OVER DRIVE MEETS GAZOO

わずか0.1秒でも速い車を作るために。
技を磨き、汗をかき、油にまみれるメカニックがいる。
彼らを動かすのは何か。そのプライドの原点を探る。

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2015年4月、トヨタに発足した凄腕技能養成部。配属された社員たちが、全日本ラリーにメカニックとして参戦している。整備・修理を行うサービス作業だけではなく、実戦の経験を積みながらラリーカーを製作する。クルマづくりを通じた人材育成だ。そんな凄腕技能養成部の中で大事にされている言葉がある。それはトヨタのクルマづくり全てに通底する「現地現物」。机の上や頭の中だけで考え判断するのではなく、実際に現場に行き、実物を見て手を動かさないと見えてこないことがある。だから、彼らは日々手を動かし続ける。時には、油まみれになりながら、泥だらけになりながら。全ては、いいクルマづくりのために。

ラリーは時間との戦い。それは、ドライバーだけではなく、メカニックも同様だ。 ラリーの競技期間中、整備を行うために設けられたサービスパークでの修理時間は制限され、常にベストコンディションでドライバーに車両を渡すことは難しい。だから、決断が余儀なくされる。ベストコンディションが無理なら、どうするのがベターコンディションかを見極める。不測のトラブルもしょっちゅう起こる。そんなラリーだから、臨機応変さがメカニックには求められる。でも、だからこそラリーは面白い。

「2017年9月に行われた全日本ラリー選手権第7戦「RALLY HOKKAIDO(ラリー北海道)」。競技2日目後半のSS8でスタートから1km地点で車両は大きくコースアウトし大きなダメージを負い、自走不能になった。車両を引き上げにいったチーム監督豊岡悟志はその様子を見て、脳裏にリタイヤの四文字がよぎった。しかし故障した車体がサービスパークに着くと、「俺らの出番だ」と意気揚々と修理を始めるメカニックたちがいた。夜を徹した修復作業により車両は走行可能な状態に戻り、再出走を果たした。メカニックの熱い思いが結実した瞬間だった。

「メカニックって逆境に燃えるところがあるんですよね。」とチーム監督の豊岡は言う。 サービスパークで待っているメカニックたちの元に、車体が大きく損傷した車両が戻ってくると、「自分の力を発揮する舞台が出来た」と心が躍る。一種祭りの気分だという。限られた時間の中で、少しでもドライバーが走りやすいように修復を施す。何を直して、何を諦めるか、今までの経験則に基づいて瞬時に決断を下していく。一分一秒が惜しい。時間と戦いながら、無駄のない手つきで修復していくその姿は、観客を沸かせるドライバーの走りに負けず劣らずのモータースポーツのハイライトだ。

ラリーはヨーロッパを中心としてアフリカ・中南米・アジア・オセアニアなど世界各地あらゆる場所で催される。地理も違えば、天候、走行する道路の環境も当然変わってくる。そんな環境下で、ドライバーにどう気持ちよく走ってもらうか。0.1秒でも速く走らせるにはどうするのか。そのために、車両を次のラリーまで限りある時間の中で環境にアジャストしていく。前のラリーで損傷した車両を次のラリーで完走できるように修復に最善を尽くす。一方ドライバーは、メカニックが用意してくれたコンディションの中でベストな走りを尽くす。そんなメカニックとドライバーはもはや言葉すら必要としない信頼関係だ。

メカニックとして一番嬉しい瞬間は、自らが整備した車両がサービスパークから出ていく時、そしてフィニッシュまで戻ってくる時だと、チーフメカニックの宮本は語る。「当たり前のように走って、当たり前のように帰ってくる。」一見、単純に見えるようなことが、一番難しい。でも一生懸命に接すれば、クルマは応えてくれる、喜んでくれる。だから、メカニックはまるで自分の子どもへのように愛情を持ってクルマに向き合う。もっと速く走れるようにしてやろう、壊れないようにしてやろう、と試行錯誤する。クルマを愛する気持ちが、いいクルマづくりにつながっている。

メカニックの仕事に終わりはない。修理をしたクルマは、またいつか壊れる。作業は、華やかとは言えない反復作業がほとんどだ。勝利に対する賞賛の多くはドライバーに向くかもしれない。一般的に裏方と言われる役回りだ。それでも、ラリーメカニックは、その手を止めることはない。0.1秒でも速く走らせること。安全性を向上させ、ドライバーが安心した運転ができるようにすること。そのために、彼らメカニックは経験と知恵を総動員してクルマに向き合う。全てはいいクルマづくりのために。クルマに乗るすべての人のために。その手で、世界を駆動する。それが彼ら、メカニックたちの誇りだ。

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