10月3日(金)〜5日(日)にかけて、2025年シーズンの全日本ラリー選手権(JRC)第7戦「久万高原ラリー」が、愛媛県上浮穴郡久万高原町を拠点に開催され、JN-2クラス内の若手育成カテゴリー「MORIZO Challenge Cup(MCC)」において、CUSCO Racingから参戦するジール・ジョーンズ選手/バイデン・トムソン選手が初優勝を飾りました。

MORIZO Challenge Cup(MCC)は、若手ドライバー育成を目的に2024年から導入された、全日本ラリー選手権JN-2クラスのサブカテゴリーです。今シーズンもJN-2クラスの車両規定をベースとした「トヨタGRヤリス」によって争われます。全日本ラリー選手権全8戦で開催され、25歳以下(一部条件付きで28歳以下)のドライバーが対象。MCC独自のポイントが付与され、1位~3位までの上位入賞者、最多SSトップタイム賞、最優秀女性ドライバー賞が表彰されます。2025年は、開幕から6連勝を飾ったTOYOTA GAZOO Racing-WRJ(TGR-WRJ)の大竹直生選手がチャンピオンを確定させました。大竹選手は12月にフィンランドで行われる、TGR WRCチャレンジプログラム第5期生の最終選考に参加する予定です。
5月から10月へと開催時期を移した第7戦久万高原ラリーは、第4戦モントレー以来となるターマックラリー。山岳地帯に設けられたスペシャルステージ(SS・タイムアタック区間であり、タイムが計測されるコース)は苔や落ち葉も多く、レッキ(事前試走)において高い精度のペースノート作成が求められる一戦です。また、標高1400mの区間を走行するため、エンジンのパワーダウンなどにも注意が必要となります。
今大会には大竹直生選手、ジール・ジョーンズ選手、最上佳樹選手、米林慶晃選手、平川真子選手、兼松由奈選手、木内秀柾選手、岩堀巧選手、田部井翔大選手、関あゆみ選手、伊藤はづき選手に加え、初参戦の服部紡久選手と及川紗利亜選手を加えた13名がエントリー。また、フィンランドからMCCのトレーナーを務めるTGR-WRTのヨウニ・アンプヤ氏とヤンネ・フェルム氏が来日し、選手たちに直接アドバイスを送りました。
ラリーは4日(土)朝、恒例となった久万高原町役場でのセレモニアルスタートを実施し、2日間のラリーが幕を開けました。初日は前日からの雨が降り続き、路面は大半がウェットコンディションとなりましたが、徐々に乾いていく難しい条件に。SS1では今シーズン負けなしの大竹選手は右2輪が側溝に落ち、右フロントタイヤをバーストさせてしまい、大幅にタイムロス。SS1を制したジョーンズ選手がラリーをリードしますが、最上選手がSS2、SS3と連続でSSトップタイムをマークし、ジョーンズ選手の1.5秒差にまで迫ります。しかし最上選手はSS4で痛恨のコースオフ。側溝にタイヤを落とし、この日の競技続行を諦めました。
SS4で、この日2度目となるベストタイムを記録したジョーンズ選手は、MCC2番手の米林選手に46.0秒の大差をつけ、初日を首位でまとめました。1分12秒2差のMCC3番手に岩堀選手、一時は9番手まで順位を落とした大竹選手は、1分26秒8差のMCC4番手までポジションを戻しています。
最終日、雨は上がったものの、路面には濡れた箇所と乾いた箇所が入り混じる状態。初日の段階で十分なアドバンテージを手にしたジョーンズ選手は滑りやすい路面を警戒し、リスクを負わずに走行。SS5では米林選手が大竹選手に0.1秒差ながら、初のSSトップタイムをマークしました。ジョーンズ選手は午後のSSもミスなく走り切り、待望のシーズン初勝利を獲得しました。
順調にMCC2番手を走行していた米林選手でしたが、SS7で車両トラブルによりストップ。この結果、SS7で初のSSトップタイムをマークした岩堀選手が、ジョーンズ選手から1分09秒6差のMCC2位表彰台を獲得しました。1分29秒5差のMCC3位は厳しいラリーを戦い抜いた大竹選手、MCC4位に入った兼松選手が最優秀女性ドライバー賞を手にし、MCC最終戦を残して同賞の暫定チャンピオンとなりました。今回から新たに冨本諒選手とコンビを組んだ平川選手がMCC5位に入賞しました。
トレーナーを務めるアンプヤ氏は「今年も、たいへん興味深いシーズンになりました。ラリーごとにドライバーそれぞれの成長を見てきて、バラつきはあるものの全体としては安定した成長を感じています。もちろん、ラリーの経験による差はありましたが、全日本ラリー選手権というタフな場で鍛えられることによって、全員がレベルアップしたと実感しています」と、選手たちの成長についてコメントしました。今年からコ・ドライバーのトレーナーとして、MCCの講師陣に加わったフェルム氏も、「選手全員からラリーに対しての強い情熱を感じました。コ・ドライバーにとって一番重要なのはペースノートのリーディングですが、この点に関しては全員が高いレベルに達していると思います。さらに良いパフォーマンスを発揮できるよう、本当に細かいことや、物事を整理する方法などを教えています。あらためて、皆さんが見せてくれた成長レベルに感動しています」と、若手の成長ぶりに目を細めました。
■ジール・ジョーンズ(MCC1位)
優勝できて、最高の気分です。SS1でトップに立ったので、ラリーをとおしてリードを守ることに集中しました。それがうまくできて、心から安堵しています。正直、勝利までは長い道のりでした。良いペースで走れても、細かい部分をまとめきれなかったからです。僕としてはシーズン最後のラリーで勝利でき、最高の締めくくりになりました。素晴らしい選手権に参加できたこと、チームやサポートしてくれた皆さんに感謝したいです。
■岩堀巧(MCC2位)
優勝を狙っていたラリーで、2位表彰台という結果を得ることができました。絶対に獲りたいと思っていたSSトップタイムも、SS7で獲得できました。自分としても、トップタイムを狙うなら『大川嶺リバース』だと考えており、このSSはコンパクトにミスなくまとめられました。最終日は路面が乾いていくなか、乾いた箇所と濡れている箇所の差が激しく、その見極めが難しかったです。
■大竹直生(MCC3位)
厳しい一戦となりました。思うようにドライブできず、足まわりのセットアップなどを色々試しましたが、特に滑りやすいトリッキーなコンディションにおいて、ナーバスな挙動に悩まされることになりました。セットアップに関しては、原因を突き止められないままラリーが終わってしまったので、次戦まで短いインターバルですが、ハイランドマスターズにはしっかりと自信を取り戻して挑みたいです。
■兼松由奈(MCC4位/最優秀女性ドライバー賞)
今回、コンディションが変化し続けるなか、セッティングなど苦労する場面もありましたが、無事に帰ってくることができました。あらためて、女性ドライバーの暫定チャンピオンを獲得できたことが、本当にうれしいです。MCCに挑戦した理由のひとつは、女性ドライバークラスがあることでした。私自身、4WDターボ車両の経験がなく、色々と大変でしたが、チームのみんなと協力しながら、プライベーターとして頑張ることができました。
■平川真子(MCC5位)
厳しいコンディションのなか、無事に2日間を走り切れたことに安堵しています。特に初日は濃霧に加え、インカットによる泥が路面に出ていて、本当に大変でした。それでも注意すべき箇所をペースノートに入れ、今回から組んだ冨本(諒)選手がしっかり読んでくれたため、大きなミスなく走ることができました。セットアップに関してもチームと良好なコミュニケーションが取れ、多くを学んだ一戦となりました。
■最上佳樹(MCC6位)
初日、トップが見える状況でSS4のハイスピードコーナーで欲張ってしまった結果、コースオフしてしまい、デイリタイアとなりました。それでも2日目に再出走でき、怖い場面もありましたが、なんとかノートラブルで帰ってくることができました。最後にSSトップタイムを獲得できたことも大きな収穫です。
■及川紗利亜(MCC7位)
とても楽しく走ることができましたし、第一目標である完走を達成できて良かったです。上位の選手たちから大きく差をつけられたのが反省点です。今回、初めてインカットを経験できました。最初は怖かったものの、思い切って踏んだらできることが分かりました。路面コンディションが悪化している状況でも走り切ることができたことは、今後の自信につながるはずです。
■服部紡久(MCC8位)
これだけ大きな規模のラリーで、多くの人に応援してもらいながら走るのが初めてだったので、本当に楽しかったです。SSの距離の長さよりも、路面コンディションの変化を経験できたことが大きな収穫でした。初日は戸惑いましたが、最終日はフィーリングも良く、前日よりもうまくドライブできた実感があります。サービスでクルマをしっかり整備してくれたチームの皆さん、コースを準備してくれたオフィシャルの皆さんのおかげで、ありがたく充実した2日間を過ごせました。
■伊藤はづき(MCC9位)
初日は濃霧がひどく、コンディションの変化も激しかったため、まずは完走を第一に、ペースをコントロールして走りました。最終日のSS7は、非常に良いペースで走れていたのですが、タイヤをヒットしてしまい、初めてステージ中にタイヤ交換を経験しました。アライメントにも影響があったので、最終SSはとにかくパンクしないよう、ペースを落としました。
■関あゆみ(MCC10位)
SS3では霧で視界が悪い中、思ったよりも右にラインを取ったことで、側溝にはまってしまいました。マシンにダメージがなく再出走できたため、目標であった女性ドライバー3番手タイムをマークできました。最終日は路面が乾きつつあるなか、インカットで掻き出された泥など、これまで経験したことのなかったシチュエーションが勉強になりました。最終戦ハイランドマスターズでは、今回デイリタイアした原因をしっかり見直して挑みたいと考えています。
■田部井翔大(リタイア)
まずはこのクルマに慣れることを1年目の課題としています。様々なコンディションのなかで、どこで攻めるべきか、路面に合わせたセッティングなど、コ・ドライバーの梅本(まどか)選手の協力をいただきながら、多くのことを試すことができたのは、今回の収穫です。
■米林慶晃(リタイア)
SS6の途中からメカニカルトラブルの兆しがあり、SS7でリタイアを決めました。それでも、舗装路で速さを証明できたことは、自分でも評価しています。グラベルだけでなく、ターマックでもいいペースで走れることを示せました。ラリー北海道ではグラベルラリーでの路面変化への対応に慣れてきたこともあり、今回のようにウェットからドライに変化するなかでも、ペースを上げることができました。今回の悔しさは、最終戦のハイランドマスターズでリベンジします。
■木内秀柾(リタイア)
開幕戦三河湾以来のターマックラリーだったため、舗装路での感覚を取り戻すことを目標に掲げて挑みました。SS2のスタートから12km地点の右コーナーでインカットした際、側溝に引っかかり、コースオフしてしまいました。コースオフした箇所に立木があり、マシンにダメージを負ってしまいました。残念ながらリタイアとなりましたが、良いペースで走れたことは、自分にとって収穫でした。

参戦2戦目にして表彰台を獲得した

兼松選手(左)とコ・ドライバーの山下選手
全日本ラリー選手権第7戦 久万高原ラリー
MORIZO Challenge Cup最終結果
1 ジール・ジョーンズ/バイデン・トムソン(CUSCO WM DL GR Yaris)
1:38:29.1
2 岩堀巧/相原貴浩(一六RACING 丸創物流GRヤリス)
+1:03.9
3 大竹直生/橋本美咲(GR YARIS GR4 RALLY)
+1:17.7
4 兼松由奈/山下秀(ロッソモデロ 大東建託 GRヤリスDAT)
+2:07.7
5 平川真子/冨本諒(GR YARIS GR4 RALLY DAT)
+3:00.4
6 最上佳樹/小藤桂一(FIT-EASYZEALGRYARIS)
+9:00.0
7 及川沙利亜/安藤裕一(DL WPMS GRヤリスDAT)
+14:55.5
8 服部紡久/佐々木裕一(MATEX-AQTEC KYBGRヤリス)
+15:34.5
9 伊藤はづき/槻島もも(CUSCO WM DL GR YARIS)
+20:52.1
10 関あゆみ/市橋真由子(FIT-EASY ZEALGRYars)
+28:58.6
R 田部井翔大/梅本まどか(CUSCO WM DL GR YARIS)
R 米林慶晃/木村悟士(KTMS GRヤリス)
R 木内秀柾/藤田めぐみ(CUSCO WM DL GR Yaris)
参戦13台、出走13台、完走10台
TOYOTA GAZOO RacingのMORIZO Challenge Cupにおける活動は、パートナー企業の皆さまによって支えられています。
