OVER DRIVE MEETS GAZOO

東出昌大 × 松山大介 スピカレーシングファクトリー・チーフメカニック檜山篤洋役 × TOYOTA GAZOO Racing WRTメカニック

東出昌大 スピカレーシングファクトリー・チーフメカニック檜山篤洋役 ×
松山大介 TOYOTA GAZOO Racing WRTメカニック

ラリーメカニック役を演じた東出昌大と、世界最高峰のラリー、WRCにトヨタからメカニックとして参戦する松山大介が コルシカ島で対面。
知られざるメカニックの世界を語り合った。

古賀敬介=文 小林直樹/サンク=写真
 ヘアメイク:石川奈緒記 スタイリスト:檜垣健太郎
©2018「OVER DRIVE」制作委員会

――東出さんはフランスのコルシカ島で行われたWRC第4戦ツール・ド・コルスを取材されましたが、世界最高峰のクルマと選手の走りを実際に見て、どのように感じましたか?

東出映像で見るよりも、生のほうが圧倒的に迫力がありました。日光のいろは坂よりもさらに曲がりくねった道を、あれだけのスピードで疾走するシーンを目の前で見て、とても人間が運転してるようには思えなかった。クルマという生き物に、特殊な生き物が乗って舵を取ってるような非現実的な感じでした。

――サービスパークでは、松山さんらトヨタWRCチームのメカニックがクルマを整備する姿を、夜遅くまで真剣に観察されていました。

松山本当に熱心に作業を見ていらっしゃいましたね。

東出皆さんの仕事が本当に早くて驚きました。動きはゆっくりに見えるのですが、実際はとても早い。今回映画でラリーメカニックの役を演じるにあたり、まず整備作業のトレーニングを受けたんです。アフリカで実際に走っていたラリーカーを東宝スタジオに持ち込み、それをバラしたり組んだりという作業を、他のメカニックを演じる仲間と共に2ヶ月以上何度も繰り返した。制限時間を設けて作業をしたりもしたので、WRTメカニックの作業を目の前で見て感動しました。

――東出さんをはじめとするメカニック役の皆さんは、工具の扱いかたが非常に手慣れていて、本物のラリーメカニックが作業をしているように錯覚しました。

東出インパクトドライバーという工具でいろいろなパーツを外していくのですが、その先に付けるレンチのサイズが16ミリなのか18ミリなのか、ぱっと見ではなかなか判別できないんです。各パーツのネジ頭の口径を覚えるのは、パーツの名前を覚えるよりも大変でしたね。ところで、松山さんにお聞きしたいのですが、メカニックの仕事で一番重要なことは何でしょうか?

松山異常をいかに察知するかですね。何かがおかしい、壊れている部品はないか、それにいち早く気づく能力が僕らの仕事ではすごく大事なんです。五感をフルに働かせ、目で見て、手で触り、音を聞き、匂いをかぎ、時にはオイルを舐めて問題を見つけることもあります。そして、異常を発見するためには、普段からクルマの正常な状態をいかに自分の頭の中に入れておくかが重要です。そうすれば、自分の担当ではない部分についても異常を発見することができます。

東出その「察知する能力」を高めるためには、クルマの見た目や音だけでなく、ドライバーとの密な人間関係も重要なのだと今回コルシカで思いました。例えばエンジンの回転数や温度、サスペンションの具合だったりとかはデータにわりと出ますが、そうではないドライバーの感覚的な違和感を、彼らの表情や言い回しからくみ取って理解しなければならない。

――映画では東出さんが演じるチーフメカニックの檜山篤洋と、実弟でラリードライバーの檜山直純の信頼関係が大きなテーマとして描かれています。その中で、興奮状態にある直純がメカニックの作業ミスに激昂するシーンがありましたが、実際にそのような経験はありますか?

松山僕はないですけど、クルマがしっかりしてなかったら怒りが込み上げてくるという、ドライバーの気持ちは良くわかります。でも、その一方で「これだけクルマを準備したのだから、しっかり走ってくれよ」という思いも僕らメカニックにはあります。お互いプライドを持って仕事をしていますから、良い意味での緊張感はありますよね。直してくれるやつがいるから極限まで攻められるんだと思う。

――一生懸命整備して送り出したクルマがクラッシュで壊れた時は、一体どのような気持ちになるのでしょうか?

松山僕は選手を信頼しているので、彼らが頑張った結果としてコースアウトしてクルマが壊れても、まったく気にはなりません。逆にそれを恐れて変にタイムが出なかったりするくらいなら、ぶつかってでもいいから速く走って欲しいと思います。

東出チーフメカニックを任されるだけあって、僕が演じた篤洋も同じ気持ちなのではないかと思います。公平な目を持っていると思います。だから「攻めなきゃ、勝てねぇから」と叫ぶ劇中の直純の気持ちは十分理解しているし、ミスをしても責めたりはしない。団体競技ですし、誰か1人が失敗したらからといって「お前のせいだ」と責めるようなことは、プロなのでしないと思います。もちろん、コースアウトするとタイムロスするし、ドライバーとしては当然したくもないでしょう。でも、直してくれるやつがいる、自分のチームはプロフェッショナルだという信頼があるからこそ、極限まで攻めた走りをできるのだと思います。

――ラリーメカニックの仕事はとてもハードで、彼らもまたドライバーと一緒になってスポーツを戦っているのだなと、作品を見て改めて思いました。

東出まさにそうだと思います。運動量がすごいし、整備の制限時間もある。体だけでなく頭も使うスポーツですよね。

松山作業中は集中しているので疲れはまったく感じませんが、それでも夜のサービスで仕事が深夜までかかると、終わった後はさすがに疲労感に襲われます。でも、アルゼンチンやメキシコのお客さんってすごく熱狂的で、大勢の人が夜遅い時間まで残ってサービスを見ているんです。ドライバーはもうホテルに戻ってて、いないのに。そして、ボロボロだったクルマがきれいに直って出て行く時に拍手をしてくれる。そういうのを見ると、すごくメカニック冥利に尽きます。

東出僕もメカニックの役を勉強するうえでWRCの映像を多く見ました。その中で、これは直せないだろうと思うくらい激しく壊れたクルマでも制限時間内に直してしまう映像を見て、衝撃を受けました。しかも映画と違って、本物のラリーメカニックたちは決して声を荒げたりせず粛々と直していく。まったく動じることなく、表情も変わらないので少し怖く思ったくらいです(笑)。

主人公の檜山篤洋役を演じた東出昌大(右)と、TOYOTA GAZOO RacingのWRCチームでメカニックを務める松山大介。松山は昨年2月のラリー・スウェーデンからチームに合流。当初は何もできない自分に悔しい思いをしたと言うが、今は他のメカニックの信頼も厚い

――壊れたクルマを元の姿に直すことに、満足感を感じたりはしますか?

松山もちろん、達成感や満足感はあります。ただ、自分としてはどのようなクラッシュでどういう壊れ方をしたのかとか、どういった作りにしたら直しやすいのかといったことを調べ、原因や対策を考えることにより喜びを感じます。

東出僕も自分の性格はメカニック寄りだなと思います。こんな仕事をしていながら言うのも変ですが、そんなに表に出たくないというか(笑)。チームで仕事をしているという感覚が普段からあるので「俺が引っ張っていくぞ」とか「俺の走りを見ろ」みたいなところは良くも悪くも自分にはあまりないと思います。でも、WRCドライバーは10人いたら10人みんな自分が一番速いと思ってラリーに臨んでいるでしょうし、そのような気持ちで突き進める人もやはり魅力的で素晴らしいなと思います。

松山どちらかというとドライバーに華がある世界ですが、それを支えているのはチームのメカニックやエンジニアです。今回の作品で、そういった部分にスポットを当ててもらえたのはすごく良かった、面白いと思います。

東出今回の作品に携わったことで、以前とはクルマに対する考えが変わりました。そして、この作品は間違いなくスポーツ映画です。スポーツで得られる興奮やアドレナリンが出る感覚が、画面からひしひしと伝わってくるはずです。劇場を出る時は、きっと晴れやかな、極上のスポーツを観戦した時のような爽快な気分になると思いますよ。

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