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「参加型モータースポーツ」に触れたドライバー、エンジニアが魅力を語る!第3回となる今回は、現役大学生2名のメカニック奮闘記です!

  • トヨタ神戸自動車大学校 犬塚史さん
    トヨタ神戸自動車大学校
    犬塚史さん
    「蒲生尚弥選手が乗る121号車を担当させてもらいました。ドライバーさんの命を預かっていることに対してのメカニックの方々の意識の高さに驚きました。社会人として今後やっていくうえで貴重な体験なりました」
  • トヨタ神戸自動車大学校 宮本澪さん
    トヨタ神戸自動車大学校
    宮本澪さん
    「クラブマンクラスの713号車、松原怜史選手のクルマを担当しました。常に周囲の状況を把握することの重要性も感じました。社会に出る前にこうした経験をさせていただき本当によかったです」

クルマ業界に飛び込む学生たちを応援!
ネッツトヨタ兵庫レーシングの新たな試み

就職は人生における一大イベントである。夢を叶えるための第一歩を踏み出すのは勇気がいることだろう。将来はクルマ業界で活躍したい! と思っている学生も沢山いるはずだ。今回はTOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Raceに参戦中のネッツトヨタ兵庫が始めた新たな試みをクローズアップする。

今後の就活にも大きな糧になる!?86/BRZ Raceで学生メカが奮闘

ナンバー付きワンメイクレースという市販車に限りなく近い86/BRZの見応えたっぷりの争いが繰り広げられているTOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race。プロフェッショナルシリーズでは日本を代表するトップレーサー達がテール・トゥー・ノーズの真剣勝負をみせるとあって見応えもたっぷりで、国内の人気カテゴリーのひとつとなっている。その舞台裏を支えているのがチームスタッフだ。監督やマネージャー、そしてメカニックと様々な人が関わっており、みんなが一丸となって勝利を目指している。
そんなレース現場の最前線を、クルマ業界への就職を希望する学生さんたちにも知ってもらえたら……、とネッツトヨタ兵庫レーシングチームがはじめたのが、いわゆる「インターンシップ制度」である。実習を重ねた自動車整備学校の生徒たちがメカニックの一員として参加する。SUPER GTやスーパー耐久、全日本ラリーなどのカテゴリーではすでにこういうカリキュラムを実施する試みはあったが、86/BRZ Raceで行なっているのは珍しい。そこには、学生たちにより実戦的な経験を積んでもらいたいという思いが込められている。
「将来、クルマ関連業種への就職を希望されている学生さんに、レースメカの一員として加わってもらうことで、エンジニアという仕事に対してより深い理解と興味を持ってもらえれば、と思っています。ご協力いただいているのは、弊社の地元にあるトヨタ神戸自動車大学校さん。必要な費用はすべてこちらで負担しますので、カリキュラムの一貫として取り入れてみてはどうでしょうか、とご提案しました。はじめてまだ2戦ですが、先生方や生徒さんにはかなりご好評をいただいていますよ」と語るのはチームディレクターでもあり本プロジェクトを推進するネッツトヨタ兵庫の西村卓也社長だ。

ネッツトヨタ兵庫ではモータースポーツ活動を通じてクルマ好きを増やしたいというメーカーの思いに賛同し86/BRZ Raceに参戦。メンテナンスガレージとしてチームのマネージメントに参加しているキムインターナショナルのバックアップを受けながら、2018年度は3台のレース車両を走らせており、今後もそうしたレース活動を意欲的に行なっていく方針だという。そこまで力を入れているのは社内エンジニアの育成という目的だけでなく、昨今の少子化による若手エンジニアのなり手不足を、このインターンシップ制度により少しでも解消できればという思いもある。
トヨタ神戸自動車大学校の学生たちもディーラーへの就職を希望している在校生も多いし、レースの現場に触れてみたいと考える学生も少なくないだろう。学生たちにもよい経験になるし、その現場を通して将来のビジョンが見えてくるかもしれない。若者の人口が減少する一方である昨今、エンジニア不足というディーラーが抱える悩みに対して、これを解消するための新たな起爆剤にもなりうるのだ。2018年の最終戦となる鈴鹿サーキットでは2名の学生がチームに合流。現場のマネージャーやメカニックの指導を受けながら、真剣な眼差しで作業に取り組んでいた。

「トルクレンチでホイールナットを締め込むだけでも緊張感のある舞台ですが、メカニックの皆さんはやさしく色々なことを教えてくださいました。今回の経験を通じて、これまで以上に命に関わる仕事をしているんだという意識が強くなりましたね」と語ってくれたのは、4年生の宮本澪さん。元々は整備士だったという父親の影響でクルマ好きになったという彼は、すでに車検検査員になる就職が決まっていたが、今後の糧になればと参加を志望したという。「クルマ好きで将来、メカニックになりたいというひとなら体験してみる価値は十分にあると思います。ここでしか教えてもらえないことが多々あります」と話す。
対して、モノ作りに興味があり、トヨタ自動車大学校に入ったという犬塚史さん。なかなか経験できない貴重な機会だからと今回のプロジェクトに参加した。じつはカーディーラーでのインターンシップも体験している彼だが、ハイスピードの領域で戦うレースの現場では、ドライバーの命を預かる作業を行なっているだけに、さらに細かな気遣いが必要だと痛感させられたという。「たとえばキャリパーひとつ外すにせよ、いかにホースにキズを付けず、負荷を掛けないように作業しなければならない。最終的にドライバーさんが乗った時にどうなるかと考えることの重要性をご指導いただきました」と振り返る。インタビューに答えてくれた研修生のふたりから、充実感に溢れた笑顔がこぼれていたのが印象的だった。
目まぐるしく状況が変わるレースの現場では、それぞれのスタッフが状況をしっかりと把握し、自分の頭で考えながら動くことが肝心となる。もちろん、これまでにない責任感も求められる。4日間にも及んだレース現場でそうした意識をみっちりと叩き込まれた学生たち。チームが一丸となって同じ目標に突き進んでいく。そうした経験は、彼らの長い人生においても貴重な財産になることだろう。そしてエンジニア志望やディーラーへの就職を考えているならもちろん、これから社会に羽ばたく学生にとっていい社会勉強になるはずだ。ネッツトヨタ兵庫では来シーズンに向けて、学校サイドと意見交換を行ないながら、よりカリキュラムの充実を図っていくという。今後の展開も楽しみだ。