- Round2
- 2017 全日本ラリー選手権 第2戦 唐津
レポート
今季初参戦で2位表彰台を獲得
5度のベストタイムを獲得しTGR Vitz CVTの可能性を示す
2017年シーズンの全日本ラリー選手権第2戦「ツール・ド・九州2017 in 唐津 Supported by Sammy」が、4月8日~9日に開催され、TOYOTA GAZOO RacingのTGR Vitz CVT(大倉聡/豊田耕司組)は、JN3クラスで2位表彰台を獲得した。
今回の第2戦唐津がシーズン初戦となるTOYOTA GAZOO Racing。昨年まではTGR Vitz GRMN TurboでJN5クラスに参戦していたが、今年からはマシンをTGR Vitz CVTに変更。スポーツ制御CVT(無段変速機)をラリーの実戦に投入するという新しいチャレンジを行う。また、今年も「人を鍛え、クルマを鍛える」をテーマに、凄腕技能養成部の社員メカニック5人が車両整備を担当。新たにCVT担当エンジニアがチームに帯同することとなった。
4月8日の朝、恒例となった唐津神社でのご祈祷に続き、集まった大勢の観客に見送られながら大鳥居の下からラリーカーが続々とスタートし、戦いの火蓋が切って落とされた。前日から降り続いた雨によって、路面コンディションはウエット(濡れた路面状態)。9.24kmのスペシャルステージ1(SS・タイムアタック区間でありタイムが計測されるコース)で大倉選手がいきなりベストタイムを記録する。続くステージではライバルの先行を許すが、その後も快走を見せ、この日だけで4回のベストタイムを獲得し、2位で初日を終えた。「かなり路面状態が悪い状況でしたが、4回のベストタイムは収穫でした。明日はもう少し攻めていきたいですね」と、大倉選手。
ラリー2日目に入ると、天候が回復。朝から青空がのぞくが、路面は依然として濡れている箇所がある。ウエットからドライ(乾いた路面状態)に切り替わる難しいコンディションとなったこの日も、大倉選手はコンスタントに好タイムを並べ、2位のポジションをしっかりキープ。TOYOTA GAZOO Racingとしてのシーズン初戦で2位表彰台を獲得した。「スポーツ制御CVTをラリーの実戦に投入するという新しい試みが盛り込まれた車両で、ラリーを走り切れたことが大きいです。CVTが有利な点としては、ステアリング操作に集中できるのがいいですね」と、大倉選手はTGR Vitz CVTの手応えを語った。
チーム監督を務める豊岡悟志は、「TOYOTA GAZOO Racingとしてのシーズン初戦ということで不安もありましたが、きっちり完走したことが一番です。ドライバーからもいいフィードバックがありました。しかも、2位を獲得できたことで、今後に向けてさらにチームのモチベーションが高まったと思います」と、笑顔を見せた。
めざせ凄腕メカニック 2017 Vol.01
~エンジニア、ドライバー、メカニックの円滑なコミュニケーションを図り、チームをひとつに~
◆豊岡悟志(チーム監督)
~チームをひとつに~
「チームがひとつになるという意味では、今回から参加したCVTエンジニア(ドライブトレーン制御開発部社員)との連携も上手く取れました。また、ちょっとしたことですが、ケータリング(食事の準備)を自分たちで行ったことで、チームの雰囲気がさらに良くなった印象です。メカニックに新メンバーが1名加わりましたが、当然初めてのラリーで戸惑ったり、色々と思うところもあったはずです。彼にとっても、いい経験になったと思います。次のラリーでは、今回の得た経験を活かしてくれるはずです」
◆宮本昌司(チーフメカニック)
~限られた情報の中でも、次に繋がる目的意識を持った作戦を立てる~
「今回は新しいクルマを完全に理解していないため、保守的に走らなければならない状況にありました。それでもチームとしては戦略的にいろいろ試したい。そこで、ドライバーには申し訳なかったのですが、様々なトライを行いました。例えば、路面状態がウエットからドライに変化するなかで、あえてドライタイヤを早めに投入したり、ブレーキパッドの摩擦材を変えてみたりですね。おかげで次に活かせるデータが取れたと思います。あとはこのデータをしっかり分析しなければなりませんね」
◆松井康成(CVT担当エンジニア)
~CVTが完走できるレベルにある事を確認し、今後の改良の方向性を明確化する~
「まずは大きなトラブルもなく、無事に完走できて良かったです。『CVTは誰でも気持ち良く速く走れる』とアピールしたかったので、ドライバーの大倉選手からそのようなコメントが帰ってきたのは嬉しかったですね。一方で、CVTの制御に関しては、ウエットからドライに変化するなかで、ドライバーの希望通りに動いていない面がある事が分かったのは収穫です。持ち帰ったデータをしっかり解析し、改善を図っていきたいと思います。」
◆豊田耕司(コ・ドライバー)
~新しい車両で1年間を走り切るために、次に向けたフィードバックを行う~
「初戦ということで、ドライバーもコ・ドライバーもクルマの動きがよく分かっていない状況でスタートしました。そんな中、初日はウエット、2日目はドライになりました。さまざまな環境のなかで走ることができたことで、多くのデータを持ち帰れたと思います。マシンに関して大きなトラブルがなかったことは、今後の長い距離のラリー、さらにグラベル(未舗装)ラリーにもつながっていくはずです」
PICK UP
JN3で圧倒的な強さを見せる豊田自動織機チーム
2016年シーズンのJN3クラスで、トヨタ・ヴィッツをドライブしシリーズ9戦中8戦で1位、年間タイトルを獲得したのが、豊田自動織機・DL・ヴィッツRSの天野智之/井上裕紀子組。JN3クラスではこれまで4度のタイトル獲得経験を持つ天野は、15年シーズンにトヨタ・ヴィッツGRMNターボでJN5を制覇。昨年は再び古巣のJN3クラスへの復帰し、第6戦で早々に王座を手にした。今シーズンは連覇を狙いつつも、新たに若手の加藤英祐を自身のチームからエントリーさせており、若手育成も行う。
「自分のタイトル連覇はもちろんですが、今年から加藤選手との2台体制となります。彼にはぜひシリーズ表彰台に上がって欲しいと思っています」
今シーズンのJN3には、TOYOTA GAZOO Racingの大倉聡/豊田耕司組も参戦する。
「力のあるチームですし、後半戦は手強い存在になりそうです。シーズン前半戦をいかに戦えるかが鍵になるでしょうね」と、天野は意気込みを語った。
もっとラリーを楽しもう
サービスパークのある唐津西港に隣接して設けられたラリーパークには、地元で獲れたイカを堪能できる屋台など地元特産物の飲食店や、協賛各社のブースが多数設けられました。その一角に出展したTOYOTA GAZOO Racingブースには、ヤリスWRCレプリカなどの展示車両だけでなく、自分もWRCトップドライバーになれる「顔ハメパネル」なども登場しました。また、今年初登場した「見返りの滝」と「古窯の森」に設けられた観戦コース(ギャラリーステージ)は、2日目に天候が回復したこともあってたくさんのラリーファンが集まり、舗装路を高速で疾走するラリーカーの迫力を堪能していました。
次戦予告
- 4月28~4月30日 全日本ラリー選手権 第3戦
- 「久万高原ラリー」
全日本ラリーで最も標高の高いステージが設けられているターマックイベント。TOYOTA GAZOO RacingブースにはヤリスWRCレプリカを展示予定の他、各種企画でお待ちしております。
関連リンク
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TOYOTA GAZOO Racing スポーツ制御のCVTで全日本ラリー選手権に参戦
TOYOTA GAZOO Racingは、全日本ラリー選手権のJN3クラスに「TGR Vitz CVT」で参戦する。参戦3年目となる2017年シーズンは、4月7日(金)~9日(日)、佐賀県唐津市で開催される第2戦「ツール・ド・九州2017 in 唐津」がチームにとっての初戦となる。 -
全日本ラリーとは
日本の林道を疾走する、国内最高峰のラリー競技、全日本ラリー選手権 -
チーム
2015年4月、トヨタに発足した凄腕技能養成部の社員メカニックが、全日本ラリーにメカニックとして参戦。競技中に整備や修理などを行うサービス作業だけではなく、実戦の経験を積みながらラリーカーを製作するなど、ラリーを通じて様々な技能を学んできた。