GR86/BRZ Cup 2025
シーズンレポート

2025年シリーズの「TOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cup」は、11月29日-30日に岡山国際サーキットで開催された第7大会で最終戦を迎えた。今年はダブルヘッダーでの開催がなかったため、プロフェッショナルシリーズとクラブマンシリーズともに全7戦のシリーズとして競われた。

プロフェッショナルシリーズ

最終戦までもつれ込んだチャンピオン争いは、冷静なレース運びをみせた堤選手が初のチャンピオンに輝く

前戦の第6大会までを振り返ると、ブリヂストンタイヤが3月に発売を始めた改良モデルの「POTENZA RE-10D」が速さをみせ、このタイヤを履く#7堤優威選手が2度のポールポジション獲得と、スポーツランドSUGOでの優勝を含む、前半の4大会すべてで表彰台に登ってポイントスタンディングでトップとなる。ランキング2位には、同じくブリヂストンタイヤを使用する#88井口卓人選手で、常にトップ5以内でチェッカーを受ける安定感をみせていた。ランキング3位は、昨年のチャンピオンでダンロップタイヤを履く#1菅波冬悟選手というトップ3でシーズン後半に突入。

9月に富士スピードウェイで開催された第5大会では、堤選手が予選でのタイム抹消により後方スタートとなり、ポールポジションを獲得した菅波選手は接触によるリタイヤで、ともにポイントを積み重ねられなかった。結果として、この大会で優勝を果たした#293岡本大地選手と3位に入った井口選手がポイント差を詰めることに成功。前回の鈴鹿サーキット大会はダンロップタイヤが新製品となる「DIREZZA β07」を投入して、シーズンの流れが大きく変わるかと思われたが、天候に翻弄され予選で下位に沈んでしまう。決勝ではランキングリーダーの堤選手が2位、井口選手が3位、岡本選手が4位に入り、最終戦を迎える時点で堤選手が80ポイント、井口選手が70ポイント、岡本選手が58ポイントで、チャンピオンシップはこの3人に絞られた。

左から井口選手、堤選手、岡本選手
左から井口選手、堤選手、岡本選手

2025シーズン最終戦 Rd.7 岡山国際サーキット

岡山国際サーキットで行なわれた第7大会は、開催時期が11月末となったため、朝晩は気温が1桁台まで下がり、タイヤのグリップ性能を引き出すための内圧設定やウォームアップの方法が勝敗をわける鍵となった。多くのドライバーが26日(水)から練習走行を開始したが、ここでシリーズランキングトップの堤選手のマシンにトラブルが発生。十勝大会の時と同様に急遽スペアカーを用意して参戦することになる。

気温が下がった朝の岡山国際サーキット
気温が下がった朝の岡山国際サーキット

28日(金)にはタイム計測を実施する専有走行があり、多くのドライバーが2セットのタイヤを使用し、適切な内圧設定やウォームアップ方法を探った。翌日の予選を占うこの専有走行で速さを見せたのは菅波選手で、1分43秒846でトップタイムを記録。ニューモデルの「DIREZZA β07」が本領を発揮し、上位6台をダンロップユーザーが占めた。29日(土)に行なわれた予選では、24位までのドライバーがコースレコードを更新したが、その中でも菅波選手は唯一の43秒台となる1分43秒758を記録してポールポジションを獲得。2番手には#123松井孝允選手、3番手には#2清水英志郎選手とダンロップユーザーが並んだ。シリーズチャンピオンを争う堤選手はブリヂストン勢トップの4番手、井口選手は6番手、岡本選手は24番手。岡本選手がシリーズチャンピオンになるにはポールポジションが必須だったため、チャンピオン争いは堤選手と井口選手の一騎打ちとなった。

唯一の43秒台となる1分43秒758を記録してポールポジションを獲得した菅波選手
唯一の43秒台となる1分43秒758を記録してポールポジションを獲得した菅波選手

菅波選手がポールトゥウィン達成。2025年シリーズチャンピオンは88ポイントを獲得した堤優威選手

多くのマシンがコースレコードを更新した予選から一夜明け、2025年シーズンの最終戦は雲一つない青空のもとで始まる。ポールポジションの菅波選手は好スタートを決めた一方で、2番手の松井選手と3番手の清水選手は出遅れ、後方から堤選手と#121蒲生選手が襲い掛かり、2-3番手争いが激しくなる。バックストレートでは、チャンピオンを争う堤選手と井口選手の直接対決が勃発すると、巧みなポジション取りで井口選手が4番手に浮上。1周目を終え、トップは菅波選手、2番手に清水選手、3番手に蒲生選手、4番手に井口選手、5番手に堤選手というトップ5になった。2周目に入ると、アクシデントでコースアウトした車両を回収するためにセーフティカーが導入される。レースは5周目にリスタートすると、菅波選手が後続を離しに掛かる。6周目にはギャップを1.3秒、8周目には1.9秒まで拡げて逃げ切り体制を作った。一方のシリーズチャンピオン争いは、井口選手が4番手、堤選手が5番手でこのポジションのままだと堤選手が王者となる。レースは終盤に入ると、またしてもコースオフした車両を回収するためにセーフティカーが導入された。12周の決勝レースは最後の1周で再開されたが、トップ5のポジションに変動はなく、菅波選手が2番手以下を寄せ付けずに、ポールトゥウィンを達成。2位には初めての表彰台となる清水選手、3位には蒲生選手が入った。

この結果によって、2025年のシリーズチャンピオンは88ポイントを獲得した堤選手、2位は80ポイントで井口選手、3位は58ポイントで岡本選手となった。

#7堤優威選手コメント

CABANA BS GR86 T by Two CABANA Racing

「2018年に86/BRZ Raceに参戦し始めて今年で8年目になりますが、ようやくチャンピオンを獲得することができ、いまは嬉しい気持ちよりもホッとしています。これまでシリーズ2位や3位を獲得したことは何度かありましたが、自分のミスでチャンスを逃してきたので、今年はレースの順位よりもチャンピオンを獲ることを最優先に考え、必ず獲るという強い思いで挑みました。今シーズンは予選タイム抹消が2回、マシントラブルによってスペアカーでの参戦が2回と、レースウィークに何事もなかったときの方が少なく、今回のレースウィークでも水曜日にレースカーが壊れてしまいました。『自分はこのシリーズでチャンピオンを獲得することができないのではないか』と思うこともありました。それでも、チームが木曜日にはスペアカーを用意してくれて、短時間でいつも通りのパフォーマンスを引き出せるマシンに仕上げてくれました。予選でブリヂストン勢トップの4番手になれたので、決勝レースは接触やトラブルがないように、冷静なレース運びを心がけました。ここまで時間はかかってしまいましたが、ようやくチャンピオンを獲得することができ、チーム代表やスポンサー、多くの関係者に恩返しできたかなと思います」

順位 No. ドライバー 合計ポイント
17堤 優威88-
288井口 卓人80-8
3293岡本 大地58-30
41菅波 冬悟57-31
5121蒲生 尚弥48-40
62清水 英志郎31-57
7504冨林 勇佑29-59
897高橋 知己25-63
931青木 孝行24-64
10160吉田 広樹19-69
プロフェッショナルシリーズ(第7大会終了時点 1位~10位抜粋)

クラブマンシリーズ

2025年のクラブマンシリーズは、マレーシアから初参戦した2人のドライバーが旋風を巻き起こし、シリーズチャンピオン争いはその1人となる#338 Naquib Azlan(ナキブ・アズラン)選手と#707箕輪卓也選手の一騎打ちとなった。

海外勢が躍進してきた2025年シーズン 最終戦は出走3戦目の丸山選手が初優勝を飾る

予選が行なわれた29日(土)は、11時00分からクラブマンシリーズA組がスタート。まずは、先頭でアタックに入ったナキブ選手が1分48秒314を記録し暫定トップに立つ。トップタイムが更新されることなくこのまま終了するかと思われたが、最後のアタックで第5大会から参戦し始めた#708丸山陽平選手が1分48秒290でA組トップとなった。15分間のインターバルを挟み、11時30分からB組の予選が始まる。B組ではAmer Harris(アメー・ハリス)選手が最初にアタックを行ない1分47秒881でトップに立つと、そのタイムを確認してから箕輪選手がコースイン。箕輪選手はシリーズチャンピオンを争うナキブ選手と22ポイントの差があるため、逆転でチャンピオンを獲得するにはポールポジションが絶対条件。王者を掛けた予選アタックはA組のトップタイムを上回る1分48秒161を記録したが、B組の2番手タイムだったため、この時点でナキブ選手の戴冠が決まった。

2025年クラブマンシリーズは107ポイントでナキブ選手がシリーズチャンピオンを獲得

今シーズンを締めくくる決勝レースは、9時50分に幕が切られた。2番グリッドのアメー選手の加速が速く、1コーナー手前でトップに立つ。ポールポジションスタートの丸山選手は少し出遅れてしまったため、後ろから箕輪選手とナキブ選手からのプレッシャーを受ける。上位陣を追いたい箕輪選手だが、後ろから迫るナキブ選手を警戒し、丸山選手との差が開き始める。1周目を終えてトップのアメー選手は2番手に約1.6秒の差をつけ、早くも独走態勢に入る。しかし2番手の丸山選手が、2周目と3周目に立て続けに全体ベストラップを記録して猛追すると、3周目の終了時点でトップとの差が1秒を切る。その後方では、箕輪選手とナキブ選手がテールトゥノーズのバトルとなる。ナキブ選手は各所でラインをずらしてプレッシャーをかけるが、箕輪選手も冷静な走りでポジションを死守。レースの折り返しとなる7周目に入ると、アメー選手と丸山選手の差がコンマ6秒まで接近。しかし8周目に入る直前に、アメー選手にスタート時の違反によって10秒のタイムペナルティが課され、トップから脱落した。これで2番手争いに変わった箕輪選手とナキブ選手のバトルは、一時は1秒近くまで開いたがレース終盤に再接近。ペナルティは出ていたものの自力でトップに立ちたかった丸山選手は、11周目の1コーナーでアメー選手のイン側に飛び込む。2コーナーまでサイドバイサイドのバトルとなるが、アメー選手がトップをキープする。このバトルの隙に箕輪選手とナキブ選手がトップに接近し、4台でのトップ争いに発展。上位勢のバトルはファイナルラップまで続き、アトウッドカーブでナキブ選手が箕輪選手をオーバーテイクすることに成功し2番手に上がる。箕輪選手は逆転のチャンスを伺ったが順位は変わらず、ルーキーの丸山選手が初優勝。2位にナキブ選手、3位に箕輪選手となった。

クラブマンシリーズは107ポイントでナキブ選手がシリーズチャンピオンを獲得。2位は82ポイントで箕輪選手、3位は65ポイントで#990竹村寛成選手となった。

#338 Naquib Azlan選手コメント

GR Garage Balakong GR86 WING HIN MOTORSPORTS X MOTY’S

「今年からGR86/BRZ Cupに参戦し、1年間たくさんの素晴らしい経験をさせていただきました。このレースは毎回どのサーキットでも予選のタイム差が少なく、とてもチャレンジングでした。レベルの高い日本のドライバーたちと競えて楽しかったです。毎回初めて走るコースだったので、シミュレータで可能な限り走り込みを行なったり、YouTubeにアップされているGR86/BRZ Cupの動画を何回も見て勉強したりと大変でした。特に菅波選手のドライビングはとても参考になりました。参戦初年度で多くの優勝やシリーズチャンピオンを獲得できたのは、MOTY’Sを始めこの1年サポートしてくれたスポンサーやチーム、そして応援してくれた日本の皆さんおかげだと思います。来シーズンの活動はまだ決まっていませんが、日本のどこかのレースには参戦する予定なので、楽しみにしていてください」

順位 No. ドライバー 合計ポイント
1338NAQUIB AZLAN107-
2707箕輪 卓也82-25
3990竹村 寛成65-42
4339AMER HARRIS JEFRY60-47
563松原 亮二40-67
6522大森 和也28-79
7311塙 瞬佑26-81
8708丸山 陽平24-83
9557大西 隆生23-84
10703池島 実紅22-85
クラブマンシリーズ(第7大会終了時点 1位~10位抜粋)