もハーバーの管理者と話すことがある。これはお金の問題ではなく、どの場所が空いているか、既に誰がどの場所を確保しているのか、ということなんだ。これにはかなりの交渉が必要になる。またボートで何をしたいのかによっても変わってくるしね。管理者側は、ボートでパーティーが開催されるのかどうか、有名人を招くのかどうかといったことを知りたがる。パーティーは数が多ければ多い程良い。管理者側は、そういった賑やかで華やかな雰囲気を求めているからね」

●全体的に見て、ロジスティクス面での悪夢よりもそういった楽しみの方が優っているということでしょうか?
「私はモナコという場所が大好きだ。ネガティブな部分に目を向けるより、あらゆるグランプリの一番良い部分を味わいたいしね。これから何年か先に振り返った時、我々はモナコでレースをする機会に恵まれ、しかもそこでモータースポーツを楽しむのに給料までもらったんだ、と思うことだろう。それ以上に求めるものなんて何もないさ!」