Round5
TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race Rd.5 十勝スピードウェイ
プロフェッショナルシリーズ レポート
井口卓人選手がBRZにプロクラスの初優勝をもたらす

井口卓人選手がBRZに
プロフェッショナルシリーズの初優勝をもたらす

 3月末からスタートした2016年の86/BRZレースも残すところ3戦。今回の十勝スピードウェイラウンドは中止となったオートポリスの代替戦が開催されるので、土日で2連戦となった。つまり、この週末で好結果を残したドライバーがシリーズチャンピオンに近づくことになる。しかもプロフェッショナルシリーズは2戦ともにボーナスポイントが設けられていて、通常のポイントシステムよりも1戦あたり10ポイントが上乗せられる。ポールポジションとファステストラップを獲得し優勝すると合計で32点が加算されることになり、チャンピオンシップにも大きな影響を与えることが可能なのだ。
 このように重要な連戦となる十勝スピードウェイラウンドは、10月1日(土)にまず第5戦が開催された。プロフェッショナルシリーズにエントリーしたのは28台で、チャンピオン候補はほぼ全員がエントリー。加えて、初年度にシリーズチャンピオンを獲得している♯7山野直也選手のスポット参戦や前戦の富士スピードウェイラウンドで多数のドライバーがペナルティを受け、今戦にエントリーした9名のドライバーが予選でのグリッド降格が決定しているなどトピックが多い戦いとなった。

 10時45分から15分間で競われた予選は、グッドイヤーを履く♯369平中克幸選手と♯370元嶋佑弥選手が速さを見せた。平中選手は、計測1周目にトップタイムとなる1分35秒405をマーク。元嶋選手も1分35秒647を記録し、平中選手に続いた。両者に迫るタイムを記録したのが第4戦でデビューしたばかりの♯63坪井翔選手。タイムは1分35秒654で、元嶋選手に継ぐポジションに入った。15分の予選も終盤になり、この3名を上回る選手が出てこない中で、最後までアタックのタイミングを伺っていた♯88井口卓人選手が1分35秒544をマークして2番手を獲得した。結果としてトップタイムをマークしたのは平中選手だったが、グリッド降格により7番手スタートとなった。よってポールポジションは井口選手、セカンドグリッドには坪井選手が並ぶことになった。

 予選から3時間後にスタートが切られてプロフェッショナルシリーズの決勝レース。ポールポジションの井口選手が好スタートを切ったのに対して2番手の坪井選手は出遅れてしまい、1コーナーで5番手まで後退してしまう。井口選手に続いたのは4番手からスタートした山野選手、そして♯906阪口良平選手という順番で1周目を終了。トップを快走する井口選手は、2周目にファステストラップを記録して後続を引き離しにかかる。2番手の山野選手との差をレースの半分となる7周目には2秒とした。中盤から後半にかけて順位を上げてきたのが、予選で3番手のタイムを記録しながらもグリッド降格により9番手スタートとなっていた元嶋選手。7周目には5番手まで順位を上げ、翌周には4番手と周回を重ねるごとに前走車をパスしていった。そして11周目には3番手を走る阪口選手を抜きトップ争いをする2台を上回るペースで迫った。だが、前を走る2台を抜き去ることはできず3位となった。一方のトップ争いは、井口選手が抜群の安定感で先頭を守り見事にポールトゥウィンを飾った。

 井口選手とBRZにとっては嬉しいプロフェッショナルシリーズ初優勝となった。2位にはスポット参戦した山野選手、3位には元嶋選手と表彰台には新鮮な顔ぶれの3名が並んだ。

リザルト

Rank Driver Car name Total time Gap
1位 井口卓人 CG ROBOT BRZ BS 22'51.202 -
2位 山野直也 CABANA P.MU 86 22'53.124 1.922
3位 元嶋佑弥 GY RACING 86 22'53.517 2.315
4位 阪口良平 AREA86倉敷 22'54.338 3.136
5位 青木孝行 ケーエムエスADVAN86R 22'56.002 4.800

エンジニアピックアップ
優秀なチーフエンジニアやスタッフが
プロフェッショナルシリーズには欠かせない

ドライバーの谷口信輝選手からの指名でチーフエンジニアとして参画している牧田氏。ドライバーとして活躍した経験も持ち、的確な戦略とセッティングを引き出せるエンジニアだという
ドライバーの谷口信輝選手からの指名でチーフエンジニアとして参画している牧田氏。ドライバーとして活躍した経験も持ち、的確な戦略とセッティングを引き出せるエンジニアだという

♯1 KTMS KOBE TOYOPET MOTOR SPORTS
牧田克哉氏

「チーフエンジニアというのは、まわりのライバル勢を見ながらマシンやレースの戦略を立てることが任務だと思っています。86/BRZレースはワンメイク車両で競われますが、タイヤは自由に選択できます。しかも新品か中古も自由に選べるので、タイヤ選びでも戦略が分かれます。プロフェッショナルシリーズは、常にコンマ1秒の戦いを行なっているので、どこでライバルよりも上回るかを考える必要があります。ドライバーとタッグを組んで的確な方向を見つけることが重要です」と、コンマ1秒を詰めるために様々な要素を検討している様子が伺えた。

ドライバーの谷口信輝選手からの指名でチーフエンジニアとして参画している牧田氏。ドライバーとして活躍した経験も持ち、的確な戦略とセッティングを引き出せるエンジニアだという
ドライバーの谷口信輝選手からの指名でチーフエンジニアとして参画している牧田氏。ドライバーとして活躍した経験も持ち、的確な戦略とセッティングを引き出せるエンジニアだという
今季からCG ROBOT RACING TEAMのチーフエンジニアを務めている佐野氏。ニュルブルクリンク24時間レースやスーパー耐久など数多くのレースでエンジニアを務めてきていて、ドライバーからの信頼も高い。
今季からCG ROBOT RACING TEAMのチーフエンジニアを務めている佐野氏。ニュルブルクリンク24時間レースやスーパー耐久など数多くのレースでエンジニアを務めてきていて、ドライバーからの信頼も高い。

♯87、88 CG ROBOT RACING TEAM
佐野泰弘氏

「このチームは今年から携わっているのですが、初年度から山野直也選手のエンジニアを務めていたので厳しいシリーズだというのは知っています。エンジニアはドライバーのコメントを受けて、どのようにマシンを仕立てるかが腕の見せ所です。予選と決勝のセッティングも違いますし、ドライバーが乗りづらいといっても好タイムが出るならば我慢してもらうこともあります。また、レース会場だけでなくクルマ作りも重要な役割となります」とエンジニアに求められることを説明してくれた。

今季からCG ROBOT RACING TEAMのチーフエンジニアを務めている佐野氏。ニュルブルクリンク24時間レースやスーパー耐久など数多くのレースでエンジニアを務めてきていて、ドライバーからの信頼も高い。
今季からCG ROBOT RACING TEAMのチーフエンジニアを務めている佐野氏。ニュルブルクリンク24時間レースやスーパー耐久など数多くのレースでエンジニアを務めてきていて、ドライバーからの信頼も高い。
CUSCOブランドを展開しているキャロッセの代表取締役を務めている長瀬氏。キャロッセは、86/BRZレースのほかにスーパー耐久、全日本ラリー、アジアパシフィックラリー選手権など多くのカテゴリーに参戦している。
CUSCOブランドを展開しているキャロッセの代表取締役を務めている長瀬氏。キャロッセは、86/BRZレースのほかにスーパー耐久、全日本ラリー、アジアパシフィックラリー選手権など多くのカテゴリーに参戦している。

♯770 CUSCO RACING
長瀬努氏

「86/BRZレースを含めて様々なモータースポーツに参戦していますが、どのカテゴリーもオリジナルパーツを開発する場だと思っています。ワンメイク車両を使い変更範囲も少ないレギュレーションなので、パーツそのものの開発はできませんが、86というクルマの素性は知ることができたと思っています。年式ごとの細かい違いだったり制御の変化など、どのモデルがどのようなアドバンテージを持っているかは2シーズンの参戦でだいぶ分かりました。これを自社のノウハウとして活かしていきたいです」と、キャロッセの代表として86/BRZレースに参戦する意義を語ってくれた。

CUSCOブランドを展開しているキャロッセの代表取締役を務めている長瀬氏。キャロッセは、86/BRZレースのほかにスーパー耐久、全日本ラリー、アジアパシフィックラリー選手権など多くのカテゴリーに参戦している。
CUSCOブランドを展開しているキャロッセの代表取締役を務めている長瀬氏。キャロッセは、86/BRZレースのほかにスーパー耐久、全日本ラリー、アジアパシフィックラリー選手権など多くのカテゴリーに参戦している。
岡山トヨペットのレーシングチームとなるK-Tunes Racing。高野氏(右)は86/BRZレースを始め、他の参戦カテゴリーでもエンジニア兼アドバイザーとして参画している。レーシングドライバーとしても多くの栄冠を手にしてきた田中氏(左)は、今季からテクニカルディレクターを務めている。
岡山トヨペットのレーシングチームとなるK-Tunes Racing。高野氏(右)は86/BRZレースを始め、他の参戦カテゴリーでもエンジニア兼アドバイザーとして参画している。レーシングドライバーとしても多くの栄冠を手にしてきた田中氏(左)は、今季からテクニカルディレクターを務めている。

♯906 K-Tunes Racing
高野浩氏、田中実氏

「86/BRZレースは、今のレースシーンでは当たり前となっているストロークセンサーなどのエンジニアリングツールが許可されていないので、エンジニアの個の能力が最大限に試されていると思います。ドライバーが感じている症状を想像して、どのように仕立てていくかを常に検討しています」とエンジニアの人間力を試されるレースだと高野氏はいう。一方の田中氏は「ドライバーの目線でアドバイスを送ったり、戦略をサポートするのが私の役割です。よりチームが好成績を収められるようにしたいです」と、ドライバーの視点からセッティングや戦略についてアドバイスしているようだ。

岡山トヨペットのレーシングチームとなるK-Tunes Racing。高野氏(右)は86/BRZレースを始め、他の参戦カテゴリーでもエンジニア兼アドバイザーとして参画している。レーシングドライバーとしても多くの栄冠を手にしてきた田中氏(左)は、今季からテクニカルディレクターを務めている。
岡山トヨペットのレーシングチームとなるK-Tunes Racing。高野氏(右)は86/BRZレースを始め、他の参戦カテゴリーでもエンジニア兼アドバイザーとして参画している。レーシングドライバーとしても多くの栄冠を手にしてきた田中氏(左)は、今季からテクニカルディレクターを務めている。

[MOTOR GAMES TV]
TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race Rd.5 十勝スピードウェイ

[インカームービー]
Rd.5 十勝スピードウェイ プロフェッショナルシリーズ

次戦予告

TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race 第8戦
開催予定:2016.10.29 ~ 30
場所:鈴鹿サーキット

※プレビューページは2016年10月中旬公開予定です。