259LAP2020.01.15
キラキラネーム導入のススメ(◎_◎;)
競走馬は、キラキラネームが少なくないという。騎手の名は正しく常識的に登録されているのに対して、馬名はじつに個性豊かなのだ。だから時には、突拍子もない名前の馬が現れる。実況アナウンサーが苦労するような馬名が面白い。だったらモータースポーツ界も、キラキラネームを取り入れてみれば…。かつて木下隆之が、オートスポーツ誌の連載で物議をかもした新説を再び蘇らせた。
ギャンブルにはまったく縁がないけれど…
競馬や競艇など、ギャンブルと名のつく賭け事には手を出さない性分である。
遠い昔に、雑誌の企画で大井競馬場を訪れる機会があり、企画の流れで馬券を買わされたことがある。その馬券が大当たり。1枚の1000円札が、数分後には5枚の1万円札になって戻ってくるというビギナーズラックに気を良くして何度か通ったことはあるけれど、ギャンブルである以上、ひたすら繰り返せば結局のところ収支は赤くなるわけだし、いくら馬とはいえ、他人の走りにはあまり魅力が感じられないこともあってきっぱりと足を洗った。
人生で3回ほどの経験だから、足を洗ったと呼べるほど足を浸けていたわけではない。だから、なんの未練もなかった。むしろ、ギャンブルそのものは、年末ジャンボすら買うことがないほど淡白である。
「なんでギャンブルが成立するかわかるか?胴元が儲かるからなんだ。寺銭は巻き上げられるだけ。じゃなきゃ、こそこそと人目を忍んで賭博を開帳するわけがない」
とあるギャンブル好きの先輩が諭すように語った。
なるほど、賭け続ければ続けるほど統計的には平均値に近づくわけだから、最終的に得するわけがないのである。という理由もあって、競馬場には足が向かないのである。
「競馬はやらないのですか?」
度々そう聞かれることがあるけれど、僕の答えはいつも決まっている。
「全く興味がないけれど、どうしてもやりたいんだ」
そういって困惑させるのだ。
というのも、賭けごとの競馬には全く興味が湧かない。だが、競馬の騎手はどうしてもやりたいのである。
とはいうものの、ギャンブルとは疎遠な僕の興味を惹きつけたことがある。とあるテレビ番組の企画で、競走馬の名前がキラキラしている…って話題になり、その話に聞き入っていたらついつい惹き込まれてしまったのだ。
競馬ファンならば、いまさら系のネタかもしれないので読み飛ばしていただきたい。だが、競馬も馬の競争だけにレーシングドライバーからすれば他人ごととも思えず、クスッと笑ってしまったのである。
「カアチャンコワイ」
「バカニシナイデヨ」
「ワシャモノタリン」
「ナニスンネン」
まったくおちゃめなネーミングである。競走馬は決して安くはないのに、ここまであそべる神経が…嫌いではないのである。いつどんなタイミングでネーミングするのか知らないけれど、仲間ときゃっきゃ、きゃっきゃと騒いでいて、「これ面白くね⤴︎」なんてことで登録してしまうのだろう。
さそがし実況は盛り上がるに違いない。
「おっと、外からカアチャンコワイが追いあげるぞ。ナニスンネンが逃げるか、バカニシナイデヨか。ところが優勝はオグリキャップか、ナニスンネン」
そんな実況聞きたさに、多くの観客が駆けつけるだろう。新手の集客プロモーションなのかもしれない。
愛馬というほどだから、たとえ馬であっても子供同然の感情になろう。だというのに「カアチャンコワイ」を命名してしまうのだから、シャレが効きすぎている。つまみ枝豆と命名するビートたけし級のハジけぶりである。
モータースポーツ界でのおふざけはほどほどに…
競走馬のネーミングは、カタカナに限定されているという。読みづらいのにカタカナなのは、そんな規則があるからなのだ。
馬が背負うゼッケンベースにネーミングが記入される。高速で駆け抜ける馬からそれを読み取るには、カタカナが都合良いのだろう。
モータースポーツ界の目線からすると不思議なのは、宣伝目的のネーミングはダメなことだ。登録名は、むしろ宣伝目的として扱われていることを考えると意外ですらある。高須クリニックの所有馬を「イエスタカス」としようとして却下されたらしい。
「ZENT LC500」
「ワコーズLC500」
「モチュールGT-R」
「カルソニックGT-R」
「スタディBMW」
企画書にもはっきりと、車名のプライスが記載されているほどだ。それに比較すると、競馬は大金が動くのに、根底のところでは公営ギャンブルであっても、宣伝ではないのだね。
さすがにモータースポーツ界では、オフザケがすぎる車名は聞いたことがない。だがドライバー名を遊んだ時期がある。
「〇〇オヤジ」は、自称オヤジが自らそうネーミングしていた。
「ガッツ城内」はガッツ石松に似ているからだそうだ。
いわゆるキラキラネームではないけれど、砂子智彦はJAFの正式な登録名として「砂子塾長」として活動。自らドライビングスクール「砂子塾」を主宰している。だから「砂子塾長」。もはや本名を知る人も少ないほど浸透してしまった。
かつて、そのことをオートスポーツの連載で記事にしたことがある。
「木下みつひろ」という後輩ドライバーがいる。彼とは親しくしているのだが、木下がふたりいるとややこしいから、改名しろと先輩風を吹かした。
「キミは後輩だから“遅い方のキノシタ”に改名しなさい。そのかわり僕は”速い方のキノシタ”とするから」。それが実現したら、レース実況が楽しいことになったはずだ。
「おっと〜、遅い方のキノシタが、速い方のキノシタを抜いた〜」なんてピエール北川の絶叫が、サーキットに響いたかもしれないのだ。
あまりにバカバカしくて…(笑)
こんなナンセンスネタを友人と転がしていると、次々とくだらないアイデアがこぼれ落ちてきたとめどない。かつてオートスポーツ誌で発表したネタが蘇ってくるわけだ。
故アイルトン・セナの正式な名である”アイルトン・セナ・ダ・シルバ”を多少もじって”キノシタ・ガ・シカシ”は如何だろう。
ゴールシーンを実況するピエール北川はこう叫ぶわけだ。
「おっと〜、トップでチェッカーフラッグを受けたキノシタ〜、が、しかし…」
観客の、ハトが豆鉄砲をくらったかのようなキョトン顔が浮かぶ。
かつてロードスターレースでこんな車名が登録されたという。
“最終コーナーを立ち上がってきたロードスター”である。
「おっと〜、最終コーナーを立ち上がってきたロードスターが最終コーナーに迫ってきたぞ〜」である。これもピエール北川の実況が疑われそうである。
“コースを逆走しているキノシタ”は如何でしょう。
「コースを逆走しているキノシタが、ぐんぐん迫ってくる〜!(◎_◎;)」
もはや、恐怖体験でしかない。
“もはやチャンピオンが決定しているキノシタ”は如何ですか?
「さて開幕戦のグリッドには、もはやチャンピオンが決定しているキノシタが並びます」
レースの楽しみが開幕戦で終了ね。ライバルの戦意喪失作戦です。
それでは申し訳ないから”いまだにノーポイントのキノシタ”で許してください。
「2020年の年間チャンピオンは、いまだにノーポイントのキノシタで決定です」
電卓を叩くまでもない。
“タイヤがはずれたキノシタ”は?
「タイヤがはずれたキノシタが独走で優勝」
歴史に名を刻めますね。
競馬の世界でも笑いを求めた名前が横行していたという。
“モチ”が駆けたレースでは、「モチが粘る、モチが粘る」と実況が連呼したという。
“オマワリサン”では「オマワリサンが逃げる、オマワリサンが逃げる」。”ソンナノカンケーネ”は「G1優勝のソンナノカンケーネ」となる。
いやはや、あまりにくだらないからこのあたりで終わることしにしよう。
かつてダイシンレーシングチームで、スーパーGT300を日産シルビアで戦っていたころ、マシンの名前は「ダイシンシルビア」。実はそのオーナーが所有していた競走馬の名も「ダイシンシルビア」だった。競馬とレースの親和性を感じたものだ。
競馬とは違ってモータースポーツはいわば、古くからネーミングライツがビジネススタイルとして定着している。ならばここはひとつ、キラキラネームを復活してみてはいかがでしょうか?(笑)
キノシタの近況
BMW「イセッタ」は、不思議なことに前側のパネルがドアなのだ。頑固一徹、常識を否定することにかけては秀逸のモデルでのドライブです。目からうろこが落ちました。