全日本ラリー選手権第5戦 YUHO RALLY TANGO supported by Nissin Mfg 眞貝知志が僅差の5位入賞
トラブルの勝田範彦はリタイア

2023.06.12(月曜日)- 17:00配信

6月9日(金)〜11日(日)にかけて、京都府京丹後市を拠点に2023年シーズン全日本ラリー選手権(JRC)第5戦「YUHO RALLY TANGO supported by Nissin Mfg」が開催され、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)の眞貝知志/安藤裕一組(GR YARIS GR4 RALLY DAT)が、JN-1クラス5位で完走しました。初日3番手につけていた勝田範彦/木村裕介組(GR YARIS JP4-RALLY2)はリタイアに終わっています。

最終日の観戦エリアを走る眞貝選手/安藤選手組のGR YARIS GR4 RALLY DAT
最終日の観戦エリアを走る眞貝選手/安藤選手組のGR YARIS GR4 RALLY DAT

「人材育成」と「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」の実践を目的に、全日本ラリー選手権に参戦するTGR。GRヤリスをベースとする「GR YARIS GR4 Rally」の2シーズンにおよぶ参戦を経て、2023年から新たに勝田/木村組がGR YARIS JP4-RALLY2、眞貝/安藤組がGR YARIS GR4 RALLY DATのステアリングを握ります。

新城ラリーから続いてきたターマック(舗装)ラリー4連戦の最後を締めくくるラリー丹後。そのスペシャルステージ(SS・タイムアタック区間)は、全体的にスムーズな路面が特徴です。ただ、SSごとに高速から低速までバリエーションに富んだコーナーが組み合わせられており、特にサスペンションのセッティングが鍵となる一戦です。

前戦の久万高原ラリーからひと月のインターバルを利用し、チームは過去3戦で得た舗装路での知見をふまえ、事前テストを実施。気温上昇を想定した熱対策、そしてターマックの集大成となるセットアップを施し、ラリー丹後を迎えました。スタート前日には、チームとGRガレージ京都伏見による特別授業を京丹後市の市立峰山中学校で実施し、チーフメカニックの丸田智が約80人の生徒を前に、クルマやラリーの楽しさを伝える授業を行いました。

ラリー初日、僅差の2番手争いを展開した勝田選手は、SS4とSS5でセカンドベストタイムをマークします。しかし、3番手を走行していたSS5において排気系トラブルが発生。続くSS6を走り切ったものの、その日の最終サービスでトラブルの検証を行った結果、レグ離脱を決めました。再出走に向け、競技最終日の再車検は通過したものの、再びトラブルが発生。チームは再度修復作業に取り組み、勝田選手を送り出しましたが、最終的にリタイアを決断しました。

一方、JN-1クラス5番手で初日を終えた眞貝選手は、夜に降り始めた雨でウェットコンディションが残った最終日、SS8でクラス3番手タイムをマークし、4番手に浮上します。しかし、表彰台圏内を狙った午後のセクションでは、急速に路面が乾いていくなかでペースを上げることはかなわず、最終的に5位でラリーを終えました。

■勝田範彦(ドライバー)
トラブルによるリタイアという、残念な結果となりましたが、様々な知見を持ち帰ることができました。また、チームにとっては、初めての作業という、貴重な経験にもなっています。将来、このクルマが多くのユーザーによって使われることを考えると、私たちの使命は、開発途上においてトラブルを洗い出すことです。もちろん、ひとりの選手としては結果につなげられなかった悔しさもありますが、チーム全体のことを考えれば、ポジティブな点もあったラリーと考えています。GRヤリスの開発を振り返ってもそうでしたが、様々なトラブルを解決して良い結果を目指していきたいです。

■眞貝知志(ドライバー)
今回のラリー丹後をひとつのターゲットに、これまでDATや足まわりを仕上げてきましたが、1日目はドライ、2日目はウェットからドライに変化する難しいラリーとなりました。1日目は非常に気持ち良く走ることができたのですが、今ひとつタイムに反映されないという状況でした。このドライ路面でのペース不足についてはしっかりと分析し、両者を確実に結びつける必要があると考えています。最終日はウェット路面を契機に3位表彰台を射程に捉え、なんとか濡れた路面が残ってほしとの思いから午後もウェットタイヤを継続使用したのですが、路面はドライに回復してしまっており、結果的にはミスチョイスとなってしまいました。次戦のラリーカムイはDATで走る初のグラベル(未舗装路)ラリーです。熱の問題、変速や制御など、どのような課題が出てくるのか、新たな挑戦を楽しみにしています。

■丸田智(チーフメカニック)
私たちとしては今季4戦目、ターマックラリーの集大成として今回のラリー丹後に臨みました。今回GR YARIS JP4-RALLY2に関してはトラブルが起きてしまいましたが、初戦の新城から見ればトラブルへの対応に関して、大きく成長できたと評価しています。GR YARIS GR4 RALLY DATもレベルが上がり、ライバルとのタイム差も縮まってきました。今後はグラベルラリー連戦となりますが、2台ともテストでしっかりと問題を洗い出し、改善して本番に臨みたいと思います。それでも、カムイでは私たちが想像もしていないことが起きるでしょう。そうした不測の事態に備えて全員で気持ちを引き締めて取り組みたいと思います。

■ブノワ・ビダル(勝田号エンジニア)
私はTGRラリーチームでラリーエンジニアをしています。主にシャシーと、競技中の戦略の責任者を務めています。開発途中の新しいクルマですから、日本人メカニックたちにアドバイスもしています。今回の役目は、ドライバーが走りやすく、ステージでプッシュできるように最適なセッティングを決めることでした。最後まで走り切れず、走行距離を稼げなかったのは残念ですが、結果的にセッティングを改良することができました。そういう点ではポジティブな収穫です。重要なのは、問題を再発させないこと。なぜ問題が発生したのかを理解し、それを解決することです。開発途中のクルマなので、我々がまだ目にしていない事象がたくさんあります。このクルマを世界に売り出す前にトラブルを把握することが重要なのです。

■岸川洋介(眞貝号エンジニア)
普段はレクサス性能開発部で、眞貝選手の車両に搭載されているG16エンジンの量産開発を担当しています。今回、本年度から全日本ラリーのレギュレーション変更となった吸気リストリクタ径(φ33mm→φ34mm)の対応をさせてもらい、全日本ラリーの現場に初めて帯同しました。決められた時間の中で車両トラブルの原因を究明するなど、即断即決が求められるため、普段の自業務以外の知識を強く求められる現場と感じました。また、エンジンベンチでの評価状態より気温が高い状態での走行だったため、環境影響を見ることができました。リストリクタに限らず、実際に走行した眞貝選手からもリクエストをいただいているので、今後の開発に反映させていきたいです。

■濱田賢三(勝田号メカニック)
今回のラリーでは、勝田選手の車両のメカニックを担当しました。担当はエンジンですが、今大会は自分にとっても、チームにとっても、すごく実になりました。エキゾーストマニホールドやターボの交換に関して、TGR-WRT側からも45分間での交換は難しいだろうと言われていました。作業を諦めるという選択肢もあるなか、それでもチャレンジさせてもらったことに感謝しています。そのなかで、技術や工具なども含めて課題を洗い出せた点は、今後の財産になりました。私は眞貝選手の車両も兼任しているので、今回得た学びを情報展開し、より強いチームづくりに貢献できればと思います。

■久米田英一(眞貝号メカニック)
昨年の12月からチームに加わり、眞貝選手の車両のエンジン全般を担当しています。今回のラリーでは苦労しながらも、眞貝選手にしっかり走っていただけました。僕らもきちんと整備することを心がけています。元々はエンジンの開発部署にいたのですが、すごく世界が広がりました。実際にクルマ全体を触れる楽しさもありますし、自分がやるべきこと、覚えなければならないことも多い反面、日を重ねるごとに自分の力が上がる実感があり、充実しています。今後も色々なことを経験し、しっかり勝てるクルマ、皆さんが乗って楽しめるクルマを作りたいと思っています。

■水野裕治(GRガレージウエルコム栗東)
日頃はGRガレージで、お客さまの対応や商談を担当しています。今回、眞貝選手のクルマの右リヤセクションを担当しました。最初は緊張していましたが、チームワークが素晴らしく、駆動系の交換時にお互いのコミュニケーションをしっかりとって、元気良く作業している雰囲気に、安心感を覚えました。競技中は、ラリーカーもお客さまのクルマと同じ思いで作業しました。GRガレージにお越しになる方は、クルマ好きの方が多いので、今回のように実際の開発現場に立ち会えたことをお伝えすれば、きっと喜んでいただけるはずです。『モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり』を、肌で感じることができました。

初日の6SSを3番手タイムで走り切ったがリタイアとなった勝田選手/木村選手組
初日の6SSを3番手タイムで走り切ったがリタイアとなった勝田選手/木村選手組
GR YARIS GR4 RALLY DATの整備を行う凄腕技能養成部メカニックたち
GR YARIS GR4 RALLY DATの整備を行う凄腕技能養成部メカニックたち

全日本ラリー選手権第5戦YUHO RALLY TANGO supported by Nissin Mfg

JN1クラス最終結果

  1. 1 ヘイキ・コバライネン/北川 紗衣(シュコダ・ファビアR5)

    1:27:31.7

  2. 2 福永 修/齊田 美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)

    +1:15.2

  3. 3 新井 大輝/毛利 太哉(プジョー208ラリー4)

    +2:58.4

  4. 4 柳澤 宏至/竹下 紀子(トヨタGRヤリス)

    +3:10.2

  5. 5 眞貝 知志/安藤 裕一(GR YARIS GR4 RALLY DAT)

    +3:32.1

  6. 6 金岡 義樹/朴木 博則(シュコダ・ファビアR5)

    +12:08.3

  7. R 勝田 範彦/木村 裕介(GR YARIS GR4 JP4-RALLY2)

  8. 参戦10台、出走8台、完走6台

TOYOTA GAZOO Racingは、「もっといいクルマづくり」のために「人を鍛え、クルマを鍛える」活動の一環としてGR YARIS GR4 Rallyで全日本ラリー選手権に参戦し、将来の車両開発に活かします。