Story of
GR Supra

2019年1月14日、北米国際自動車ショーにおいて、GRスープラが世界初披露された。2002年に生産終了してから実に17年ぶりの“スープラ復活”である。豊田章男会長は、スープラへの特別な想いをこう語った。「かつて私はマスタードライバーになる訓練でスープラに乗り、ニュルブルクリンクで師匠であった成瀬さんに運転を教わっていました。

当時、ニュルブルクリンクで他のメーカーが発売前のプロトタイプカーを走らせている中、私たちは、既に生産を終了した古いスープラでしか走ることができず、とても悔しい想いをいたしました。スープラ復活を待ち望んでいたのは世界中の多くのファンだけでなく、私も『スープラを復活させたい』という想いを密かに持ち続けていました。GRスープラは、ニュルブルクリンクで鍛えられ、生まれたクルマです。走る楽しさ以上の経験を提供できるクルマになったと、自信を持ってお伝えします。

長い時間を一緒に過ごしたスープラは、自分にとって『特別な旧友』のような存在。今、やっと旧友に会うことができました。長く会えなかった親友にやっと再会できた気持ちです」。初代スープラが1978年に誕生して以降、スープラはどの世代でも「直列6気筒エンジンを積んだFR車」にこだわってきた。5代目にあたるGRスープラも、もちろんそのDNAを受け継いでいる。トヨタファンが待ち焦がれたスープラの物語が今再び走り始める。

  • *日本ではセリカXX(ダブルエックス)として登場。国内における初代スープラは、グローバルで3代目にあたる。
Supra is back
to Nürburgring
About Nürburgring
ニュルブルクリンクへの挑戦は続く。
「もっといいクルマづくり」に終わりはない。

標高差300m、大小170を超えるコーナーを擁し、コース1周に世界中の道が凝縮された世界有数の難関コースで行われる「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」の大きな特徴は、その難易度よりもむしろ、世界一過酷と言われるコースを「24時間連続して走る」ことにある。次々に起こるトラブルやアクシデントの原因を即座に発見し、一刻も早く復帰させなければならない。

参戦車両をLEXUS RCからLEXUS LCへと変えた2018年のチャレンジは、通常4~5年はかかる車両開発を約1年で行い、かつ将来の市販車への採用を見据えた先行開発技術も投入。開発は困難を極め、国内のシェイクダウンではドライバーから「全くレースができるクルマではない」と酷評された。その後、日本国内でのテストと現地ニュルブルクリンクでの実践テストを経て、ついに予選1日目を迎える。総合34位につけるもドライバーの表情は一様に明るくない。24時間を走り抜くにはまだ不安が残っていた。走行終了後にドライバー・メカニック・エンジニアが集まり、根本的な解決方法を追及し、予選2日目で改善策をテスト。

結果、決勝は31番グリッドからスタートした。スタート直後の他車との接触を皮切りにトラブルが次々と襲うも、ドライバー・メカニック・エンジニアが迅速かつ確実に対応し周回を重ね、総合96位、SP-PROクラス1位で無事完走を果たした。けっして満足できる結果ではなかったかもしれないが、チームはこの結果と引き換えに多くを学んだ。ここで安心してアクセルを踏み込めるクルマならば、世界中の道で通用することを知ったメカニック。未来につながる先行開発技術をニュルに実戦投入し、これ以上ない過酷な状況下で新たな市販車開発への道筋を見出したエンジニア。ニュルブルクリンクでのチャレンジが目指す「もっといいクルマづくり」と、それを支える「人づくり」に終わりはない。