OVER DRIVE MEETS GAZOO

羽住英一郎監督

羽住英一郎監督

“ラリーばか”がつくった
熱き男たちの物語。

古賀敬介=文 ©2018「OVER DRIVE」制作委員会

 僕はスーパーカーブーム世代なので、子供の頃からクルマが好きだったし、モータースポーツもよく見ていました。それだけに映画として描くことの難しさも理解しています。ただラリーは、サーキットレースほどは知られていなくて、ちょうどトヨタがWRCに参戦するタイミングだったので広く知って欲しくて題材に取り上げました。エンターテインメント作品として、映像的な華やかさと同時に、日本人が大切にしてきたモノづくりの世界を重要視しました。僕がモータースポーツを好きな理由のひとつは、人間の知恵とリソースがクルマに込められているからです。それが最終的には技術の発展に繋がり、いろいろなモノが生まれてくる。多くの日本人が共感できる部分だと思います。

 難しかったのは、あまり知られていないラリーの世界をどう描くかでした。例えばルールを分かりやすく説明しながら描くという方法もあります。しかし、そんなシーンが続くよりも、真のプロフェショナルが戦う世界が繰り広げられていれば、ラリーを知らない人もきっと熱くなるはずです。そのために「説明よりも敢えて徹底的にリアリティを追求する」というのがこの映画で一番重視した点です。

 僕は撮影に入る前にどれだけ入念な準備をできるかを大事にしていて、撮影中はあまり細かな演出はしません。一度始まってしまえば後は撮るだけ。スタッフにはとにかく振り切れ、バカになれと言います。端から見ていたら何をやっているのかわからないようなことでも、突き詰めて一生懸命やる。それが作品に熱さと情熱を吹き込むんだと思います。

 事前の準備としては、東出君にはかなり分厚い資料を渡しました。工具やパーツの名称と役割、サービス作業の行程などを細かく書き留めたものです。また、WRCの現場で僕が撮影してきたサービスの映像も見てもらいました。まだトヨタが参戦する前だったので、サービスの前でずっとカメラを回していると日本のスパイだと思われ、メカニックに前に立たれて邪魔されたこともありました(笑)。

 撮影に入る前には、購入したヤリスのラリーカーを、ベテランラリーメカニックの指導を受けながら、俳優陣がバラして組むという作業を1カ月以上繰り返しました。実際に撮影する予定がない、サスペンション交換やアライメント計測といった作業まで練習してもらいました。東出君は完璧主義者で、セリフにしても作業にしても、そこに何の意味があるのかを理解して演じるので、すごく一生懸命勉強をしていましたね。

 走行シーンの撮影では、俳優たちが組んだヤリスでラリードライバーが全開走行をしました。もちろん最後はプロのメカニックがクルマ全体をちゃんとチェックしますが、それを信じて全開で走る。ドライバーとメカニックの強い信頼関係を驚かされました。

 新田君には、トップドライバーたちがレーシングスーツを脱いだ時の耐火アンダースーツ姿の映像を見せて「こういう細マッチョな体形に鍛えて欲しい」と頼みました。彼は「わかりました」と言って、もっとバキバキに鍛えてしまったんです(笑)。でも、新田君は首が太いからドライバーとして説得力がありますね。

 ドライバーたちは、それぞれ人生を賭けてクルマに乗っています。後ろで順番待ちをしている人がいっぱいいる中で「同じ道具だったら絶対に自分が1番速い」と信じている。WRC2に挑戦している若手日本人ドライバー2人もまた、人生を賭けています。WRCというトップカテゴリ―に上がれるのか、ダメになるのかわかりませんが、彼らはそういう厳しい状況を理解して戦っている。2位は敗者、1位じゃないと意味がないという、今の時代なかなかない世界だからこそ面白いし、魅力的なんだと思います。

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