7月8日(金)〜10日(日)にかけて、2022年全日本ラリー選手権(JRC)第6戦「2022 ARKラリー・カムイ」が北海道虻田郡ニセコ町を拠点に開催され、TOYOTA GAZOO Racing(以下、TGR)の勝田範彦/木村裕介組が3位表彰台を獲得しました。眞貝知志/安藤裕一組は7位で完走しています。
モータースポーツの厳しい環境の下で「人を鍛え、クルマを鍛える」ことを目的に、2015年から全日本ラリー選手権に参戦するTGR。GRヤリスをベースとする「GR YARIS GR4 Rally」を2021年から投入し、最上位カテゴリーであるJN1クラスに挑戦しています。
開幕戦からのターマック(舗装路)ラリー連戦は、前戦でひと区切りとなり、今回の第6戦カムイは今年初のグラベル(未舗装路)ラリーです。サービスパークはニセコアンヌプリ国際スキー場の駐車場に設定され、主催者は感染症対策を徹底したうえで有観客開催を実現しました。カムイのスペシャルステージ(SS、競技区間)は、走りやすい良好な路面が特徴と言えますが、場所によってはラリーカーの走行により深い轍(わだち)が刻まれる区間もあります。昨年の大会では勝田選手がGR YARIS GR4 Rallyでの全日本ラリー選手権初優勝を達成しており、チームとしてもクルマの1年の進化を検証する一戦として臨むべく、前戦から約4週間のインターバルを利用しテストを実施。開催時期が夏場であることを踏まえ、熱対策を含めた様々なアイテムの効果を調査し、軽量化と足まわりの変更を施すなどラリーに向けての準備を整えました。
ラリー初日、勝田選手はSSの2番手タイムを2度記録するなど、順調な走行を披露。特に午後のSSでは多くの選手が轍に苦戦するなか、ミスなく走行して首位から11.1秒差の3番手につけました。勝田選手は最終日もSS2番手タイムを2度マークする好走で、順位を落とすことなく3位表彰台を獲得しました。また眞貝選手は、深い轍が刻まれた区間を慎重に走行し、トラブルなく7位で完走しています。
なお、今大会は「GR Garage MTG日の出町」より、メカニック1名がチームに加わり、メンバーとともにGR YARIS GR4 Rallyの整備を実施しました。
■勝田範彦(ドライバー)
前戦でリタイアしてしまったこともあり、まずは完走できたことにホッとしています。今季初のグラベルラリーでしたが、エンジニアやメカニックが頑張ってくれたことで、あらためてGR YARIS GR4 Rallyの進化を感じることができました。ただ、私自身がそれにドライビングで応えきれなかったことが、少し残念です。今回の3位表彰台はチーム全体が頑張ってきた結果で、感謝しています。次のラリー北海道は高速SS中心の難しい一戦です。昨年は勝利していますが、気を緩めることなく全力で挑みたいと考えています。
■眞貝知志(ドライバー)
サスペンション、ブレーキ、駆動系など、昨年の今頃とはまったく違うクルマと言えるほど、GR YARIS GR4 Rallyは進化しています。自分自身の気づきや、エンジニアの皆さんからの提案で新しいアイデアを試し、グラベルラリーでも快適にドライブできたので、ステージによってはTOP6の選手の争いに食い込むこともできました。ただ、同じSSを2度走る場合など、荒れた道では慎重になりすぎてしまう傾向がありました。トップ6の選手たちは、荒れた路面でもタイムアップにつなげていく技術を持っています。その点が、ドライビングにおける今後の課題だと感じました。
■出合正和(勝田号メカニック)
勝田選手の車両のリヤまわりを担当しました。普段は開発車両の実験を行う部署にいて、私自身も運転や整備などを行っています。ラリーに参加するのは初めてで経験不足の面もありましたが、過酷な環境でクルマを鍛えていく場面を目の当たりにし、こういった世界に触れられたことをうれしく思います。モータースポーツでは、問題点を早急にフィードバックして、現場に入ってからもいいクルマに仕上げていきます。こうしたスピード感は、普段の職場でも実践していきたいです。
■宮本靖大(エンジニア)
前戦からチームに加わり、今回が2戦目です。普段はGRヤリスとGRカローラの4WDの設計をしています。前回のモントレーとは違いグラベル路面ではエンジンや駆動系に対するダメージも大きく変わり、道がクルマを鍛えるということを肌で感じることができました。今回の走行で取得したデータをしっかり開発に活かし、もっといいクルマづくりに努めていきます。ラリーは厳しい競技でありながら、他のチームも含めてひとつの仲間のような一体感があり、非常に印象的でした。競争力のあるクルマづくりに貢献したいと思います。
■小林知晴(GR Garage MTG日の出町)
眞貝選手の車両のリヤまわりの点検のほか、リーダーの指示のもと各担当のサポートなどを行いましたが、時間的な制約の難しさを肌で感じました。選手とクルマの状態を共有して作業すべき内容を洗い出し、それをメンバーに伝達する一連のスピード感が、販売店とはまったく違う点に驚きました。また、サービスが1回終わるごとにエンジニアの方も車両のデータを確認していましたし、メカニックも振り返りを行い、反省点を次に活かしていこうという姿は、『モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり』の、まさに最前線だと感じました。GR Garageは、地域のモータースポーツ発信拠点でもあるので、こうした経験を社内だけでなく、お客様にもしっかりお伝えし、色々な情報を発信していけたらと思っています。
2022 ARKラリー・カムイ JN1クラス最終結果
1 ヘイキ・コバライネン/北川 紗衣(シュコダ・ファビアR5)
49:40.1
2 新井 敏弘/田中 直哉(スバルWRX STI)
+13.5
3 勝田 範彦/木村 裕介(GR YARIS GR4 Rally)
+23.6
4 福永 修/齊田 美早子(シュコダ・ファビアR5)
+36.5
5 鎌田 卓麻/松本 優一(スバルWRX STI)
+39.2
6 奴田原 文雄/東 駿吾(トヨタGRヤリス)
+39.7
7 眞貝 知志/安藤 裕一(GR YARIS GR4 Rally)
+1:23.0
8 松岡 孝典/坂口 慎一(スバル・インプレッサWRX STI)
+3:44.4
9 石川 昌平/竹藪 英樹(トヨタGRヤリス)
+4:14.8
10 山田 健一/竹下 紀子(スバルWRX STI)
+4:34.7
11 大藤 潤一/秋山 美紗子(三菱ランサーエボリューション)
+5:13.6
12 今井 聡/高橋 芙悠(三菱ランサーエボリューション)
+5:53.3
13 堀田 信/河西 晴雄(トヨタGRヤリス)
+6:08.5
14 宮本 雅彦/髙篠 孝介(三菱ランサーエボリューション)
+7:11.9
15 金岡 義樹/朴木 博則(スバルWRX STI)
+11:27.7
参戦19台、完走15台
TOYOTA GAZOO Racingは、「もっといいクルマづくり」のために「人を鍛え、クルマを鍛える」活動の一環としてGR YARIS GR4 Rallyで全日本ラリー選手権に参戦し、将来の車両開発に活かします。
TOYOTA GAZOO Racingの全日本ラリー選手権(JRC)における活動は、パートナー企業の皆さまによって支えられています。