Round8
全日本ラリー選手権 第8戦 高山
レポート
全日本ラリー 2017年 第8戦 高山 レポート

難しい雨のなか堅調な走りで
JN3クラス2位表彰台を獲得

 2017年シーズンの全日本ラリー選手権第8戦「第45回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2017 Supported by Sammy」が、10月13日(金)~15日(日)に開催され、TOYOTA GAZOO Racingが投入する TGR Vitz CVT(大倉聡/豊田耕司組)が、JN3クラス2位表彰台を獲得した。
 TGR Vitz CVTは、前戦「ラリー北海道」ではCVTのレスポンスを高める改良を施し、序盤には好タイムを記録した。しかしコースアウトを喫して車体に大きなダメージを受け、リタイアを余儀なくされた。それでもメカニックが修復作業を敢行、再出走を果たし、最終日を走りきっている。「チームとしても得難い経験になりました。ラリー後にあらためて車両にダメージが残っていないか確認しました」と、チーフメカニックの宮本昌司は語る。
 また、ラリー北海道終了後にトヨタ自動車が「GR」ブランドを発表したことに伴い、今大会からTGR Vitz CVTに市販のヴィッツGR/GR SPORTと同意匠のヘッドライトと ブランドアイコンであるFunctional MATRIX(ファンクショナル マトリックス)グリルをもつフロントバンパーを装着した。CVTに関しては、ラリー北海道から導入された高回転域を活かす仕様で初めて舗装路SS(スペシャルステージ・タイムアタック区間)を走ることになる。「このアップデートに関しては未舗装路より、舗装路の方が性能アップの恩恵を受けるはず。どれだけレベルアップしたのか、SSの走行が楽しみです」と、宮本は笑顔を見せた。ドライバーの大倉聡選手は「ここ数戦、チームに良いリザルトを持ち帰れていないので、とにかくまずはしっかり完走したいです」と、慎重に言葉を選んだ。

セレモニアルスタートで、熱烈な声援を受ける。なお、今大会においてヘッドライトとフロントバンパーが変更された車両がデビューした。
セレモニアルスタートで、熱烈な声援を受ける。なお、今大会においてヘッドライトとフロントバンパーが変更された車両がデビューした。

 第5戦モントレー2017 in 嬬恋以来のターマック(舗装路)ラリーとなる本戦は、今回、約30年ぶりに「御嶽」ステージが登場した。当時は未舗装路で行われていたうえに、走行経験がある現役ドライバーもいないため、実質的には新SSと言えるだろう。ここは荒れた舗装路で道幅が狭く、「まるで未舗装路のよう」と、多くのドライバーが走行後に語っている。慎重なペースでラリーをスタートした大倉選手はSS3で2番手に浮上。多くの選手がコースオフを喫したSS4御嶽も、クラス2番手で走りぬき、ラリー初日14(土)を2番手で折り返した。

セレモニアルスタートで、熱烈な声援を受ける。なお、今大会においてヘッドライトとフロントバンパーが変更された車両がデビューした。
セレモニアルスタートで、熱烈な声援を受ける。なお、今大会においてヘッドライトとフロントバンパーが変更された車両がデビューした。

 朝から雨となったラリー2日目の15(日)、SS8では大倉選手が今回初となるクラスベストタイムを獲得。雨脚が強くなり、各クラスでリタイアする車両が続出するなか、TGR Vitz CVT は、クラス2位を守り切ってフィニッシュした。「難しいラリーでしたが、まずは完走できて良かったです。クルマのポテンシャルが非常に高かったので、勝てるラリーだったと思いますが」と、大倉選手は悔しさものぞかせた。一方、豊岡悟志監督は「大倉選手は前半苦戦していましたが、後半からはリズムに乗り、有効なフィードバックをチームにもたらしてくれました。次の新城ラリーに向けて良い流れになったと思います」と、大倉選手の走りを高く評価している。

 なお本戦では、昨年に続き、トヨタ工業学園の訓練生がサービス作業に参加した。昨年も参加し、今年は凄腕技能養成部に配属となった3年生の相良優斗君をリーダーに、2年生の濵口翔伍君、榎本桃花さん、下山祐希君、窄中滉太君の計5名がタイヤ交換などの作業を担当。後輩を見守る立場となった相良君は「後輩の作業を見ることで、たくさんの“気づき”がありました。また、想定外の出来事に対しても、臨機応変に対応することが大切だとあらためて感じました」と、2日間を振り返っている。

めざせ凄腕メカニック 2017 Vol.07
~チームワークを再確認、謙虚・感謝の気持ちで挑む~

◆豊岡悟志(チーム監督)
参戦テーマ:自分がやるべきことなど、あらためてそれぞれが役割を意識する
「今回はそれぞれのスタッフが訓練生を教える立場になったことで、立場を置き換えて考えることができたようです。あらためて、自分が何をすべきなのか気づけたと思います。人に何かを教えるということは、自分が思っている以上に物事をしっかりと理解していなければなりません。なにしろ相手はまだ10代の学生ですからね。自分自身の作業を振り返る、いい機会になったはずです。この活動は“結果”だけを求めて行っているのではありません、いかに気づき・学べるかが重要です。そういった意味でも、今回は色々と考えさせられるラリーでした」

CVT担当エンジニアの児島(手前右端)を中心に、CVTの分析を行うスタッフ。前戦ラリー北海道から導入したCVTの制御にも手応えを感じている。
CVT担当エンジニアの児島(手前右端)を中心に、CVTの分析を行うスタッフ。前戦ラリー北海道から導入したCVTの制御にも手応えを感じている。
トヨタ工業学園高等部から5人の訓練生がサービスに参加した。この中から近い将来凄腕メカニックの仲間入りする生徒が出てくれるはず。
トヨタ工業学園高等部から5人の訓練生がサービスに参加した。この中から近い将来凄腕メカニックの仲間入りする生徒が出てくれるはず。

◆宮本昌司(チーフメカニック)
参戦テーマ:訓練生指導を通じ、指導する立場から新たな気づき・学びを成長につなげる
「意識して声を掛け合うこと、安全面のチェック、動作の確認など、訓練生の動きを見ることで、逆に自分たちがやれていないことがあることに、気づかされました。彼らから色々な質問を受けましたが、うまく答えられない案件もあったようです。まだまだ我々にも足らない点がたくさんあるとあらためて実感しました。訓練生は1週間前からチームに帯同し、作業の準備をしてもらいました。しかし、現場に来ると緊張感や空気が違ったうえ、予定どおりにいかず戸惑うことも多かったようです。今回、得た経験を元に学園での学びに活かしてもらえれば、このラリーは大成功だったと思います。今後の彼らの成長も楽しみです」

◆児島星(CVT担当エンジニア)
参戦テーマ:ラリー北海道から導入した変速制御変更の効果を舗装路で確認し、最終戦に向けてデータを取る
「パフォーマンスに関しては、エンジン回転数が目標通りに制御できレベルUPしていることが分かりました。大倉選手のコメントからも、それは確認できました。今回、データを見ると、想定していたほどCVTには負荷が掛かっていませんでした。これはシーズン中、途切れることなく改良を続けてきたことが良かったのだと思います。大倉選手からのフィードバック、そして得られたデータと照らし合わせて、新城ラリーまでに少しでもタイムアップができるよう、改良を加えたいと思っています」

◆豊田耕司(コ・ドライバー)
参戦テーマ:CVT改良後に初めて走る舗装ラリーで、チームに有用なフィードバックを持ち帰る
「久しぶりのターマックイベントでしたが、ラリー北海道でのコースアウトもあり絶対完走というプレッシャーと、滑りやすい路面状況からか、前半はドライバーが自分の走りを発揮できずに苦労しました。でも、後半は勘を取り戻したこともあって、SSベストタイムを獲得することができました。CVTは路面が荒れたSSでは厳しい局面もありましたが違和感が少なくなってきていて、本当にドライブしやすくなったと思います。いい方向性に開発が進んでいるのではないでしょうか。持ち帰ったデータをしっかり精査し、次に繋げてもらいたいと思います。」

CVT担当エンジニアの児島(手前右端)を中心に、CVTの分析を行うスタッフ。前戦ラリー北海道から導入したCVTの制御にも手応えを感じている。
CVT担当エンジニアの児島(手前右端)を中心に、CVTの分析を行うスタッフ。前戦ラリー北海道から導入したCVTの制御にも手応えを感じている。
トヨタ工業学園高等部から5人の訓練生がサービスに参加した。この中から近い将来凄腕メカニックの仲間入りする生徒が出てくれるはず。
トヨタ工業学園高等部から5人の訓練生がサービスに参加した。この中から近い将来凄腕メカニックの仲間入りする生徒が出てくれるはず。

PICK UP
激戦のJN4クラスで、アットホームに戦う山口清司
(jmsエナペタルADVAN86)

 2017年シーズン、トヨタ86でJN4クラスに参戦する山口清司選手。86やスバルBRZがしのぎを削るこのクラスで戦う山口選手を、愛知県を拠点とするミツバ自動車がサポートしている。
 大学の自動車部に入り、先輩の影響から「見よう見まねで」ラリーをスタートしたと振り返った山口選手は、2001年にJAF中部・近畿地方ラリー選手権のタイトルを獲得し、02年からは全日本選手権にステップアップを果たした。「まずは全日本で1勝を目指して、次はチャンピオンという気持ちでやってきました」という言葉どおり、08年にはトヨタ・カローラ・レビン(AE111)を駆って、当時の全日本選手権JN2クラス王座に輝いている。
「もう一度、チャンピオンになりたいという気持ちで戦っていますが、続いていませんね。特に今シーズンのJN4は強いメンバーが揃っていて、気の抜けないクラスです。自分としてはなかなか思うように走れていないので、歯がゆいラリーが続いています」

今大会は残念ながら競技1日目にコースアウトでリタイア。「この悔しさをバネに、最終戦の新城ラリーでは頑張ります」と意気込みを語ってくれた山口選手。
今大会は残念ながら競技1日目にコースアウトでリタイア。「この悔しさをバネに、最終戦の新城ラリーでは頑張ります」と意気込みを語ってくれた山口選手。

 JN4クラスで優勝を狙う山口選手だが、チームの雰囲気は和気藹々とリラックスしていると明かす。
「僕らのチームは純粋なラリーチームではなく、町の自動車修理工場が主体なんです。それもあって、今年は7戦に出ますが、毎回メカニックの体制が違います(笑)。でも、だからこそ気のおけない仲間とアットホームな雰囲気のなかでラリーを楽しめていると思っています」
 今回の高山は序盤クラス3番手につけていたが、SS4でコースアウト。最終日は再出走にまわり、ラリーを走りきった。「今回は思ったような走りができませんでした。新城ラリーは今回の反省をふまえて、勝てるように頑張ります」と、次戦での挽回を誓った。

今大会は残念ながら競技1日目にコースアウトでリタイア。「この悔しさをバネに、最終戦の新城ラリーでは頑張ります」と意気込みを語ってくれた山口選手。
今大会は残念ながら競技1日目にコースアウトでリタイア。「この悔しさをバネに、最終戦の新城ラリーでは頑張ります」と意気込みを語ってくれた山口選手。

もっとラリーを楽しもう

アルコピアのギャラリーステージでは、高山特産で旬を迎えたリンゴの販売や飛騨牛の串焼きなどのグルメが人気を集めていた。
アルコピアのギャラリーステージでは、高山特産で旬を迎えたリンゴの販売や飛騨牛の串焼きなどのグルメが人気を集めていた。

「ひだ舟山スノーリゾートアルコピア」に設けられた観戦ステージには、今年もたくさんの観客が集まりました。ここはSSのスタートから、ふたつのヘアピンターンを見渡すことができる抜群のロケーション。しかも、2日間で計4回の走行を楽しむことができます。舗装用の車高が低いラリーカーが繰り広げる迫力のアクションに、観客からは驚きの歓声が上がっていました。
 また、アルコピアの観戦コースには、飛騨高山の特産品を販売するブースも登場。今が旬の蜜も多く甘いリンゴや、ジューシーな飛騨牛の串焼きなど、地元グルメを楽しむ人の姿もありました。

アルコピアのギャラリーステージでは、高山特産で旬を迎えたリンゴの販売や飛騨牛の串焼きなどのグルメが人気を集めていた。
アルコピアのギャラリーステージでは、高山特産で旬を迎えたリンゴの販売や飛騨牛の串焼きなどのグルメが人気を集めていた。

次戦予告

11月3~5日 全日本ラリー選手権 第9戦
「第9回 新城ラリー 2017」

2017年シーズン最終戦となる第9戦「新城ラリー」は、11月3日(金)~5日(日)に愛知県新城市を中心に開催されます。昨年は開催期間中、5万人を超える来場者が訪れ(新城市発表)、人気・注目度ともに高い一戦です。戦いの舞台はラリーハイランドマスターズと同様、ターマック(舗装路)ラリーとなります。今シーズンの総決算となる戦いに挑むTOYOTA GAZOO Racingにご声援をお願いいたします。