RACING CAR

レース車両

SF専用SF19はクイック&ライトなシャシー

 スーパーフォーミュラ(SF)では2019年より現行シャシー「SF19」を採用し、参戦の全選手が使用します。このシャシーは、2018年まで使用したSF14と同様にイタリアのレースカー製造会社ダラーラ社が開発・製作したものです。

 SF19は、好評だったSF14のコンセプト"クイック&ライト(素早く動き&軽くて軽快)"を継承し、さらにアップデートした空力設計が施されています。また、幅が広がったフロントタイヤとやや短くなったホイールベースとも相まって、SF14以上にクイックな動きとなり、ドライバーの力量が走りやタイムに反映されやすいフォーミュラカーとなっています。

 搭載されるエンジンも小型軽量で、2000cc直列4気筒の直噴ターボのトヨタ製かホンダ製のどちらかを使用します。TOYOTA GAZOO Racingの「TOYOTA/TRD 01F」もホンダ製エンジンも、約550馬力と高出力を誇ります。それぞれにドライバーの操作を機敏に反映するドライバビリティ(追従性)やセッティングの幅などに特徴・差異があり、この違いからも白熱したバトルが生まれています。

 また、SF19は安全面でも進化。2016/17FIA F1安全基準に準拠したシャシーとなりました(SF14は2010F1安全基準)。さらにドライバーの頭部を守るヘイローも採用されました。

SF19のフロントまわり
SF19の左サイド
SF19のリヤまわり

タイヤは横浜ゴム製SF専用のワンメイク

横浜ゴム製のタイヤを1シーズン全車が使用 スーパーフォーミュラでは、横浜ゴムが供給するタイヤを全車が使用します。供給されるタイヤは、"ADVAN(アドバン)"ブランドのスーパーフォーミュラ専用です。乾いた路面で使用する溝なしのドライタイヤと、濡れた(ウエット)路面用の溝があるレインタイヤが用意されています。

 ドライタイヤは1大会で新品(ニュー)を3セット(前後4本で1セット)、使用済み(ユーズド)を3セットの計6セットが使用できます。レインタイヤも6セットになります。走行前の意図的な加熱(タイヤウォーマーや外気より高温の保管)は禁止され、タイヤの空気圧も管理されます。

 今季もドライタイヤは固さや耐久性が同じ1スペックのみで、レース中のタイヤ交換は先頭車の10周目から最終周まで最低1回を行う義務があります。

一定時間パワーアップする
オーバーテイクシステム

追い越しやタイムアップを助けるオーバーテイクシステム スーパーフォーミュラには、追い越しのチャンスを広げる独自のルールとして「オーバーテイクシステム(OTS)」を2009年から導入しています。これは、ステアリングにあるボタンを押すと一定時間、エンジンのパワーが上昇し、前走車の追い抜きやラップタイムの向上を助けるというものです。

 使用できる時間は、上限200秒。その時間内なら何度でも使用できます。ただし、1度使用したら200秒間は使用できなくなります。

 OTSの使用状況は、コックピット後ろのロールバーに付けられたOTSランプで分かります。使用時間が残り200秒から20秒まではグリーンの点灯、20秒未満になると赤に変わり、使用時間がなくなると消灯します。OTS作動時はOTSランプが点滅し、リアコーションランプも連動して点ります。200秒間の使用制限中はゆっくりと点滅します。

ドライバーの頭部を守る
安全装備「ヘイロー」

ドライバーの頭部を守る新たな安全装備「ヘイロー」 SF19では「ヘイロー(halo)」という安全装備が採用されました。これは、フォーミュラカーでむき出しになるドライバーの頭部を走行中の飛散物やクラッシュ時に守るため付けられた、コックピット開口部の上方に配置されるカゴ状のパイプです。

 一見、ドライバーの視界を妨げるようにも見えますが、ほとんど影響がないことが確認されて2019年より導入されました。"halo"は直訳すると神様や聖人の背後に描かれる「後光」という意味です。その形状と頭部を守るという機能から名付けられました。

レース専用エンジン
「TOYOTA/TRD 01F」を供給

TOYOTA/TRD Biz-01F スーパーフォーミュラのエンジンは、直列4気筒2000ccで直噴シングルターボチャージャー付きです。このエンジンの仕様は「NRE(ニッポン・レース・エンジン)」と呼ばれるものです。これは、スーパーフォーミュラとSUPER GTに車両やエンジンを供給するTOYOTA GAZOO Racingをはじめとする国内3メーカーが「市販エンジンの開発にも役立つ、日本初のレース専用エンジンを造ろう」と協議して策定しました。このNREには出力制限のシステムとして、日本独自の技術である瞬間的に燃料流量を調整できる「燃料流量リストリクター」を搭載しています。これにより、より効果的で公平、安全な出力制限を実現しています。

 そしてNRE初年度の2014年にTOYOTA GAZOO Racingは「TOYOTA RI4A」を供給。2019年にはバージョンアップした「TOYOTA/TRD Biz-01F」を開発し、TRDを通じてTOYOTA GAZOO Racingの各チームに供給をしました。

 2021年シーズンもTRDで継続開発をした「TOYOTA/TRD 01F」を、6チーム11名のドライバーに供給します。TOYOTA GAZOO Racingは、TRDと参戦各チームと共に「TOYOTA/TRD 01F」をよりよいエンジンに仕上げ、各戦の優勝と今季のチャンピオンを目指していきます。

※ TRD(TOYOTA Racing Development)は、株式会社トヨタ・カスタマイジング&ディベロップメントでモータースポーツ事業を担う部門でありブランド名。TOYOTA GAZOO Racingなどのレース車両やエンジン、モータースポーツ部品の開発と製造を行う。

主要諸元

エンジン
エンジン型式 TOYOTA/TRD 01F
排気量 2,000cc
気筒数 直列4気筒直噴
過給器 ターボチャージャー(ギャレット製)
重量 85kg以上
出力 405kw(550馬力)以上
出力制限方法 燃料リストリクターによる燃料流量制限
シャシー
車両名称 ダラーラSF19
全長 5,233mm
ホイールベース 3,115mm
全幅 1,910mm
全高 960mm
最低重量 660kg以上(ドライバー搭乗時)
ギアボックス リカルド前進6速/パドルシステム
ブレーキ ブレンボ製キャリパー&ブレンボ製カーボンディスク
ステアリングシステム KYB電動パワーステアリングシステム
フロントサスペンション プッシュロッド・トーションバースプリング
リアサスペンション プッシュロッド
安全基準 2016/17 FIA F1 セイフティレギュレーションに準拠