GR86/BRZ Cup 2026 シーズン中間レポート

プロフェッショナルシリーズ

「安定感」か「勢い」か
激化している5代目のチャンピオン争い

2026年シーズンのTOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cupは、4月にオートポリスで開幕し、スポーツランドSUGO、岡山国際サーキット、十勝スピードウェイと4戦を消化した。プロフェッショナルシリーズでは、ディフェンディングチャンピオンの♯1堤優威選手が安定してポイントを積み重ねる一方、♯121蒲生尚弥選手と♯906近藤翼選手が勝利を挙げて勢いに乗っている。「安定感」と「勢い」のどちらがタイトル争いをリードするのか、興味深い展開となっている。

順位 No. ドライバー 合計ポイント
11堤 優威52-
2121蒲生 尚弥42-10
3906近藤 翼36-16
410菅波 冬悟33-19
5123松井 孝允27-25
62清水 英志郎21-31
797高橋 知己20-32
860/80小河 諒18-34
918箕輪 卓也14-38
1017冨林 勇佑13-39
プロフェッショナルシリーズ(第4大会終了時点 1位~10位抜粋)

第4戦終了時点でポイントランキングのトップに立つのは、52ポイントを獲得している堤選手。今シーズンはまだ勝利を挙げていないものの、開幕戦と第2戦で2位、第3戦で3位、第4戦でも4位に入り、すべてのレースで上位フィニッシュを果たしている。これまでのシリーズチャンピオンを見ていると、速さだけでなくポイントを取りこぼさないことが重要となる。堤選手はまさに王者らしい安定感によってポイントスタンディングをリードしている。

すべてのレースで上位フィニッシュを果たしているランキングトップの堤優威選手
すべてのレースで上位フィニッシュを果たしているランキングトップの堤優威選手

堤選手を追う蒲生選手、近藤選手

その堤選手を追うのが、蒲生選手と近藤選手だ。蒲生選手はスポーツランドSUGO大会を欠場しているものの、開幕戦と第4戦で優勝。出場した3戦のうち2戦を制し、42ポイントでランキング2位につけている。第4戦では予選2位から好スタートを決め、1コーナーまでにポールポジションの近藤選手をかわすと、その後は周回ごとにギャップを拡げて今季2勝目を挙げた。1戦の欠場がありながら堤選手との差を10ポイントとしていて、今もっとも勢いのあるドライバーといえる。

36ポイントでランキング3位につける近藤選手も、開幕戦に出場していないことを考えれば上々のポジションといえる。第3戦の岡山国際サーキットでは、3番グリッドからオープニングラップでトップに立ち、2016年以来、10年ぶりとなる勝利を挙げた。続く第4戦ではポールポジションを獲得し、決勝レースでも2位に入っている。2戦連続で表彰台に登った近藤選手が後半戦もこの流れを維持できれば、チャンピオン争いに加わる可能性は十分にある。

ランキング2位 蒲生選手(左) 3位 近藤選手(右)

一方、開幕戦から3戦連続でポールポジションを獲得し、異次元ともいえる一発の速さを見せているのが♯10菅波冬悟選手だ。第3戦では後続に約0.3秒の差をつける圧倒的なタイムで予選を制した。ただし、決勝レースでは予選の速さを結果につなげられず、第4戦も練習走行ではエンジントラブルに見舞われてノーポイントに終わった。それでもランキング4位の33ポイントにつけている。決勝レースでのペースと安定性が改善されれば、後半戦で一気にポイント差を縮める力を持っているはずだ。

また、今シーズンは新たな顔ぶれの台頭も見逃せない。第2戦で初優勝を果たした♯2清水英志郎選手と、同じレースで3位に入り初表彰台を獲得した♯18箕輪卓也選手だ。清水選手はFIA-F4からSUPER GTへとステップアップしてきた、王道路線のドライバー。一方の箕輪選手は、ロードスター・パーティレースからGR86/BRZ Cupのクラブマンシリーズを経て、プロフェッショナルシリーズへ進出した。ワンメイクレースのみで上位カテゴリーまで駆け上がってきた経歴となっている。ともにポイントの獲得にはむらがあるものの、条件が合ったときの速さは証明済みだ。歴戦のトップドライバーにどこまで迫れるか注目したい。

ブリヂストンとダンロップによるタイヤ競争

ドライバーだけでなく、毎年繰り広げられるブリヂストンとダンロップによるタイヤ競争も大きな見どころとなった。予選ではダンロップ勢が開幕から4戦連続でポールポジションを獲得。特に一発のパフォーマンスでは、ダンロップ「DIREZZA β07」が優位性を示している。それに対してブリヂストン「POTENZA RE-10D」は、決勝レースでの追い上げと安定した性能を特徴としている。
第3戦ではダンロップユーザーの近藤選手が優勝したが、それ以外の3戦はブリヂストンユーザーが勝利。予選のダンロップ、決勝レースのブリヂストンという構図となっている。ただし、第5戦以降は季節が秋へ移り、気温や路面温度も下がっていく。コンディションの変化によって両タイヤの勢力関係が変わる可能性もあるだろう。

新顔のドライバーやタイヤの違いがどう影響するか最後まで目が離せない。

残り3戦を前に、安定感でリードする堤選手と、勢いに乗る蒲生選手、近藤選手が上位を形成し、一発の速さを持つ菅波選手が追う展開となる。堤選手が連続でシリーズチャンピオンに輝けば、2014年と2015年、2018年と2019年に2度の連覇を果たしている谷口信輝選手以来。近藤選手、菅波選手もシリーズチャンピオン経験者で、実力者による手に汗握るバトルが繰り広げられるだろう。
過去のチャンピオンシップを振り返っても、タイトル獲得には安定感と勝利を重ねる勢いの両方が求められる。新顔のドライバーやタイヤの勢力変化がタイトル争いにどのような影響を与えるのか、最後まで目の離せないシーズンとなりそうだ。

クラブマンシリーズ

若手のアグレッシブさか、ベテランの老獪さか
クラブマンシリーズのチャンピオン候補となる4選手に注目

2026年シーズンのクラブマンシリーズでも、マレーシアチームのGR Garage Balakongによる旋風が吹いている。昨シーズンは、Naquib Azlan(ナキブ・アズラン)選手とAmer Harris Jefry(アメー・ハリス)選手が、海外チームとして初めてシリーズ参戦を果たした。国内の多くのサーキットを走った経験がないなか、ナキブ選手は年間4勝を挙げてシリーズチャンピオンを獲得。クラブマンシリーズに大きなインパクトを残した。

若手の渡部選手とミッチェル選手が選手権をリード

今シーズンは2人に続き、Mitchell Cheah(ミッチェル・チャー)選手がチャンピオンカーとなる338号車を駆ってGR Garage Balakongから参戦している。ミッチェル選手にとっても初めて走るサーキットがほとんどだが、第4戦までに1勝、2位1回という好成績を記録。コースへの高い適応力とスピードを発揮し、早くもタイトル候補のひとりとなっている。

それとともにもう一人の注目選手がいる。それが、ポイントランキングトップに立っている♯456渡部智仁選手だ。クラブマンシリーズのひとつの役割は、プロフェッショナルシリーズや上位カテゴリーへの橋渡し役となること。近年は、箕輪卓也選手や佐藤凌音選手、丸山陽平選手、竹村寛成選手はクラブマンシリーズで腕を磨き、現在はプロフェッショナルシリーズでしのぎを削っている。彼らの後を追っているのが渡部選手になる。2024年にクラブマンシリーズへスポット参戦し、2025年はフル参戦してランキング11位。そして今季は開幕戦で初優勝を遂げ、第4戦までに優勝1回、2位1回、3位2回と、すべてのレースで表彰台に登っている。

開幕戦で初優勝し、現時点でランキングトップの渡部智仁選手
開幕戦で初優勝し、現時点でランキングトップの渡部智仁選手

第4戦終了時点のポイントスタンディングは、渡部選手が62ポイントでトップ。48ポイントのミッチェル選手が2位、44ポイントの♯62松原亮二選手が3位、41ポイントの♯557大西隆生選手が4位につけ、ここまでが1大会の結果によって順位が入れ替わる範囲となる。続く5位は26ポイントの♯310岡田友輔選手、6位は24ポイントの♯27村上凌晟選手、7位は19ポイントの♯3大木隼人選手、8位は18ポイントの♯38松田大輝選手という並びだ。

ランキング3位 松原選手(左) 4位 大西選手(右)
順位 No. ドライバー 合計ポイント
1456渡部 智仁62-
2338Mitchell Cheah48-14
362松原 亮二44-18
4557大西 隆生41-21
5310岡田 友輔26-36
627村上 凌晟24-38
73大木 隼人19-43
838松田 大輝18-44
9703池島 実紅10-52
9139Jordan Johan10-52
クラブマンシリーズ(第4大会終了時点 1位~10位抜粋)

前半戦を振り返ると、開幕戦のオートポリスでは渡部選手がポール・トゥ・ウィンで初優勝を達成。初参戦のミッチェル選手が2位に入り、若手2人が好スタートを切った。第2戦のスポーツランドSUGOでは、ベテランの松原選手がポールポジションから優勝し、大西選手が2位、渡部選手が3位。開幕戦とは対照的に、経験豊富なドライバーが存在感を示した。

第3戦の岡山国際サーキットでは、渡部選手とミッチェル選手がファイナルラップまでトップを争い、最後に逆転したミッチェル選手がシリーズ初優勝を遂げた。第4戦の十勝スピードウェイでは、ミッチェル選手が初走行ながらポールポジションを獲得したものの、決勝レースはスタートで出遅れて後退。予選3番手の岡田選手が好スタートからトップに立ち、松原選手の追撃を抑えて初優勝を飾った。

第3戦で初優勝したミッチェル選手
第3戦で初優勝したミッチェル選手

第4戦までの勝者は、渡部選手、松原選手、ミッチェル選手、岡田選手と、4戦すべて異なっている。そのなかで渡部選手は唯一、全戦で表彰台を獲得し、速さと安定感を兼ね備えた走りでランキングをリードしている。プロフェッショナルシリーズへのステップアップを目指すうえでも、今季のタイトル獲得は大きな意味を持つはずだ。対するミッチェル選手は、初めてのコースでも短期間で速さを引き出す適応力が最大の武器となる。第3戦で初優勝を挙げ、続く第4戦でもポールポジションを獲得したことで、参戦当初と比べても勢いは増している。昨年のナキブ選手に続き、GR Garage Balakongへ2年連続のタイトルを持ち帰る可能性は十分にあるだろう。

一方、若手2人にとって大きな壁となるのが松原選手と大西選手だ。松原選手は第2戦で優勝し、第4戦でも2位に入るなど、勝負どころで確実に上位へ進出している。大西選手も第2戦の2位をはじめ、4戦すべてでポイントを獲得。両選手ともに長年の参戦で培った経験と安定感を持ち、渡部選手とミッチェル選手に簡単には主導権を渡していない。

残り3戦は日本を代表するサーキットが舞台

残り3戦は、富士スピードウェイ、鈴鹿サーキット、モビリティリゾートもてぎで行なわれる。富士と鈴鹿は国際的にも知られたコースで、ミッチェル選手も事前に情報を得やすく、シミュレーターなどで走り込むことができる。一方、渡部選手や松原選手、大西選手にとっても走り慣れたサーキットとなり、これまで以上にハイレベルな直接対決が予想される。
安定感で先行する渡部選手と、高い適応力とスピードで追うミッチェル選手。そこに松原選手と大西選手というベテラン勢が立ちはだかる。ステップアップを目指す若手が勢いのまま突き抜けるのか、それとも経験豊富なベテランが壁となるのか。異なる世代が入り交じるチャンピオン争いは、後半戦でさらに激しさを増していくはずだ。