全日本ラリー選手権第7戦 2021 ARKラリー・カムイ今シーズン初のグラベルラリー
勝田範彦/木村裕介組がGRヤリスで初優勝

2021.07.05(月曜日)- 17:00配信

7月2日(金)〜4日(日)にかけて、北海道虻田郡ニセコ町を拠点に2021年全日本ラリー選手権(JRC)第7戦「2021 ARK ラリー・カムイ」が行われ、TOYOTA GAZOO Racingの勝田範彦/木村裕介組が優勝、眞貝知志/安藤裕一組が4位で完走、自己最高位を更新しました。

観戦エリアの前を駆け抜ける勝田範彦/木村裕介組のGR YARIS GR4 Rally
観戦エリアの前を駆け抜ける勝田範彦/木村裕介組のGR YARIS GR4 Rally

モータースポーツの厳しい環境の下で「人を鍛え、クルマを鍛える」ことを目的に、2015年から全日本ラリー選手権に参戦するTOYOTA GAZOO Racing 。2021年からはGRヤリスをベースとする「GR YARIS GR4 Rally」を投入し、最上位カテゴリーであるJN1クラスに挑戦しています。

今季初のグラベル(未舗装路)ラリーとして行われるラリー・カムイ。GR YARIS GR4 Rallyにとって初めてのグラベルラリーに向け、チームは入念な準備を重ねてきました。過去の実戦で学んだノウハウや、テストで得られたデータを活かして駆動系や足まわりの仕様を決定。メカニックのほとんどがグラベルラリー初体験のため、テストでは不整地での車両整備などのシミュレーションも実施し、実戦を迎えました。また、今大会では人数を制限しながらスペシャルステージ(SS)に観戦エリアが設置され、全日本ラリーとしては、実に2年ぶりとなる有観客での開催が実現しました 。

ラリー初日、勝田選手は2度のトップタイムを記録し、総合2番手と絶好の位置につけます。勝田選手は翌日の最終日も力走を継続 し、この日最初のSS7で首位に浮上。SSごとにライバルと首位を入れ替える接戦の末、GR YARIS GR4 Rallyでの初勝利を収めました。眞貝選手はSS1でコースオフしたものの、大きなダメージには至らず、その後は安定したペースで走行を重ね、自己最高位の4位で完走を果たしました。

■豊田章男(チームオーナー)
GRヤリスがTOYOTA GAZOO Racingというワークスチームで競技参戦するのは全日本ラリー選手権だけです。

3月の新城ラリーから参戦が始まり、5回目の挑戦となる「ARKラリー・カムイ」で、ようやく勝利することができました!

勝田範彦選手、木村裕介選手、“ワークスのGRヤリス”を初めて勝たせてくれてありがとう!

先週、ケニアで表彰台に立った息子の勝田貴元選手と、ややこしいので、範彦選手をあえて普段通り“範さん”と呼ばせていただきます。

範さん!やっと勝利することができて、ホッとしていると思います。私もホッとしました。

ずっとSUBARUで勝ち続けてきた範さんですが、私からの無理なお願いを受け入れてくださり、数年前からGRヤリスの開発に参画してくださっていました。

そして昨年「そのままGRヤリスで全日本ラリーに乗ってもらえないか?」「GRヤリスをこれからも鍛え続けてほしい!」と、さらに無理なお願いをしました。

SUBARUに大きな恩義を感じている範さんは、迷われながらも、また私のお願いを聞いてくださいました。

そんな中で迎えた初戦は、序盤でエンジンブロー…。

TOYOTA GAZOO Racingで走る初めてのラリーで、戦えるクルマを用意できず本当に申し訳ないことをしました。

それでも「初戦で好結果が出ていたら、そこに安心してしまっていたかもしれない。この悔しさがきっと好結果につながるはず」と言ってくださいました。

そして、ラリーの経験が少ないトヨタのメカニックやエンジニアを本気で鍛えてくださっています。

初戦の悔しさもあって、どうしてもエンジニア達は完走を狙った保守的な選択をしがちでした。

しかし範さんは、常に新しいチャレンジをメンバーに促し、「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」の軸をブラさずにチームを引っ張ってくださいました。

それもあって今回まで、本当に苦しい戦いの連続だったと思います。

今回、勝てて本当によかった!おめでとうございます。そして、ありがとうございます。

ずっと一緒にGRヤリスをつくってきてくれた範さんが、TOYOTA GAZOO Racingのレーシングスーツを着て、GRヤリスに乗って、優勝したことが本当に嬉しいです。

これからもGRヤリスで一緒に戦い、トヨタを鍛えていってほしいと思います。よろしくお願いします!

追伸1
10年近く前、範さんの走りを見てモリゾウはラリーの楽しさを知リました。それ以来、範さん、お父様の照夫さん、貴元くん、勝田親子3代がモリゾウのラリーの先生です。教えていただいたのは運転の技術だけじゃありません。地域とともにクルマを楽しむラリーという文化の素晴らしさを教えていただきました。これからもラリー界の発展のため、そして自動車産業、自動車文化のために力を貸していただければと思います。

追伸2
この映像 https://youtu.be/35aD0YUTgEIでWRCのシートを狙っていると言っていましたね。今日、一歩近づいたかもしれません。貴元選手も頑張ってくれていますのでお父さんもますますがんばってください!WRCでの親子対決を楽しみにしています(笑)

TOYOTA GAZOO Racing
チームオーナー 豊田章男

■豊岡悟志(チーム監督)
やりました! 勝利をもたらしてくれた勝田選手と木村選手、4位で完走した眞貝選手と安藤選手に感謝しています。GR YARIS GR4 Rallyが、これほど早い段階で優勝争いができるようになったのは、選手とチーム、開発に携わるスタッフの努力があったからこそ。それが、今回の勝利で報われました。ただ、ラリーは走れば走るほど課題が見つかります。この結果に安堵せず、今後も改善と進化を続けます。また、今大会は久々に有観客での開催でしたが、応援してくれる方がいることはチームにとって大きな励みとなりました。
手に汗握る闘いができるのもライバルあってこそです。表彰台で祝福してくれたSUBARUの新井選手、鎌田選手にも心から感謝します。今後も良きライバルとして、クルマ好きの同志として闘っていけたらと思います。

■勝田範彦(ドライバー)
先ずはここまでの車両を作ってくれたエンジニアとメカニックに感謝したいです。最終日は、毎ステージ、コンマ台の接戦が続き、0.7秒差で勝ち切ることができました。私自身もライバルの選手も同じように限界まで攻め、最終的に勝つことができたと思っています。今回のラリーでGR YARIS GR4 Rallyの良い点、改善すべき点が見えてきました。次戦の横手に向けて、とても良いデータを持ち帰ることができたと思います。

■眞貝知志(ドライバー)
私自身にとって4WD車両での初グラベルラリーでしたが、いきなりSS1で大きなミスをし、狭い林道をハイパワー4WD車両で走ることの難しさを痛感することからのスタートとなりました。何とかコースに復帰した後は、セクションごとにチームの皆さんと相談しながら様々な変更をクルマに加え、『SS1と最終SSでは、まったく別物』と思えるほど、クルマやドライビングに多くの気付きや発見を得ながら全てのSSを走行することができました。また、コンマ差の争いを繰り広げる勝田選手とライバル選手達のラリーの進め方を間近で見ることで、改めて全日本JN1トップクラスの選手達やチームの皆さんへの尊敬の念が高まりました。

■宮本昌司(チーフメカニック)
多くのメカニックにとって、グラベルラリーは初めての経験になりました。整備作業だけでなくサービス拠点の設営でも、舗装路ラリーとの違いを肌で感じたはずです。車体下部のガード類は、失敗を繰り返しながら苦労して作って投入したのですが、実戦で走ると想定より大きいダメージを受けていました。さらに改良を重ねてもっと良いものを作っていきます。今回、それぞれのクルマのリーダー格が不在だったのですが、各メカニックがそれを補うように主体的に考え協力して動くことができていました。こうした経験は、今後それぞれの職場に戻った時にも役立つものとなるはずです。

■土井崇司(GRプロジェクト推進部)
今回、GRヤリスにとっての初のグラベルラリーとなりましたが、エンジンや4WD等々、開発当初よりモリゾウ選手を初めとする様々な方々に鍛えて頂いた結果が出て、皆様には本当に感謝致します。今回の結果で歩みを止めることなく、今日より明日、明日よりも明後日と、少しでも良いクルマにできるよう、しっかり開発、改善を続けていきます。また、GRヤリスでラリーに参戦しているチームからも多くのフィードバックをいただいています。こうした声を、GRヤリスだけでなく、将来の市販車にも活かしていきたいと考えます。

チーム一丸となって獲得したGRヤリスの勝利を喜ぶTGRメンバー
チーム一丸となって獲得したGRヤリスの勝利を喜ぶTGRメンバー
多くのスタッフにとっても初のグラベルラリー今回得られた多くの経験は今後に活きる
多くのスタッフにとっても初のグラベルラリー
今回得られた多くの経験は今後に活きる

2021 ARKラリー・カムイ JN1クラス最終結果

  1. 1 勝田 範彦/木村 裕介(GR YARIS GR4 Rally)

    1:21:28.2

  2. 2 新井 敏弘/田中 直哉(スバルWRX STI)

    +0.7

  3. 3 鎌田 卓麻/松本 優一(スバルWRX STI)

    +32.9

  4. 4 眞貝 知志/安藤 裕一(GR YARIS GR4 Rally)

    +3:08.4

  5. 5 福永 修/齊田 美早子(シュコダ・ファビアR5)

    +3:24.5

  6. 6 長江 修平/中岡 和好(三菱ランサーエボリューションX)

    +4:40.5

  7. 7 石川 昌平/竹藪 英樹(トヨタGRヤリス)

    +5:29.4

  8. 8 山本 悠太/立久井 和子(トヨタGRヤリス)

    +5:38.8

  9. 9 松岡 孝典/高篠 孝介(スバルWRX STI)

    +5:57.3

  10. 10 堀田 信/河西 晴雄(三菱ランサーエボリューションX)

    +6:08.0

  11. 参戦14台、完走10台

次戦の情報

次戦は8月20日(金)~22日(日)、秋田県横手市を中心に開催される全日本ラリー選手権(JRC)第8戦横手ラリー2021に出場予定です。

TOYOTA GAZOO Racingは、「もっといいクルマづくり」のために「人を鍛え、クルマを鍛える」活動の一環としてGR YARIS GR4 Rallyを投入し、将来的に投入する車両の開発に活かしていきます。